2023-24シーズン総括インタビュー 立川理道(中編)
「レフリーではなく、自分たちに目を向けるということを言い続けた」
今季は公式戦16試合全戦に出場。体を張ってチームを鼓舞した 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】
大きかったギャラガー・チーフス戦の意義
立川 2月に開催された「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」のギャラガー・チーフス戦がきっかけになったように感じています。あの試合で、自分たちのやるべきことがスーパーラグビーのチームにも通用するということを、選手たちが感覚的に感じることができたと思います。そこからは、公式戦でも結果だけには左右されないチームの強さというのが感じられるようになりました。
――「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」については、当初は開催時期について疑問する声も聞かれました。しかし、スピアーズはスーパーラグビー準優勝チームのチーフスに大善戦。結果的に大きな意義を持つ試合になったように感じます。
立川 開催時期や、タイミング、また本当に開催すべきなのかというところは議論すべきだとは思いますが、結果的に敗れはしたものの、僕たちにとって(あの試合の意義は)大きかったかもしれません。
――そしてシーズン中盤以降は、チーフス戦で爪痕を残した岸岡智樹選手、山崎洋之選手、島田悠平選手たちが活躍を見せました。
立川 バックスではその3選手の活躍は際立っていたと思います。チーフス戦で自信を掴み、リーグの公式戦でもいいパフォーマンスを発揮し続けました。そういった点に関しては本当によかったと思います。
――ただ、第8節では三菱重工相模原ダイナボアーズに敗れ、第10節で横浜キャノンイーグルスに大逆転を収めるも、続く第11節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦では完敗するなど、波に乗れない状況が続きました。
立川(要因は)シーズン序盤と同じです。プレッシャーがかかったときに一貫性が保てませんでした。チームとして苦しい状況を乗り越えていくような強さがなかったと思います。
――第12節の東芝ブレイブルーパス東京戦では前半は素晴らしいゲームを展開しながらも、後半に巻き返され、逆転負けを喫しました。ただ、内容的には本来のスピアーズの強さを取り戻したかのような印象を受けました。
立川 そのタイミングでバーナード・フォーリーが復帰してきたのも大きいです。ボールを持ってアタックする時と、ボールを手放す時のタイミング。ここはゲームをコントロールする選手がかなり重要なポジションになってきます。そうしたところをうまくコントロールしてくれたと思います。フォワードも、自分たちのフィジカルをうまく前面に出してくれるような闘いやすさを感じたと思います。
2月に開催された「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」のギャラガー・チーフス戦は新世代の選手たちが台頭。「そこからは、公式戦でも結果だけには左右されないチームの強さというのが感じられるようになりました」 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】
みんなが同じ絵を見ていないから、ブルーレヴズ戦は引き分けになってしまった
立川 ブルーレヴズ戦では前半は本当にいいラグビーができ、点差、内容ともにこのままいけば勝ちきれるような試合だったと思います。ただ、後半になって何か歯車が合わなくなったというか。もちろん、レフリーに対する感情などを含め、僕たちにもよくない部分があったと思います。改めて試合を見返してみると、もちろん疑問に思うところもありましたが、それはあのブルーレヴズ戦に限ったことではなく、毎試合あることです。みんなが同じ絵を見ていないから、自分がやるべきことを実行できなかったから、引き分けになってしまったと思います。最後は自分たちのラグビー自体もよくなかったと思います。
自分たちに目を向けたら、反省すべき点がたくさん見つかりました。ここをレフリーがどうのこうのという話だけで済ませてしまうと、今後ずっと負け続けるだろうと感じました。だから次の週のミーティングからは、レフリーではなく自分たちに目を向けるということを言い続けました。
――レフリーに対する感情や怒りの鎮め方というものはあるのでしょうか?
立川 これはもう、本当に個人の問題です。僕一人の力ではコントロールできません。何か思うことは、みんながあると思います。その感情を僕が鎮めるのは難しいですし、僕も感情的になってしまうこともあります。僕の場合は深呼吸をして、周囲を見て、自分が何をすべきかを取り戻す術を持っていますが、各々の選手たちがそうした術を持っているかと言われると、そうではないと思います。もちろん僕らがサポートしていくことはできますが、試合中の一瞬一瞬の判断は個人が下していくことになります。そこではその選手の経験であったり、感情のコントロールだったりが重要になってくると思います。
――精神修行のようなものですか。
立川 ただ、15人いる選手の中で自分の感情をコントロールするのは、リーダー陣を含め数人でいいのではないかと思っています。その感情をコントロールできる選手がたくさんいればいるほど、いいと思います。一方で、「怒り」を覚えることが絶対にダメかといえば、そうは思いません。現に、怒りの感情を持つことで、ものすごいパワーを発揮する選手もいます。もちろん、その怒りがペナルティーにつながってしまうのは、よくありません。だから、ここは本当に個人個人の問題なんです。自分の感情をコントロールする術は、自分で学んでいかなければいけません。国際試合に出るようなトップの選手たちは、そういったところもうまいと思います。
文:藤本かずまさ
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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