「組織の成功は苦しまないと生まれない」 バスケ長谷川HCに聞く若手育成<後編>

小永吉陽子

今までは一貫した強化・育成体制が整っていなかった日本バスケ界。長谷川HC(中央)に今後取り組むべき育成に関して聞いてみた 【小永吉陽子】

 バスケットボール日本代表のヘッドコーチ(以下HC)長谷川健志氏のインタビュー後編。

 これまで日本のバスケ界では、一貫した強化・育成体制が整っていなかった。しかし、長谷川HCは「今後は検証したものを表に出していくことが必要」と話し、今まで確立されていなかった「日本のバスケ」を議論しながら、下の世代へと受け継いでいければと考えている。

 その中で強化のポイントに置くのが「自チームの強化」。普段の練習からハードにやる姿勢が大事だと話し、さらに上の世代と下の世代が交流することで、上の世代の厳しさを下の世代が肌で感じることができるような環境を作り出せればと話す。

 後編では、育成世代と日本代表の強化をどのように結びつけていくかについて、日本代表を指導する現場からの意見を聞いた。

学校スポーツに頼らない

20年東京五輪では『竹内世代』らベテランの力は必要。また下の世代との融合も必須となってくる 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

――日本には育成年代から代表まで一貫した強化体制がありませんでした。代表ヘッドコーチとして、高校と大学の段階で「このレベルの技術を身につけてほしい」という点は何ですか?

 シュートですね。ただ打つのがシュートではなく、入れるのがシュート。男子は14〜15歳で身体がしっかりしてくるので、その年代で打つシュートは習慣になってしまうので、ゲームで使うことを考えたシュートフォームや速いモーションのシュートを身につけ、簡単に落とさないことを心がけてほしいです。シュートに関しては、指導者はもっとシビアになって教えるべきでしょう。

――しかし、環境面の問題として、大学にはフルタイムで指導できるコーチが不足し、高校や中学の部活動も専門の指導者が不足している状態です。

 それでも、高校は自分から選んで進学できるケースがあるので、指導者がいる学校に入学できます。問題なのは中学生。自分の区域の学校に専門の指導者がいて、満足な練習ができる環境かといえば偶然でしかない。ですから、指導者不足を補うには、学校スポーツに頼らずに、学習塾と同じように、クラブでスキルを身につける環境を作ってあげないと選手が埋もれてしまいます。私が大学生を預かっても、「もっと早くから基礎の練習をやっていれば」と思う選手はたくさんいました。今度できるトップリーグのユースチームの考えも同じ発想だと思います。ただし、ユースチームの場合は大会を設けるとか、選手に明確な目標を設定して強化する必要があります。

――20年の東京五輪に向けて、バスケットボールのターゲットエイジはどれくらいの年齢になるのでしょうか?

 20年には竹内公輔(広島ドラゴンフライズ)、譲次(日立サンロッカーズ東京)の世代が36歳。NBAのダーク・ノビツキー(ダラス・マーベリックス/ドイツ)が今36歳であれだけやれて、ドイツで必要な存在だということを考えると、経験がある竹内兄弟世代は必要な選手ももちろんいるでしょう。

 バスケットの場合はチームスポーツで経験が必要なので、戦術的な面を求めると、30代の知識と経験がある中に若手をポンと入れて成り立つかというと、なかなか難しい。東京五輪のターゲットは現在の中堅選手から、今の17歳前後がいちばん下になるのではないでしょうか。

 ただ、代表はずっと続くものですし、育成をしていかなければならないので、若い選手を入れる必要性もあれば、逆にチーム作りにおいては経験のある、例えば田臥勇太(リンク栃木ブレックス)のように、リーダーシップや若手選手に対してアスリートとしての模範となるような選手が必要なケースが出てきます。下でいえば、渡邊雄太(ジョージワシントン大)や八村塁(明成高)のような大型で動ける選手は、早くからチームの中で経験していかなければなりません。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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