内村8連覇の影で躍進した東京五輪世代 大学1年生の萱、白井らに見えた覚悟

椎名桂子

国内でも「世界」を感じられる環境

昨年のインターハイチャンピオンの谷川も13位につけた。今後、この世代が20年東京五輪に向けて、しのぎを削っていくことになるだろう 【赤坂直人】

 白井らの学年は、20年東京五輪の年には23歳になっている。まさに体操選手として円熟期と言えるだろう。彼らに共通しているのは、そのことを強烈に意識していることだ。強い選手が同級生に多く、5年後の東京五輪のことを考えれば、心強いと思っているだろう。お互いに刺激し合い、競い合い、成長し合い、「東京五輪に出場する」と、ひたむきにそこを見ているから、「まだ大学1年だから」という悠長な気分はない。

 白井健三の存在も大きい。同級生であり、ずっとしのぎを削ってきた白井が、すでに2度も世界選手権に出場し、種目別ではメダルも獲得している。そのことで彼らには「世界」がリアルなものであり、身近に感じられているようだ。

 世界一レベルの高い日本では、国内で代表の座を勝ち取ること自体が難しい。しかし、だからこそ、もしも「世界」の舞台に出る機会があれば、自分たちもきっといい勝負ができる、と思える。そんな環境に彼らはいる。

 世界チャンピオンになっても、そうそう勝たせてはくれない同級生たちは、白井にとっても、得難いライバルであり、仲間と言えるだろう。

気がつけば世界の頂点へ

 絶対王者・内村航平は、大会後の会見で、「自分がこの位置にいることが、日本の体操の底上げになり、日本の力を維持できると思う」と話した。

 今の大学1年生たちを見ると、まさにそうだろう。日本が久しぶりに五輪で団体金メダルを獲得した04年アテネ五輪の年に、彼らは7歳だった。内村が初めて五輪に出場した08年北京五輪の年には11歳。
 体操選手としての人生のスタートを切ったころからずっと、彼らは、「世界でトップ争いをする日本の体操」を見てきた。そして、「いつも頂点に立つ内村航平」を見てきた。そして、その後継者となるのは自分たちなのだ、と、覚悟を決めていたのだろう。

 まだ、18〜19歳。この先にはたくさんの壁もあるだろう。それでも、彼らはきっと昇りつめていけるのではないか。内村をはじめとする、多くの偉大な先輩たちの背中を追いかけ続け、気がつけば、いちばん高いところに、みんなで立っているかもしれない。

 今大会は、そんなうれしい予感に満ちた大会となった。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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