「4位」という結果から得た収穫と課題=U−23日本代表総括
胸を張って帰国するだけの結果と内容
チーム最多の3得点を挙げた大津(左から二人目)ら2列目の選手の活躍が光った 【写真:Action Images/アフロ】
メキシコとの準決勝、韓国との3位決定戦に敗れ、2連敗という形でエンディングを迎えた関塚ジャパンだけに、再び本大会前のような批判や辛らつなコメントも散見されるが、大会前の期待値からしても十分に評価できるだけの五輪であり、メダルなしではあるが胸を張って帰国するだけの結果と内容を見せてくれた。そもそも、グループリーグで優勝候補本命とされたスペインと同組となり、2位通過しても準々決勝ではブラジルと対戦という予想であった以上、大会前の関塚ジャパンがベスト4入りする姿を描いていた人間は「多くなかった」どころか「皆無に近かった」というのが事実だろう。この前提をまずは提示すること、「4位」という結果にきっちりとした評価を与えることをした上で、U−23日本代表のロンドン五輪での戦いを総括したい。
本大会仕様のカウンターが機能
バルセロナやスペイン代表のパスサッカーが本国スペイン以上に流行中の日本では、知らぬ間に「カウンター=悪」のイメージが定着しつつあるように思うが、関塚監督が一貫して主張し続けた「攻守に連動した躍動感、一体感あるサッカー」も「日本らしさ」を表現する一つの方法論であることが、このロンドン五輪で証明された。加えて、少なくとも五輪という国際大会においては、W杯と同じくアジア予選とは異なるカウンターサッカーが有効かつ必要であることが明らかとなった。
今回のベスト4を受けて、今後五輪は「若手に経験を積ませるための大会」という位置付けにはならないし、してはいけない。五輪はW杯同様に本気で狙いに行く大会でありタイトルで、そのためにも格下相手に「引いた相手をどう崩すか」が問われるアジア予選のポゼッションサッカーとは異なるカウンターサッカーも本大会向けに用意しておかなければいけない。すなわち、サッカーのダブルスタンダード化が求められることになる。
また、そのサッカーを実現するために個人レベルで必要なスピードとフィジカルコンタクトが、世界レベルで見た時でも通用すると確認できた点も大きな収穫。韓国戦では相手の高さに屈した感はあるが、その前半に豪快なドリブル突破を何度も見せていた大津祐樹を筆頭に、永井謙佑や清武弘嗣ら攻撃陣は短い距離で一気にトップスピードに乗ったプレーが目立った。吉田麻也、徳永悠平、酒井宏樹ら守備陣はいわずもがな、立ち上げ当初セレッソ大阪で出場機会に恵まれなかった扇原貴宏のような線が細い選手ですら、相手の激しい当たりに対して簡単に倒れることはなく、「軽い」とつい口走ってしまうようなシーンはなかった。個人レベルでさらに言うなれば、『ハードワーク』という要素も永井のスピードと同じくらい世界を驚かせたに違いない。特に、清武、東慶悟、大津はいずれも「90分ハードワークし続けるアタッカー」として世界に日本人選手らしい勤勉さを発信した。ある意味で、「2列目の選手の新境地を開いた」とも呼べるプレー内容は『日本人選手』のブランド化も推し進めたと言っていい。