早大競走部 【連載】東京箱根間往復大学駅伝(箱根)前特集『UPSET』 第6回 長屋匡起

チーム・協会
【早稲田スポーツ新聞会】取材・編集 長屋咲希、西本和宏

 今季は出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)ともに区間上位の好成績を残している長屋匡起(スポ2=長野・佐久長聖)。不調に苦しんだトラックシーズンの振り返りと、昨季出場がかなわなかった大舞台への想いを伺った。

※この取材は12月13日にオンラインで行われたものです。

「自分は自分と割り切って」

出雲駅伝5区を走る長屋 【早稲田スポーツ新聞会】

――昨季は箱根への出走はかないませんでしたが、どのような気持ちで当日見ていらっしゃいましたか

 ケガや体調不良などがあって、現地に行くことすらできない状況でした。順調に走れていれば自分も出られたのかなと思うと余計に悔しい気持ちがあって、自分は何をやっているんだろうという、そんな心境でした。

――当時のケガはどんな状態でしたか

 ケガ自体は良くなってはいたのですが、直前に体調不良になってしまったこともあって、出走することができなかったです。

――箱根後のトラックシーズンでもほとんど出場はありませんでしたが、その間の状態は

 箱根に出られなかった悔しさもあったので、春シーズンから頑張ろうと思って2月、3月は練習がしっかりとできていました。しかし、春シーズンの出だしに少し練習しすぎてまた不調に陥ってしまって。結局春シーズンも走れなかったので、少し空回りしていたのかなという感じです。

――体だけではなく、メンタル的な不調もあったのですか

 メンタル的な不調というより、やはり思うように走れないことに対する苦しさという部分もありましたし、もどかしい気持ちでいっぱいでした。

――それをどのように乗り越えていきましたか

 自分自身、高校時代から陸上一本で取り組んできたので、どうしても執着しすぎていて、陸上がダメになった時に落ち込んで、すごく波がありました。そこから自分の中で、他のモチベーションを作ることを意識するようになりました。例えば友達と遊ぶことだったり、私生活を充実させることだったり、そうやって走れない時期があったとしても、他のことで自分が頑張れるというか。自分のモチベーションを高められるようなことを見つけるようになってから、少しずつ競技生活も私生活もうまくいくようになってきたのかなと思います。

――調子が戻ってきたと感じたのはいつ頃でしたか

 夏合宿に入った9月くらいですかね。ちょうど自分自身も走れるようになって、だんだんチームの全体練習に合流できるようになってきたあたりから(調子が)戻ってきたかなと感じました。

――その夏合宿で特に意識して取り組んだことを教えてください

 春シーズンに練習ができていなかった分、少し体重が増えてしまったので、まずは体重を戻すというところから始めました。その中で徐々に練習の量や質を戻していけたことがやはり良かったと思っています。他のチームメイトはガンガン練習をやっているのに対して、自分は少し抑えてやっていました。自分は自分、とちゃんと割り切って取り組めたことが、今につながっているのかなと思います。

――練習の消化率としてはいかがでしたか

 夏合宿後半はちゃんと練習できていたのですが、前半は全然だったので6、7割くらいだったかなと思います。

――改めて合宿を振り返っていかがですか

 チーム自体も昨年よりかなりレベルアップしていて、夏合宿のメニュー自体は昨年と変わっていないのですが、タイムや中身がすごく濃いなと今年は感じていて。その中で自分は全体とは違う練習をしていたので、緊張感があったというか。周りはちゃんとやっていることは頭に入っていたので、そういった意味で自分も頑張らなきゃなと、緊張感があるなと思っていました。

――出雲についてお伺いします。三大駅伝としては昨年の出雲以来の出場となりましたが、緊張はありましたか

 そもそも2年生になってから公式で走ったレースが一つもなかったのですごく緊張もしましたが、同時に合宿を経てだんだん調子を上げていたので、いい意味で自分に自信を持っている状態で大会に臨めました。

――昨年はアンカーでしたが、今年は5区と短い距離になりました。走ってみていかがでしたか

 自分は6区を走りたかったのですが、工藤(慎作、スポ2=千葉・八千代松陰)や他のチームメイトも強かったので、5区に回ることになりました。でもその中で、短いながらも自分自身の走りをしようという目標通りに走れたので、満足というか、ひとまず良かったかなと思っています。

――区間3位という結果を振り返っていかがですか

 順位は相手があってという部分もあります。昨年よりは順位的には進歩していますが、区間も違いますし、タイムを見て、頑張れば区間賞も狙えたのではないかとも思ったので、そういった意味でひとまず及第点かなと思います。

――レース展開に改善の余地があるとおっしゃっていましたが具体的にどういった部分ですか

 渡された位置が位置でしたし、上位に区間賞の選手がいたので一概に比較にはならないのですが、最初から思いっきり入っていればタイムもついてきたのかなと思います。

――では次に全日本についてお伺いします。他校のエースが集う区間を任されましたが、改めて結果を振り返っていかがですか

 出雲の5区から全日本7区で、結構ジャンプアップしたかなと思っていて。走る前も結構緊張しましたし、エース区間と呼ばれている中で、春先全然走っていなかった自分が走れるのかという不安もあったのですが、出雲のいい流れがあったので、そこは自信を持って臨みました。仮に失敗したとしても、春シーズンから調子を上げていた中でいい意味で言い訳ができるというか、あまりプレッシャーを抱えずに臨んだ結果だったと思います。自分でも5位になれるとは思っていなかったので、順位に関してはすごく良かったと思います。

