内村8連覇の影で躍進した東京五輪世代 大学1年生の萱、白井らに見えた覚悟

椎名桂子

内村が認めた「頼もしい後輩たち」

ゆか、跳馬のスペシャリストと見られる白井も、今大会ではオールラウンダーへの成長が見られた。また同世代には高いレベルの選手がそろっている 【赤坂直人】

 体操の第69回全日本個人総合選手権は、26歳の内村航平(コナミスポーツクラブ)が8連覇という大記録とともに終わった。

 その内村が、大会終了後のインタビューで、「このままいくと(自分は)抜かれてしまうと思わされた。頼もしい後輩たちだな、と思った」と、今大会で大躍進を見せた大学1、2年生たちを評した。

 順天堂大2年の早坂尚人は、2年前のインターハイチャンピオン。昨年の全日本個人総合では、ミスが重なり39位で予選落ちという屈辱を味わったが、「今年は代々木で雪辱する」と強い気持ちで臨み、結果、総合4位という大飛躍を見せた。

 また特に顕著だったのが、大学に進学したばかりの1年生たちの活躍だ。今大会ではまさに「束になって」大活躍を見せたのである。

世界王者にも劣らない演技

予選のあん馬で、トップの得点をたたき出した萱和磨。総合6位タイと大躍進を見せた 【赤坂直人】

 総合6位タイとなった萱和磨(順天堂大1年)は、大会初日の予選、得意のあん馬で15.600点をマーク。2013年の世界選手権であん馬の世界チャンピオンになった亀山耕平(徳洲会体操クラブ)が予選のあん馬で15.250点だったことを思えば、萱の得点がいかに高いかが分かる。おまけに、平行棒でも15点越え(15.150点)と高いポテンシャルを見せつけた。

 予選総合5位で最終班に入り、内村、田中佑典(コナミスポーツクラブ)といった世界選手権メンバーたちと一緒に回った決勝でも、萱は淡々と、そして堂々と、「自分の体操」を貫いた。大学生の体操選手としては、かなり華奢(きゃしゃ)だが、どの種目でも、その体の隅々までコントロールされた精度の高い演技は、際立っていた。1年前の全日本個人総合では27位、2年前は31位と、地道に経験を重ねてきたことも、今回の飛躍の一因だろう。

13位までに大学1年生が4人

白井と0.550点差の12位となった千葉。大学1年生となった今大会でも力をしっかりと発揮した 【赤坂直人】

 今年の大学1年生といえば、すでに世界的に有名となった白井健三(日本体育大1年)もその1人だ。今大会では得意のゆか、跳馬以外の種目でも進境地を見せ、個人総合11位と、昨年の16位から順位を上げている。
 それでも、個人総合で同級生の萱に勝てなかった。白井が伸びてないわけではない。萱がそれを上回ったのだ。

 白井と0.550点差で12位につけたのが千葉健太(順天堂大1年)。ジュニア時代からあん馬には定評のあった選手で、とにかく体の線、脚のラインが美しい。昨年の全日本個人総合でも13位と、白井よりも上の順位を得ており力のある選手だが、大学入学早々その力を遺憾なく発揮した。

 昨年度インターハイチャンピオンの谷川航(順天堂大1年)も、本来は得意種目のゆかで着地を決めきれず、得点を伸ばし切れなかったが、どの種目でも大きなミスなく、高いレベルでまとめ、千葉とは0.150点差の13位。13位までに大学1年生が4人もいるということは、層の厚い日本の体操界は、今後も期待できるということだろう。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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