早大競走部 【連載】東京箱根間往復大学駅伝(箱根)前特集『UPSET』 第12回 石塚陽士
1万メートル27分台の記録を保持する実力者、石塚陽士(教4=東京・早実)。今季は不調が続き思うような走りができず、悔しい思いをしたが、現在は少しずつ本来の走りを取り戻している。4年間の集大成である今回の東京箱根間住復大学駅伝(箱根)で復活を目指す、その意気込みを伺った。
※この取材は12月13日にオンラインで行われたものです。
「本来あるべき姿ではなかった」
全日本大学駅伝対校選手権(全日本)選考会で走る石塚 【早稲田スポーツ新聞会】
春シーズンは昨年の駅伝シーズンに引き続きあまり調子が良くなかったところもあり、思うような結果が残せなかった、むしろ後退してしまったと感じました。悔しいというか歯がゆい気持ちが残るシーズンだったと思っています。
――トラックシーズンの結果についてどのように振り返っていますか
あまり良くなかったところもあり、満足できる結果であったことは一度もないです。本来あるべき姿ではなかったと思います。
――6月の全日本選考会では2組3位という成績でしたが、目標にしていたことはありますか
予選の時は、タイムももちろんですがどれだけ順位を上げられるかというところを意識していました。なのでその点においては悔しい気持ちもありますが、とりあえずは良い結果だったのではないかと思います。個人としても教育実習の次の日の出走だったので調整が難しかったです。本当はもっと上の組で走らなければならない部分もありましたが、自分が走る中では最低限まとまった走りができたのかなと評価しています。
――トラックシーズンに意識して取り組んでいたことはありますか
やはり早く調子を戻したいというのはあったので、筋力トレーニングなどにフォーカスしてやっていましたが、あまり結果は出なかったと感じています。
――今年の夏合宿を振り返っていかがですか
夏合宿に関しては、ほぼほぼ練習に参加できていたのでその点に関しては悪くなかったと感じています。
――何を目標に夏合宿に取り組んでいましたか
夏合宿はある程度距離を積んで走りたいという気持ちがありました。(4年生になって)時間の融通がきくようになったとはいっても授業があったので、他の人よりは(練習を)積む時間が取りづらいことはありました。なので夏にどれだけ貯金できるかが勝負になってきます。そこを意識して練習しました。
――部員日誌に「症状をごまかしながら夏合宿に取り組んだ」と書かれていましたが、この時のコンディションはどうでしたか
いい状態ではなかったのですが、悪い状態でまとめるのではなく走り切ることはできていたかなと思います。夏合宿は、ペースを落とす代わりに距離をたくさん走ろうということがメインになってくるので、ごまかしながらでも走れてはいました。しかし、駅伝シーズンに向かっていくにつれて練習でも走るペースが上がっていき、ごまかしきれなくなってしまいました。そこで今年はかなり苦しんだかなと思います。距離を積んだ分、スピードを上げることができませんでした。
――出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)はメンバーに選ばれていたものの、出走には至りませんでした。その時のコンディションはいかがでしたか
出雲前は本当にコンディションが良くなくて、現地にも行かない組になっていました。走れる体でもなかったですし、気持ち的にも走る準備も整いきれていなかったかなと感じています。
――全日本では花田監督(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)が直前まで石塚選手の出走を迷っていたと話していましたが、その時のコンディションはいかがでしたか
出雲の時は最悪に近い状態だったのですが、そこから全日本に向けて3週間で何ができるかを考えて、五味トレーナー(五味宏生トレーナー、平19スポ卒)に出雲後からトレーニングを見てもらうようになりました。そこから自分のいつもの走りの感覚を取り戻していった状態ではあったので、確実に調子は上がっている傾向にありましたし、「絶対に走ってやるぞ」という気持ちではいました。なので、走れないと決まった時のショックは大きかったです。
――出雲・全日本を通してチームメートの戦いを見て思ったことはありますか
全員が同じ大会で同じ調子に合わせられたらそれなりにいい結果が出るのではないかと思いました。出雲の時は大志(伊藤大志駅伝主将、スポ4=長野・佐久長聖)などの足並みがそろわなかったり、全日本では、出雲で調子が良かった選手の足並みがそろわなかったりとばらつきがあって、花田さんからも「でこぼこした駅伝になった」という話があったと思うのですが、それは外から見ていてもそう思うところがありました。そのでこぼこをなくして、全員が箱根に合わせ切れれば、それなりに戦えるのではないかという感覚があります。
「この1年苦しんだ分も思う存分出し切る」
箱根前合同取材で意気込みを語る石塚 【早稲田スポーツ新聞会】
