過去とは一線を画した王者バルセロナ 3トップの破壊力を生かしてリーガを制す
3冠獲得にも現実味
リーガ・エスパニョーラ優勝を決めたバルセロナ。チャンピオンズリーグとコパ・デルレイでもファイナルに進出しており、3冠獲得も現実味を帯びてきた 【写真:ロイター/アフロ】
彼らの優勝は妥当な結果だと言える。だが今季のバルセロナは、同じくリーガを制した近年の6つのシーズンとは一線を画すチームだ。美しいプレーで観衆を魅了し続けたわけではないし、チームが亀裂のない一枚岩として戦ってきたわけでもない。これだけの結果を出しながら、ルイス・エンリケ監督が周囲にシンパシーを感じさせることすらない。
それどころか、“クレ(バルセロナのサポーター)”たちがここ数年において最も幸福な時を過ごす中、一部の中心選手との関係が疎遠になっているルイス・エンリケは来季も続投する意思すら示していない。指揮官との関係悪化がうわさされている選手の一人には、他でもないリオネル・メッシも含まれている。
今季のバルセロナは10年以上前からフランク・ライカールトの指揮下で実践し、その後ジョセップ・グアルディオラとティト・ビラノバが発展させてきた伝統的なプレースタイルを踏襲していないにもかかわらず、最高の結果を手にしようとしている。
ポゼッションに固執しない新たな戦い方
バルセロナは(左から)ネイマール、スアレス、メッシで形成するトリデンテを生かす戦い方を確立した 【写真:ロイター/アフロ】
リーガへの適応を終えたネイマールはスペクタクルなシーズンを送っている。スアレスは数カ月のうちにリバプールとは異なる新たなプレースタイルを理解し、再び生粋のゴール嗅覚で重要な試合を決めるようになった。そして完全復活を果たしたメッシはベルリンで行われる決勝でユベントスを下してCLを勝ち獲り、6月のコパ・アメリカでも良い結果を残せば今年のFIFAバロンドール獲得が確実と見られている。
MSN(メッシ、スアレス、ネイマールの頭文字)の呼び名が定着した3トップの破壊力とともに、今季のバルセロナを支えたのは過去のチームにはなかった堅固なディフェンスラインだ。とりわけハビエル・マスチェラーノの安定感は際立ち、ジェラール・ピケも尻上がりに調子を上げてきた。開幕当初は移籍が濃厚と見られていたダニエウ・アウベスも以前のプレーを取り戻し、行き先不明のクロスを上げてボールを放棄することがなくなってきている。
中盤ではイバン・ラキティッチのハードワーク、好調時のセルヒオ・ブスケッツが際立った一方、シャビ・エルナンデスはバルセロナで過ごす最後のシーズンにわずかなプレー時間しか与えられてこなかった(編注:21日にバルセロナ退団とカタール1部のアル・サッドへの移籍を発表)。それでも上々のコンディションを維持してきた彼は、多くの試合において、とりわけリードを得ている状況でポゼッションの安定とパーフェクトなボールの散らし、そして時間のコントロールを保証してきた。
シャビと同じく、アンドレス・イニエスタも冴えないシーズンを送ってきた。シーズン終盤に入り、少しずつ彼らしいプレーが見られるようになってきてはいるものの、それも全盛期とはほど遠いレベルにあることに変わりはない。
今季のバルセロナがカルロ・アンチェロッティ率いるレアル・マドリーより優れていることを明確に証明するのは困難だ。長いシーズンを振り返れば両チームともに好不調の波があっただけに、バルセロナの方が良い流れをより長く持続し、シーズン終盤のラストスパートによって勝ち点の取りこぼしを最小限に抑えたことが勝因だったと言えるのではないか。いずれにせよ、過去数年に続いて今季も両チームの実力が限りなく拮抗(きっこう)していたことは確かだ。