五輪金へ、選手の先行く指導者育成を 日本テニス協会・植田実氏に聞く

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若手選手の躍進が光った2014年の日本テニス界。植田氏は彼らをどう強化し、育てようとしているのか 【Getty Images】

 9月の全米オープンで準優勝し、日本中を大いに沸かせた錦織圭(日清食品)の大躍進は記憶に新しい。しかし、2014年の日本テニス界で活躍したのは彼だけではない。同大会のジュニア部門では中川直樹(柳川高)がダブルスで優勝し、9月のアジア大会では19歳の西岡良仁(ヨネックス)がシングルスで40年ぶりとなる金メダルを獲得。20年の東京五輪で金メダル獲得の期待が懸かる若手が、相次いで好成績を残したのだ。

 そんな有望株に人一倍熱い視線を送っているのが、13年から日本テニス協会で強化本部長を務める植田実氏だ。世界を主戦場に戦う競技だからこそ求められるナショナルチームの選手強化とは何か。植田氏に話を聞いた。

東京五輪のターゲットエージは22歳

植田氏は海外ツアーに参加する選手のためにも、ヨーロッパや米国のアカデミーとの連携を模索している 【スポーツナビ】

――東京五輪を見据えた選手強化の中で、特に重視している年代はありますか?

 僕らは22歳までを1つのターゲットにしています。1992年以降生まれの選手ですね。もちろん東京五輪では錦織もまだ30歳ですから、十分脂が乗っているかもしれませんし、彼の世代ももう1つのターゲットです。ただ彼らは東京五輪に向けてのターゲットエージや国が進めているユース育成ではなくて、すでにトップ選手として扱っています。

――東京五輪に向けての注目選手を教えてください。

 男子では今年の全米ジュニアのダブルスで優勝した中川、アジア大会で優勝した西岡、世界ジュニアランキング13位の山崎純平(むさしの村ローンTC)でしょうか。女子で言うと穂積絵莉(エモテント)や、11月の全日本選手権で優勝した江口実沙(北日本物産)など、20歳ぐらいに1つ大きな塊があって、彼女らが間違いなく東京のときは主戦力になると思います。

――選手強化の拠点について教えてください。

 08年から東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(以下、NTC)を拠点としています。国内にもう1つ、兵庫にビーンズドームというのがあるのですが、そこを関西の選手たちの拠点にしていきたいと思っています。関西にもあるといろんなクラブで育った人がそこで競うことができる。これがセンターとして大事な機能になります。子供たちがあまり遠出をしたり転校したりする必要がなく、自分がいる場所でそれができるようになりますから。

 加えて、ほとんどの選手が海外に拠点を持っていますが、ヨーロッパと米国に1つずつ、最低この2つはほしいところですね。向こうのアカデミーとスポットで契約をして、ナショナルチームのコーチが帯同して長期滞在する形です。対戦競技は国外に対戦相手を求めないとダメなんです。米国にはヨーロッパから選手がたくさん来ていますから、特に男子は、そういう場所に行って強化をしないといけません。ただ、女子はまた少し違って、国内でも強化は可能だと思っています。男子選手は女子のトップと同じようなボールや戦術を使いますから、男子選手を相手に練習ができます。

――海外で活動する選手にとってNTCの果たす役割とは?

 ランキングが上がれば上がるほど、精神的なつながりといったものになってくると思います。帰ったらNTCには信頼するスタッフがいて、国立スポーツ科学センターが隣にあって、自分たちの練習が確保されていることがすごく重要なんです。トップ選手にとってはそういう場所としての機能になるでしょう。ジュニアに関しては、日本中にいる選手が集まって合宿をやるという非常に重要な場所であると思いますね。

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