新境地に立った平泳ぎ・小関也朱篤 冷静な男が一変 見せた五輪金への渇望

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世界記録まで0秒76と迫る2分7秒77の好タイムで200メートル平泳ぎを初制覇した小関 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 世界新記録誕生への期待に、会場がどよめいた。

 競泳の日本選手権5日目(11日)の最終種目・男子200メートル平泳ぎで、小関也朱篤(ミキハウス)が150メートルのターンを折り返した瞬間である。残り50メートルとなっても世界記録を上回る速さで泳ぐ小関に大きな注目が集まった。しかし、小関自身、「止まるんじゃないか」と思ったというラスト25メートルで失速。最終的には世界記録(2分7秒01)には0秒76及ばなかったものの、2分7秒77の好記録で初優勝。8日に行われた100メートル平泳ぎとの2冠を達成し、今夏の世界選手権(7月24日開幕、ロシア・カザン)の代表に内定した。

普段の淡々と話す姿から一変

何度挑戦しても出せなかった2分7秒台突入に、レース後は興奮を隠し切れなかった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 それまでの小関は、レースについて淡々と話すことが多かった。激戦の100メートル平泳ぎを制しても、50メートルの同種目で優勝を逃しても冷静に振り返る。

 そんな中でも、100メートル平泳ぎの準決勝後には、「決勝ではせっかく北島(康介)さんや立石(諒)さんと泳げる機会をもらえているので、そういうところも楽しんで、最後のおいしいところは僕がもらっていきます」と語るなど、淡々と話す言葉の中にも熱い思いを感じさせる。それがこれまでの小関だった。

 そんな男が200メートルの決勝後は、興奮気味に思いを語る。第一声では、初めて踏み入れた2分7秒台の世界に「やはり世界記録は速いなと思いました。こんなに体がきついとは……」とこぼす。しかしその後は、海外勢の泳ぎ方と比較しながら目指していたという「水の上を滑るような泳ぎができた」と充実感をにじませるなど、これまで何度挑戦しても出せなかった7秒台が出た喜び、今後に向けた手応えなど、さまざまな思いが伝わってくるメディア対応を見せた。

漂う、第一人者としての自覚

小関(写真中央)のレース後の言葉からは、日本男子平泳ぎの第一人者としての自覚がにじみ出ていた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 ただ、やはり最後は冷静だった。「2分7秒7では勝てない。まだ世界との壁は厚い」と、現状をしっかりと認識している。それでも、「そこは克服しないと(リオデジャネイロ五輪で)金メダルは取れないと思います。どうせ目指すなら金メダル」という言葉からは、本人は「まだまだ」と謙遜するものの、現在の日本男子平泳ぎの第一人者としての自覚が漂っていた。小関を指導する藤森善弘コーチも「今まではぼーっとしていた。今はよく考えている。ちょっと大人になった」と最近の変化を感じている。

 3日前の100メートル平泳ぎ決勝後、小関に期待することを藤森コーチに聞くと、「北島が成し遂げた“五輪で世界新記録を出しての金メダル”。これをもう一度日本人としてやりたい」と教えてくれた。

 今の小関には、そのレベルを期待していいのかもしれない。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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