新生ユナイテッドに必要な「さしすせそ」 低調要因と“ファン・ハール流”への期待

寺沢薫

ユナイテッドの真価が問われたチェルシーとシティーとの連戦は、1分け1敗で白星を挙げることができなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 新生マンチェスター・ユナイテッドの真価は、チェルシーとマンチェスター・シティーとの連戦で分かる。開幕前からそれが定説だった。その前段階で格下相手に落とした勝ち点の量は誤算だったはずだが、かくしてユナイテッドは2つの大一番に臨んだ。

 チェルシー戦では終了間際にロビン・ファン・ペルシーが同点弾を決めて1−1のドロー、続くマンチェスター・ダービーではセルヒオ・アグエロの一発に沈み、ダービー4戦連続となる敗戦を喫した。結局、1分1敗で白星は挙げられず。これでリーグ10試合を終え、3勝4分け3敗。首位チェルシーに勝ち点13ポイントの差をつけられ、順位は10位となった。

 10試合消化時点でこの成績は、序盤戦でロン・アトキンソン監督が解任され、11月からアレックス・ファーガソンが指揮を引き継いだ1986−87シーズン以降でクラブワースト。つまり、デイビッド・モイーズ政権下の昨季よりも低調というわけだ。

 いまだ“産みの苦しみ”を抱えているように見えるルイス・ファン・ハールとユナイテッド。現地評や関係者のコメントを基に、彼らに必要な「さしすせそ」をまとめてみた。

最前線からプレスをかけろ

 現チームで最大のアキレス腱とされているのは守備だ。最終ラインの問題については後述するが、ファン・ハール監督はDFだけの問題ではないと自覚している。

「クリエイティブな選手を数多く抱えていることには満足だが、守備に戻るなど規律も必要だ。守備はストライカーの位置から始まる。守備はチーム全員の仕事であり、失点はDF個人のミスだけが原因ではない」

 ウェイン・ルーニーが3試合出場停止から復帰したシティー戦では、前半にクリス・スモーリングが退場し、10人になった後半の方が、奇しくも積極的なプレスが際立った。『BBC』の解説を努めた元リバプールのダニー・マーフィーは、「シティーが10人相手にズルズル下がってしまったこともあるが、失うものがなくなったユナイテッドは前に人数をかけるようになった」と語り、特にファン・ペルシとの交代で入った若手FWジェームス・ウィルソンの走力がチームを活性化したと評価している。

新戦力を最大限に生かせ

今季ユナイテッドに加入し、ここまで目覚ましい活躍を見せているディ・マリア 【写真:アフロ】

 総額1億5000万ポンド(約270億円)の補強組はここまで、ほぼ全員が“個の能力”という意味で及第点の働きを見せている。特にアンヘル・ディ・マリアの活躍ぶりは目覚ましい。ライアン・ギグス助監督に「指導の必要がない」と言わしめたレフティーは、ここまでプレミアリーグで1試合平均3.3回のチャンスを創出している。これはチェルシーのセスク・ファブレガス(3.1回)を凌ぐリーグ最高数値である。

 ただ、チェルシー戦、シティー戦のディ・マリアは“ベスト”ではなかった。『スカイスポーツ』の解説を務めるギャリー・ネビルはチェルシー戦後、「今季ここまでの内容を下回った唯一の選手がディ・マリアだった」とコメント。『デイリー・メール』もダービー後、「宿敵シティー相手におとなしかったディ・マリア。ファン・ハールは彼の使い方を見つけなければいけない」という記事を掲載している。

『マンチェスター・イブニング・ニュース』はその原因を、4−2−3−1のサイドに張らせたことだと分析。「ディ・マリアがうまくやれば、ユナイテッドはうまくやれる。だが、両試合ともサイドで孤立した。彼のベストはダイヤモンド型の中盤でプレーしたとき。より中央寄りでボールに絡んだときだ」としている。

 ダイヤモンド型の中盤で戦うには、けがで今回の連戦を欠場した“眠れる虎”が目覚め、4−4−2にシフトする必要がある。「ラダメル・ファルカオがフルフィットし、ファン・ペルシとルーニーへの重圧を軽減することが必要だ」とは『テレグラフ』の記事。ファン・ハールは、2人の大型新人を最大限に生かす術を見つけなければいけない。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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