昨年に関してはかなり不甲斐ない走りをしてしまったので、同じ4区で3位以内を目指してリベンジをしたい思いはあります。もちろん走る区間に関してはチームメートの状況や戦略の部分もあるので、復路に回った場合は区間賞を狙っていきたいです。1年かかりましたが、復活したよという姿を見せたいなと思っています。
――現在のコンディションはいかがですか
まだ全盛期の75〜80%くらいかなと思っていますが、まだまだ後3週間で調子を上げていけるという感覚はあります。なので昨年の箱根や今年の春シーズン、出雲や全日本とは違ってかなり自信を持った状態で迎えられるのではないかと思います。
――12月に久しぶりの1万メートルを走りましたが、その理由は何ですか
一つは、秋シーズンほとんど実践で走ってこなかったので、実戦経験を取り戻すというのがありました。もう一つは、10キロ以上の距離を走る機会がなかなかなかったので、感覚を思い出すというのも目的として走りました。
――12月1日のレースを走り終えた感想を教えてください
設定タイムを29分としていて、その中でラップも安定して走れていたのでそこは良かった点だと思っています。僕自身も自信を持てるようになりましたし、花田さんもかなり僕の走りを不安に思っていたので(笑)。その不安を解消できたのも含めて、出走して良かったなと思います。
――全日本から箱根に向けて、何か意識して取り組んでいることはありますか
走ること以外の補強トレーニングを重視して取り組んでいました。今、朝練習を6時から始めているのですが、毎日最初に1時間から1時間半くらい動き作りをやってから練習をやっています。今までは僕自身そのような練習が得意ではなかったのでやってこなかったのですが、出雲後から積極的にそのようなトレーニングをやるようになって、その効果が今少しずつ出てきているのかなと感じています。
――石塚選手の思う今のチームの課題や強みは何ですか
課題に関しては爆発力が少ないというところがあると思います。現状、エースと言われるのが山口智規(スポ3=福島・学法石川)だと思うのですが、他のチームと比べた時に山口だけでは火力が弱いと感じます。自分も含めて全員の基礎ベースはしっかりあると思うのでそこからどれだけ突き抜けられるかというところが大事になってくると思っています。強みは、チーム力がついてきたところかなと思います。まとまりがありますし、今年からは短距離の選手にも協力してもらって一緒に感染対策を行ったり、SNSでスタッフ陣を中心に(広報を)活発に行ったりしているのでチーム一丸となって箱根駅伝を戦う姿勢ができていると感じます。
――箱根を走る中での自分の役割は何だと思いますか
あまりこういう言い方が良いのかは分からないのですが(笑)。自分ががむしゃらに走っている姿を見せることが一番大事なのではないかと思っています。この1年間、自分がかなり苦しんでいる姿を、(皆さんも)おそらく感じ取っていると思います。なのでもし出走することになったら、そのバックグラウンドを抱えた中で1年間走れなかった分をぶつけたいというか。気持ちを走りで全面に表現できたら、チームにも勢いがつくのではないかと思います。よく4年の意地と言われますが、そういうものを発揮できれば今年のチームの中での役割は果たせると思います。
――箱根を走ることになったら何区を走りたいですか
4区でリベンジしたいという気持ちが1番強いのでそこが希望にはなってきます。
――最後の箱根に対してどんな思いを持っていますか
箱根は最終学年ではなかったとしても1年の集大成になる重要な大会ですし、今年に関しては4年間の、そして学生生活最後のレースになってきます。苦しいシーズンもありましたが、終わりよければ全て良しと思う部分はやはりあります。1年間苦しんだ分も思いっきりぶつけて走りたいなと思います。
――今年の箱根で意識したいことや自分の走りのポイントはありますか
自分の感覚として箱根駅伝は特別、という思いはあるのですが、特別だからといって何か別のことをしようとするとやはり空回りして思うように走れないこともあるので、箱根だからこうしようという意識は自分の中ではあまりないです。自分の実力を発揮できたらいいな、くらいに思っています。
――箱根に向けての意気込みをお願いします
今年はかなり苦しんだシーズンになりましたが、最後の箱根でしっかり結果を出し切ればこの1年間はそれなりでまとめられるかなと思いますし、4年間頑張ってきて良かったと思えると思います。この1年間思う存分出しきれなかった分出し切って、学生生活最後の箱根駅伝を終えることができたらなと思います!
――ありがとうございました!
【早稲田スポーツ新聞会】
2002(平14)年4月22日生まれ。170センチ。東京・早実高出身。教育学部4年。新体制対談で掲げていた今年のプチ目標「写真写りを良くする」はまだ達成されていないという石塚選手。箱根に向けてプチ目標のほうも仕上げていきたいそうです!
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