下位に沈むヘルタで戦う2人の日本人 変わらぬ細貝への信頼と原口への期待
街は祝賀ムードもチームはまずい方向へ
下位に沈むヘルタ・ベルリン。細貝も本領発揮には至っていない 【Bongarts/Getty Images】
実際には、ドイツの首都においてヘルタが祝うことなど何もなかった。ベルリンの壁の崩壊後、旧東側のトッププレーヤーを獲得するチャンスを逃したからではない。「老貴婦人」(ヘルタ・ベルリンの愛称)はブンデスリーガ1部復帰2年目のシーズンを戦っているが、周囲の期待に応えるには至っていない。
首都に居を置くクラブならヨーロッパの大会進出をにらむのは当然ながら、実際にはヘルタは順位表の下部3分の1を漂っている。7日に行われたブンデスリーガ第11節でハノーファーに0−2と敗れたことで、さらにまずい方へと流れは向かっている。その理由は多岐にわたる。
本領発揮ならずも細貝への信頼は揺るがない
細貝のポジションを務める代役は存在しない。ルフカイ監督からも全幅の信頼を置かれている 【Bongarts/Getty Images】
昨季の細貝萌は、「ミスター安心」とでも言える存在だった。地元紙『ベルリナー・モルゲンポスト』のヨルン・マイン記者は、「細貝は昨季一番の補強だった」と話す。細貝はその運動量でオープンスペースを閉じる労働者であり、すぐさまクラブへの大きなプレゼントとなった。しかもバトルにも強いときている。
昇格初年度において、細貝はヘルタが成功を収めるためのキープレーヤーの一人だった。「ボールを持っても良いプレーができるだけではなく、とてもハードにプレーすることも可能だ」とマイン氏は語る。同記者は細貝のパスも称賛する。「昨季の彼は傑出していた」と話すのは、『ビルト』などに寄稿するフリーランスの記者、アンドレアス・ベッカーだ。細貝はリーダーとしてチームを導き、ヘルタにさらなる安定をもたらしていた。ただし、ヘルタをよく知るこのエキスパートは、「現在は要求を満たせていない」と今シーズンの彼を分析する。
もっと良いプレーができるはずだと、細貝自身は理解している。「今季はまだひどいものだと感じています。これまで以上のものを見せることができるはずなんです」と29キャップを誇る日本代表のMFは語る。彼のパフォーマンスは、昨季のそれには届いていない。だが、自律心を持つMFはルフカイ監督から全幅の信頼を置かれている。「まっすぐに歩くことさえできる限り、常に起用されるはずさ」。マイン記者は、そう言って笑った。
首都で働く批判的なメディアは、まだ細貝を斬りはしない。細貝が調子を落としている時期からでさえ、ただの一度も細貝に疑問を呈したことはない。この事実からも、ベルリンにおいて、この28歳の立ち位置が分かるというものだ。ただ、ブラジルワールドカップでのメンバー落ちという落胆の後、細貝は再びリズムを取り戻すための時間を必要としている。ヘルタでは、その時間はまだない。彼のポジションを務める代役は存在しないのだ。