下位に沈むヘルタで戦う2人の日本人 変わらぬ細貝への信頼と原口への期待

街は祝賀ムードもチームはまずい方向へ

下位に沈むヘルタ・ベルリン。細貝も本領発揮には至っていない 【Bongarts/Getty Images】

 現在ベルリンを訪れている人ならば、このドイツの首都の特別なスピリットを感じるはずだ。街は艶やかに彩られている。光を放つ風船が、かつて「ベルリンの壁」があった境界線を示す。有名なブランデンブルク門周辺以外でも、祝賀イベントが開催される。ベルリンを東西に分けていた壁が消えたのは25年前。歴史的な出来事だった。ドイツは再び統一された。ヘルタ・ベルリンもまた、この喜びに浸り、どうやってドイツが一つになったかを「ベルリンから。ベルリンのために」とのスローガンとともに思い出す。

 実際には、ドイツの首都においてヘルタが祝うことなど何もなかった。ベルリンの壁の崩壊後、旧東側のトッププレーヤーを獲得するチャンスを逃したからではない。「老貴婦人」(ヘルタ・ベルリンの愛称)はブンデスリーガ1部復帰2年目のシーズンを戦っているが、周囲の期待に応えるには至っていない。

 首都に居を置くクラブならヨーロッパの大会進出をにらむのは当然ながら、実際にはヘルタは順位表の下部3分の1を漂っている。7日に行われたブンデスリーガ第11節でハノーファーに0−2と敗れたことで、さらにまずい方へと流れは向かっている。その理由は多岐にわたる。

本領発揮ならずも細貝への信頼は揺るがない

細貝のポジションを務める代役は存在しない。ルフカイ監督からも全幅の信頼を置かれている 【Bongarts/Getty Images】

 このチームの大部分の選手を連れてきたのは、スポーツディレクターのミヒャエル・プレーツとヨス・ルフカイ監督だ。この夏には7人の新戦力をシュプレー川へと呼び寄せた。だが新顔のみならず、既存戦力たちも今季は正しいリズムを見いだせていない。その状況は、2人の日本人選手にも当てはまる。

 昨季の細貝萌は、「ミスター安心」とでも言える存在だった。地元紙『ベルリナー・モルゲンポスト』のヨルン・マイン記者は、「細貝は昨季一番の補強だった」と話す。細貝はその運動量でオープンスペースを閉じる労働者であり、すぐさまクラブへの大きなプレゼントとなった。しかもバトルにも強いときている。

 昇格初年度において、細貝はヘルタが成功を収めるためのキープレーヤーの一人だった。「ボールを持っても良いプレーができるだけではなく、とてもハードにプレーすることも可能だ」とマイン氏は語る。同記者は細貝のパスも称賛する。「昨季の彼は傑出していた」と話すのは、『ビルト』などに寄稿するフリーランスの記者、アンドレアス・ベッカーだ。細貝はリーダーとしてチームを導き、ヘルタにさらなる安定をもたらしていた。ただし、ヘルタをよく知るこのエキスパートは、「現在は要求を満たせていない」と今シーズンの彼を分析する。

 もっと良いプレーができるはずだと、細貝自身は理解している。「今季はまだひどいものだと感じています。これまで以上のものを見せることができるはずなんです」と29キャップを誇る日本代表のMFは語る。彼のパフォーマンスは、昨季のそれには届いていない。だが、自律心を持つMFはルフカイ監督から全幅の信頼を置かれている。「まっすぐに歩くことさえできる限り、常に起用されるはずさ」。マイン記者は、そう言って笑った。

 首都で働く批判的なメディアは、まだ細貝を斬りはしない。細貝が調子を落としている時期からでさえ、ただの一度も細貝に疑問を呈したことはない。この事実からも、ベルリンにおいて、この28歳の立ち位置が分かるというものだ。ただ、ブラジルワールドカップでのメンバー落ちという落胆の後、細貝は再びリズムを取り戻すための時間を必要としている。ヘルタでは、その時間はまだない。彼のポジションを務める代役は存在しないのだ。

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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