――インタビューでは長い距離への不安があったとおっしゃっていましたが、結果を見ていかがですか

 元々長い距離は得意なので、うまく走れたかなとは思います。かといって、経験が浅い中でいきなりの全日本だったので緊張しましたが、やはり走ってみて、自分はもっとやれるんだという自信がすごく持てて、箱根につながる大きな自信材料になりました。

――出雲、全日本では単独走でしたが、単独走の時はどんなことを考えて走っていますか

 単独走はリズムが大事になってきます。時計で逐一ラップを確認したり、沿道から前との差を言ってくれるスタッフの方がいらっしゃるので、それを聞きながら自分自身の感覚とタイムを照らし合わせて、うまく走れているのか、もうちょっと上げた方がいいのか、ということを考えながら走っていたという感じです。

――チームとして出雲、全日本の結果をどう捉えていますか

 今までずっと6位だった順位から、全日本は5位ということで、少しレベルアップできたのかなと思います。というのも、全日本に関しては(早大の出場選手の中で)良かった選手、悪かった選手両方いた中で総合5位という順位だったので、もし全員が100パーセントを出し切っていたら3位以内にも食い込めたのではないかなと考えると、昨年に比べてもレベルは上がってきているのかなと思います。ただ、逆も同じことが言えると思うので、箱根に向けてまずは自分たちが自分の力を出せるように取り組んでいければなと思います。

「安心して任せられるような走りをしたい」

箱根前合同取材で撮影に応じる長屋(写真中央) 【早稲田スポーツ新聞会】

――ここからは箱根に向けての質問に移ります。全日本以降レースへの出場はありませんが、今の状態はいかがですか

 全日本が終わって少し疲労がたまって1回休んだ時期もありましたが、12月に入って徐々に調子も上がってきているので。このままケガなどなく臨んでいければ結果はついてくるのかなと思います。

――現在主に取り組んでいる練習を教えてください

 箱根に向けて距離がさらに伸びてくるので、実践的な練習を中心にやっています。

――出雲や全日本と箱根の違いはどういったところですか

 チーム全体としても箱根が一番大事だと捉えています。世間的にも箱根駅伝が一番注目度が高いので、そういった意味でもチームの緊張感は高くなっていますし、それに伴って一人一人の意識も高まっているのかなと思います。

――4区を希望されていますが、その理由を教えてください

 第一に往路を走りたくて。というのも、往路というのは各大学のエース級の選手が集まる区間だと思っていて、かつ自分の特性的に単独走が予想される4区や、気候条件に関してもタフなレースが展開される状況が自分に合っているのではないかと思ったので4区を走りたいです。

――出雲、全日本と長屋選手から工藤選手という流れが続いていますが、箱根でもその意識はありますか

 工藤だけではなくて、大志先輩(伊藤大志駅伝主将、スポ4=長野・佐久長聖)だったり、竣平(山口竣平、スポ1=長野・佐久長聖)だったり、佐久長聖高同士でのタスキ渡しもしたいと思っているので、そういった意味でも往路への思いは強いです。

――長屋選手にとって工藤選手はどんな存在ですか

 同じ学年ですが、意識高く取り組んでいますし、尊敬できる部分が多々あります。ライバル関係ではありますが、吸収できる部分は多くあるので、すごく刺激になっているなと思います。

――単独走か集団走では、単独走の方が好きですか

 そうですね。集団も嫌いではないのですが、淡々と自分のペースで刻む方が、結果的に自分に向いてるのかなという感じですね。

――箱根でキーマンになりそうな選手がいたら教えてください

 工藤もそうですが、僕は山口竣平が面白いんじゃないかなと思っていて。出雲では本人は不甲斐ないと言っていましたが、全日本はうまく走れていたし、全日本が終わってからもいい練習ができています。調子は見ていて良さそうなので、本番も走ってくれるんじゃないかなと思っています。

――箱根駅伝が4年生にとって最後の大会になりますが、4年生、特に高校の先輩である伊藤大志先輩への思いはありますか

 大志先輩に関しては、春からキャプテンとしてすごくチームメイクに力を尽くしていて。走りでもそうですし、行動としてもキャプテンらしい言動をされているので、そういった思いを最後の駅伝にぶつけてほしいなと思います。

――箱根での個人としての目標を教えてください

 チームとして3番以内を目指しているので、どこの区間を走るにしても3番以内というのは目指していきたいですし、安心して任せられるような走りというか、安心して見ていられるようなレース、駅伝にしたいなと思います。

――最後に意気込みを一言お願いします

 チームで3番以内を目標としているので、メンバーの一員としてしっかり自分の役割を果たしたいと思います。

――ありがとうございました!

【早稲田スポーツ新聞会】

◆長屋匡起(ながや・まさき)

2004(平16)年8月19日生まれ。173センチ。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部2年。アイスに詳しいという長屋選手の、一番好きなアイスはセブンイレブンの「生チョコアイス」。甘さの割にカロリーが高くないところが魅力だそうです!
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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