疲れ知らずで天井知らずの瀬戸大也 余力を感じる泳ぎで2種目の代表権を獲得

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日本選手権4日目、瀬戸大也は2種目で代表権を獲得した 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 競泳の日本選手権4日目は10日、東京・辰巳国際水泳場で行われ、瀬戸大也(JSS毛呂山)が男子200メートルバタフライで優勝。200メートル個人メドレーでは萩野公介に敗れ2位に終わったものの、1分56秒82の記録で派遣標準を突破し、2種目とも今夏の世界選手権(ロシア・カザン)の代表に内定した。

過密日程をこなす「ハードワーカー」

男子200mバタフライで優勝した瀬戸(手前)と2位に入った坂井聖人 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 複数種目で勝負するマルチスイマーの瀬戸にとって、日程によりレースが重なるのは宿命みたいなものだ。前日(3日目)に5レースを泳いだのに続き、この日もレースの間が1時間もない過密日程の中で2種目の決勝を戦った。それでも瀬戸は、それぞれの日程で最後に泳いだ競技(9日は200メートル自由形、10日は200メートル個人メドレー)で自己ベストを更新しており、たくましく戦い抜いている。

 各レース後のコメントからも余裕を感じさせる。大会を通じて各選手に「自分の泳いだ感覚とタイムが一致しているか?」という質問がよく繰り返されるのだが、大抵の選手は「思ったよりも出ていない」「感覚どおり」と、答えることが多い。しかし、今大会の瀬戸は「感覚よりも早かった」「あれぐらいで○秒台が出せたのでいい感じ」と、笑顔を見せながら話す姿が印象的だ。前述の5レース目を終えた直後にも「意外とサクッと終われた」と言えてしまうあたりにも、現在の調子の良さがうかがえる。

泳ぎながら、周りを見ている

男子200m個人メドレーではライバル萩野公介(右)に優勝は譲ったものの自己ベストで代表権を勝ち取った 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 さらに驚かされたことに、瀬戸はレース中に隣のコースを泳ぐ選手を見ながらペースを調整しているというのだ。9日に行われた200メートル個人メドレーの準決勝、瀬戸は決勝のポジションで3番目がほしかったという理由から、最後にブレーキをかけて藤森太将(ミキハウス)に2位を譲ったことを明かしている(瀬戸は3位で決勝進出)。

決勝でも、隣のコースを泳ぐ萩野公介(東洋大)が3種目目の平泳ぎで自分寄りのコースを泳いでいるのを見ると、「公介の波を借りて楽をしようと思った」と自分も萩野よりのコースに変更している。アスリートとしての能力の高さに加え、こうした洞察力やそれを実行できる気持ちの強さを兼ね備えていることも、瀬戸が世界トップの選手たちと戦える理由の一つだろう。

「(萩野)公介といい勝負がしたい」

瀬戸(左)vs.萩野のライバル対決は続く 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 日本選手権も4日目が終わり、残り2日。瀬戸は100メートルバタフライと400メートル個人メドレーを残しているが、100メートルバタフライに関しては「コーチと話し合って決めたい」と棄権する可能性も匂わせた。

「今日の200個メを泳いで、それより400個メで戦いたい」というのがその理由で、萩野とハイレベルな争いを見せた200メートル個人メドレーの出来にかなりの手応えがあったようだ。

「公介といい勝負がしたい」という言葉を何度も繰り返した瀬戸が、どのような決断を下すのかは分からないが、過密日程にも疲れを見せず、余力を残して乗り切った男は、最終日の12日に行われるライバルとの世界最高峰の戦いに燃えている。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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