経営体質が一向に改まらないインテル 場当たり的な監督交代、見えない方針
モラッティの意向が働いた指揮官更迭
6年ぶりにインテルに復帰したマンチーニ監督。不振を極めるチームを立て直せるか 【写真:アフロ】
国際試合の前日でもあるまいし、なぜこんなものが必要なのかと不思議に思ったが、理由はすぐに分かった。イングランド・プレミアリーグ優勝経験監督の現場復帰ということで、英国のメディアも訪れている。そして何より、今のインテルの幹部には英語しか介さないものも複数いるのだ。マンチェスター・ユナイテッドの営業部門を経て7月からインテルに引き抜かれたイギリス人のマイケル・ボーリングブロークCEO(最高経営責任者)は、監督会見に先立ち英語でスピーチした。
「私はユナイテッドで働いていた時に、幸運にも(マンチェスター・)シティを優勝に導くマンチーニ氏の仕事ぶりを目の当たりにすることができた。われわれは近い将来、ヨーロッパの強豪に返り咲くという野望を持っている。国際経験豊かで、クラブの伝統を知るマンチーニは適任であると考えた」
ボーリングブロークがこういった形で前面に出てくるのは今回が初めて。成績不振を脱却し、目標とする3位及びチャンピオンズリーグ(CL)進出のため、エリック・トヒル会長以下新経営陣が本腰を据えて動き出した様子がうかがえる。もっともワルテル・マッツァーリ前監督の契約延長を決めておきながら、彼をすぐ更迭し新監督を招聘(しょうへい)するまでのプロセスは場当たり的で、マッシモ・モラッティが経営権を握っていた時代となんら変わりがなかった。否、一連の決定には、経営から退いたはずの彼の意向が強く働いていたのだ。
「あんなに嫌われた監督もいない」
レーザー照射の標的にもされたマッツァーリ前監督。スタジアムはもはやホームの雰囲気ではなくなっていた 【写真:ロイター/アフロ】
ただ、モラッティは違った。インテルを愛するがゆえの感情的な心配が先に立ち、多くの監督を解任してきた彼には、今回も同じ思考が働いたのだ。フィオレンティーナ戦で0−3と敗れた時に「あれはもうダメだ、変えなさい」とトヒルに進言。一度トヒルがそれを拒否すると名誉会長を辞し、実子アンジェロマリオ副会長ら腹心の幹部も役員会から引き揚げさせた。
そんなことが外に伝われば、不振の元凶としてマッツァーリへの批判がエスカレートする。「若いチームだから時間が必要だ」とチームを擁護すれば『言い訳』と取られ、ブーイングのひどさに試合開始前の監督の名前読み上げが中止となった。試合中にはレーザー照射の標的にもなり、もはやホームの雰囲気ではなくなった。
結局11月9日のエラス・ヴェローナ戦でドローとなったのち、モラッティは再度マッツァーリの解任を迫る。一方で「インテルを助けてくれ」と2人の候補に話をし、トヒル会長らに選ばせた。それがレオナルドとマンチーニであり、新経営陣は後者を選んだ。
「マッツァーリの解任は不可避だった。彼は心配性で、しかもあんなに嫌われた監督もいない。かわいそうに思うほどだ」。後日、モラッティは報道陣に語った。前々任のアンドレア・ストラマッチョーニの首を切り、マッツァーリに任せた立場として、むしろ責任を持ってファンやメディアを落ち着かせる努力をするべきだったように思うのだが、この人自身がそんなファンの筆頭なのだから仕方がない。なお昔からモラッティに批判的だったインテルのゴール裏グループ「クルヴァ・ノルド」だけは「久々にクラブが将来性のある計画を抱いたのだから」と最後までマッツァーリを擁護し、「スタジアムに来るならファンはブーイングするな」と呼びかけていた。