2023-24シーズン総括インタビュー 立川理道(後編)

チーム・協会

「最終節のサンゴリアス戦が来シーズンに向けての最低限のスタートライン」

第14節のコベルコ神戸スティーラーズ戦を皮切りにチームは3連勝。最終節のサンゴリアス戦でも快勝を収め、クボタスピアーズ船橋・東京ベイは文字通り「フィニッシュストロング」でシーズンを締めくくった。昨季王者が最後に見せつけた意地とプライド。その先に、チームの明るい未来が見えた。

今季ホストゲーム初勝利となった4月21日、第14節のコベルコ神戸スティーラーズ戦。根塚洸雅がトライを決め、立川もこの笑顔 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

スティーラーズ戦はメンタル的にもいい状態で臨めた試合

――第14節、札幌ドームでのコベルコ神戸スティーラーズ戦では、今季ホストゲーム初勝利を収めました。ここからの3戦は連勝し、シーズンを「フィニッシュストロング」で締めくくりました。
立川 状況としては、第13節の静岡ブルーレヴズ戦が引き分けに終わったことでプレーオフ進出が厳しくなっていました。スティーラーズ戦のころは、プレーオフに進出できないことがほぼ決まってしまっていたこともあり、最終節までの残り3試合をどう闘っていくかといったことを話し合ったタイミングでもありました。リーグワン初開催となる札幌の地で、スピアーズとしてどういったラグビーをやっていくか。そういったことを話し合うことができたので、メンタル的にもいい状態で臨めた試合ではあったかもしれません。
――少し変な質問になってしまいますが、プレーオフに進出できないことがほぼ決まった段階で、いい意味で選手のみなさんの肩から力が抜けたというのは?
立川 ブルーレヴズと引き分けた段階で他力本願でしかプレーオフに進出できないような状況で、しかもまだホストゲームでは勝てていませんでした。そうした中で、残り数試合、スピアーズらしさを全面に出していこうと。吹っ切れたわけではありませんが、そういったところは確かにあったかもしれません。
――そこからのモチベーションの維持は?
立川 もちろんプレーオフに進出できなくなった時点で、僕らが目指していた優勝は叶わなくなりました。ですが毎シーズン、退団する選手や引退する選手など、チームから離れる人がいるものです。杉本(博昭)さんや岡山(仙治)など、すでに引退することをみんなに発表している選手もいました。日々の練習でも、試合でも、そういう選手たちと一緒に過ごせる時間を楽しむことも、とても大事です。今シーズン、このチームで、みんなと一緒に闘える残された時間を大切にしようと。そういうことを口にするようになったのも、ちょうどこのころでした。

新世代の選手たちが輝いたシーズン終盤。今季入団の為房慶次朗もその一人。三重ホンダヒート戦、サンゴリアス戦ではトライも挙げて勝利に大きく貢献 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

チームのシステムも含め、信頼して闘うことが大事

――第15節の三重ホンダヒート戦、最終節の東京サントリーサンゴリアス戦は、若い選手が大いに活躍して快勝し、スピアーズの明るい未来が垣間見えた試合になりました。特にサンゴリアス戦では試合終了のホーンが鳴らされたあともトライを奪いにいく姿勢を見せ、ファンに次のシーズンに向けての期待を抱かせる内容になりました。
立川 チームにとっても自信につながる試合になったと思います。ただ、これが来シーズンに向けての最低限のスタートラインです。ここからさらに、伸ばしていかなければいけません。あのサンゴリアス戦を自分たちのマックスだととらえてしまうと、来季も厳しいシーズンになると思います。あのような試合ができたことをベースにして、そこからさらに上積みしていく必要があります。
そうした中で、シーズン終盤に山崎や島田たちが活躍してくれたのはすごくよかったと思います。フォワードでは若い1番(紙森陽太)、2番(江良颯)、3番(為房慶次朗)が活躍して、最後に福田(陸人)もデビューしました。来シーズンに向けて、すごくいいものが残せたと思います。
――最後の質問です。今シーズンに得た最も大きな学びは?
立川 メディアの方たちに向けて発信してきた言葉の中でも、今シーズンは「学びを得て、次に進む」といったことが多かったと思います。これは負けたときもそうですし、勝った試合でもそうです。チームのシステムも含め、信頼して闘うことが大事だと思います。自分たちがやりたいことの軸をぶらさずにやっていくことが大事だと、改めて思いました。
これからも、チームには極端に大きな変更点はないと思います。今いるメンバーが大きく変わることもないと思います。つまり、今このメンバーでスピアーズの強みを出していかないと、勝っていくことはできません。そういう意味でも、最後の数戦は、次につながる試合ができて、よかったと思っています。

4月27日、ホストスタジアム「スピアーズえどりくフィールド」で行われた第15節の三重ホンダヒート戦では公式戦150キャップを達成。闘いはまだまだ続く 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

文:藤本かずまさ
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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