過去とは一線を画した王者バルセロナ 3トップの破壊力を生かしてリーガを制す

レアル・マドリーが終盤に失速した原因

シーズン後半に失速したレアル・マドリー。慣れない中盤で起用されたセルヒオ・ラモス(右)は本来の力を示すことができなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 レアル・マドリーはホームのサンティアゴ・ベルナベウでバルセロナを破った10月25日の第9節(3−1)以降、長らく首位の座を保ってきたにもかかわらず、不安定なパフォーマンスが続いたシーズン後半の失速により高い代償を払うことになった。

 過去に何度も繰り返してきたように、昨夏もフロレンティーノ・ペレス会長はチームの需要より選手の市場価値を重視し、ハメス・ロドリゲスやトニ・クロース、ケイラー・ナバスらワールドカップで活躍した旬の選手を買い集める傍ら、昨季のメスト・エジルに続いてシャビ・アロンソ、アンヘル・ディ・マリアらキーマンを放出してきた。

 さらにルカ・モドリッチやサミ・ケディラにけがが相次ぎ、ルーカス・シウバやアシエル・イジャラメンディがほとんど戦力とみなされない状況下で、最終的にアンチェロッティはセルヒオ・ラモスを中盤で起用するに至った。だが慣れない役割を任された彼のプレーは、本職のセンターバックで見せるパフォーマンスを遥かに下回るものだった。

 またアンチェロッティは不調続きのガレス・ベイルやカリム・ベンゼマに故障が生じた際、ハビエル“チチャリート”エルナンデスが出番を与えられるたびに結果を出しているにもかかわらず、多くの試合でハメスとイスコを2トップの後方に配置した4−2−2−2のシステムを採用してきた。だが少なくない選手が本職とは異なるポジションで起用されたことも含め、なかなかシステムが定まらなかったことがシーズン終盤における不安定なパフォーマンスにつながった感は否めない。そしてその代償として、豊富なタレントと世界一の資金力を誇るレアル・マドリーは主要タイトル無冠のまま2014−15シーズンを終えることになった。

トップレベルの力を示したアトレティコ

攻守のキーマンを放出しながらリーガ3位が濃厚なアトレティコ・マドリー。CLでも2季連続の8強入りを果たした 【写真:ロイター/アフロ】

 アトレティコ・マドリーも昨季の成功を繰り返すことはできなかったが、それは仕方のないことだ。レアル・マドリーやバルセロナとの戦力差を考えれば、昨季成し遂げたことこそ世紀の偉業だったのだから。

 それでもアトレティコはスーペルコパ・エスパーニャとコパ・デルレイでレアル・マドリーを下している。CLの準々決勝ではそのレアル・マドリーに敗れたものの、オフにティボ・クルトワやフィリペ・ルイス、ジエゴ・コスタといったキーマンを放出したことを考えれば、上々のシーズンだったと言うべきだ。

 今季加入した新戦力の多くは、先述した選手たちに比類する活躍を見せることができなかった。それでもリーガは3位で終える可能性が高く、CLでも2季連続の8強入りを果たしている。これらの健闘は、来季もこのチームに国内外でトップレベルを維持していく力があることを物語っている。

(翻訳:工藤拓)

2/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント