経営体質が一向に改まらないインテル 場当たり的な監督交代、見えない方針
マンチーニのもとで生まれた変化
成績が悪ければすぐに監督を解任する。トヒル会長(左)就任以降も、モラッティ(右)時代からの経営体質は一向に改善しない 【写真:ロイター/アフロ】
果たして、ムードは多少変わった。名将の帰還に、マッツァーリにブーイングも浴びせたファンも再びインテルを応援するようになる。就任初戦となったミラノダービーでは上々の内容でドロー(1−1)。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のインテル番、マッテオ・ダッラ・ヴィーテ記者は「余計な横パスが減り、縦に仕掛けて敵陣の深みを素早く狙うようになった。マンチーニのカリスマでリズムは変わった」とポジティブに評価していた。
選手たちも、変化を受け止めていた。フレディ・グアリンやファン・ジェズスは「マンチーニ監督のもとで活気が出てきたのは事実」と認めた。またダービーでは右サイドバックとして90分間プレーした長友佑都も「監督の要求はまだまだ高いところにあると思う。今まですごい選手たちを率いてやっていた監督なんで、このくらいのプレーじゃもちろん満足はしてくれない」と、モチベーションを新たにしていた(ただし彼は11月27日のヨーロッパリーグのドニエプル戦で右肩を脱臼し、軽傷ではあるが故障者リストに名を連ねている)。
ドニエプル戦では先行された試合を逆転(2−1)。「マッツァーリ監督下では無理だった」と、メディアはマンチーニ監督の手腕を称賛したが、復活のムードは30日のローマ戦で早くもかき消された。ユベントスと優勝争いを展開する相手の勢いに押されて4失点。2点は奪うがセットプレーとパブロ・オズバルドの個人技によるもので、内容も押されっぱなしだった。「戦術を変え、急ピッチで仕上げて結果を出さなければいけない。そういう状況では混乱はつきもの」。試合後、マンチーニ監督はメディアに理解を求めた。
インテルはどこに行こうとしているのか
「彼は、チームプレーのできないイカルディやコバチッチのことを良く思っておらず、冬には3、4人の補強をクラブに突きつけるだろう。それにしても少し前はマッツァーリの契約を伸ばし、補強もしておいてこれだから、方針のないあきれたクラブだ」。あるインテル番記者は、匿名でこう吐き捨てた。
似たような境遇にあるミランは、我慢してチームの世代交代を行いながら、赤字を減らしマーケティングを強化するなど経営体質の改善を図っている。その一方でインテルは、体質が改まらない。現時点で累積赤字は約1億300万ユーロ(約152億円)といわれる。発足から1年ばかりの新経営陣の成果が現れるのはこれからだが、今回のマンチーニ就任で2年半の契約金と税金も含めて3000万ユーロ(約44億円)ほどの余剰支出が決定。さらに今後は補強も要求されるが、収入増の経営プランは増資(もちろんUEFAファイナンシャル・フェアプレーのもとで制限あり)と将来のCL進出以外に今のところない。このカオスの中、インテルはどこに行こうとしているのか。「急ピッチで仕上げて結果を出す」という選択は、ある種の狂気もはらんでいるように感じられる。