青木宣親、豊潤の季節はもう間近 破竹の快進撃ロイヤルズで赤丸急上昇中
メディアも惨敗したロイヤルズの快進撃
特にリーグを代表する強豪同士が、1点勝負にしのぎを削るポストシーズンではなおさらである。だから、オリオールズと激突したア・リーグ優勝決定シリーズでも、どこかで幸運の総量の帳尻が合い、破竹の快進撃を続けるロイヤルズの勢いも止まると思われたのだが……。
しかし、そんな常識論をあざ笑うかのように疾走を続けたロイヤルズの前に、オリオールズはなすすべもないままスイープ負け(0勝4敗)。同時に、6、7戦までもつれる長いシリーズをしたり顔で予想した私たちメディアも惨敗した。29年ぶりにポストシーズンに進出したロイヤルズが、プレーオフ開始からメジャー記録の8連勝? こんな結果をいったい誰が想像できただろう?
必ずしも“ミラクル”だけではなかった
「KC(ロイヤルズ)のチーム全体が、スモールボールと守備に関して評価されてしかるべきだ」
10月15日(日本時間16日、以下はすべて現地時間)の第4戦開始前、米TBS局のテレビ解説を担当した元大投手、ペドロ・ マルティネスがそうツイートしていた。その言葉通り、一見すると波に乗った学生チームのような勝ちっぷりも、冷静に振り返ってみれば、決して幸運と時の勢いによるものだけではなかったのだろう。
全4試合でセーブを挙げたグレグ・ホランドに、ケルビン・ヘレラ、ウェード・デービスを加えた豪腕トリオを中心とするブルペンが防御率1.13と完璧だったのがシリーズの決め手となった。ただ、この強力リリーフ陣はもともとロイヤルズの長所として挙げられており、シーズン中も6回終了時点でリードしたゲームでは勝率9割4分2厘(65勝4敗)と強さを誇っていた。だとすれば、実力通りの投球を続けただけとも考えられる。
野手ではシリーズ打率5割3分3厘でMVPを獲得したロレンゾ・ケーン外野手を先頭に、マイク・ムスターカス三塁手、アレックス・ゴードン外野手らがハイライトとなる好守を連発。守備にスランプはなく、身体能力抜群のアスリートたちが縦横無尽にフィールドを駆け回る姿には爽快感すらあった。鋭い打球を飛ばしてもフェンスを越えない限りは獲られてしまうのだから、オリオールズの打者たちの落胆は激しかったはずだ。
“才能だけでも試合に勝てるが、優勝するのはディフェンスに優れたチーム”
足と小業で挙げた数少ない得点を守り切るロイヤルズのベースボールは、米国スポーツ界のそんな格言を体現するかのようだった。
シーズン通算211本塁打の長距離打者がそろっていても、1点を狙いに行く緻密さに欠けたオリオールズとは対照的。“群れが個を打ち破る”“守が攻を制す”のがポストシーズンだとすれば、ロイヤルズは実にプレーオフ向きのチームだった。多少は運に助けられたのは事実であり、8連勝は余りに出来過ぎにしても、快進撃は実は必ずしも“ミラクル”ではなかったのかもしれない。