BIG3を中心として適材適所に戦力を配した今シーズンの島根を総括【B MY HERO!】

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島根が誇る『BIG3』、左から安藤誓哉、ペリン・ビュフォード、ニック・ケイ 【(C) B.LEAGUE】

 Bリーグファンの皆様、お久しぶりです。今季、島根スサノオマジックのホームゲーム28試合を中心にバスケットLIVEでの解説を担当させていただきました、B MY HERO!特派員の一員、朴航生です。真夏日かと思えば朝方は一桁に冷え込むという天候の変動に体調を崩してはいませんか? かくいう私も、朝晩の服装に日々頭を悩ましております。

 暦の上ではすでに初夏を迎え、リーグもレギュラーシーズンが終わり、いよいよチャンピオンシップ(CS)が始まっているBリーグ。私を含め、ファンの皆様も「今季の王者がどこになるのか?」を楽しんでいるそんな梅雨入り前ではないでしょうか。CSの話はもちろん尽きることはありませんが、今回は私が今季も最も多く解説として担当させていただいた島根スサノオマジックのシーズンを振り返りたいと思います。

安定しなかった成績はメンタルバランスが整わなかったから?

 まずは結果から見ていきましょう。2023-24シーズンの島根は32勝28敗の勝率.533、西地区4位で終了。これはコロナ渦で行われた20-21シーズンの、当時のクラブ史上最高の成績を残した28勝32敗を若干上回るだけの結果となりました。シーズン終盤、勝てばCSへの望みが繋がる最後の6試合を6連敗と、今季最長の連敗でフィニッシュするチームにとってもファンにとっても苦しい2週間だったことでしょう。

 ポール・ヘナレHC体制、安藤誓哉選手とニック・ケイ選手加入後で初めてCS出場が叶わなかった中で、過去2年間届いていた王冠を目指して戦う最高の舞台へ上がれなかったことは大きな喪失感を伴ったようにも感じます。その裏には、ファンからのチームへの大きな期待からくる重圧はもちろん、どこか当たり前のようになっていた一つひとつの勝利への渇望、安藤選手が口にし続けていた「覚悟」といったような、選手たちのメンタルバランスがシーズンを通して整わなかったようにも思えます。

ヘナレHC体制で初めてCS出場を逃すシーズンに 【(C) B.LEAGUE】

 シーズンを通して素晴らしい成績を残し地区上位でCSへ進むためには、開幕からのスタートダッシュを成功させ、どんな状況であれ強豪との試合を5割以上で勝ちきり、下位チームからは星の取りこぼしをなくしていくところから始まります。

 その側面から今季の島根を振り返ると、開幕からの1カ月、成績で見れば7勝2敗と好スタートに見える中で、2つ目の黒星は昇格組の長崎ヴェルカにでした。その後、年末までの川崎ブレイブサンダース、琉球ゴールデンキングス、千葉ジェッツ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、宇都宮ブレックスと今季CS出場争いをしていく強豪との対決を3勝6敗と負け越しています。

 加えてこの時期に京都ハンナリーズ、佐賀バルーナーズからも黒星を付けられ、ロスターの健康状態も悪い中で思うように進むことのできないフラストレーションをチームとしても感じていたかもしれません。年明け後は群馬クレインサンダーズ、広島ドラゴンフライズと2勝1敗としながらも、茨城ロボッツ、京都に手痛い敗戦を喫し、2月以降3月終盤までの上位対決であった三遠ネオフェニックス、サンロッカーズ渋谷、アルバルク東京、名古屋Dとの試合を3勝4敗とここも負け越しています。

 さらには、この時期にも長崎から2つ、佐賀から1つの黒星を付けられてしまいました。それでもまだ、西地区2位でのCS出場が見えていた4月に、最初に仙台89ersからオーバータイムでの1敗を味わい、巻き返しを図るためにつけたい勢いが付けられませんでした。

 最後に残されていた同地区上位直接対決となった広島、琉球、名古屋Dとの7試合を2勝5敗とし、冒頭でも挙げたように心身ともに疲弊し切った中でアウェイ大阪戦までの最後の6試合の結果を白く染めることは叶いませんでした。

 こうして振り返ると、上位チームとの直接対決の成績は10勝15敗の勝率.400としたところと、最終的に島根よりも下位でシーズンを終えたチームから喫した9敗は最終成績に大きく響いたように見えます。

ファン・ブースターの熱量が高いことでも有名な松江市総合体育館 【(C) B.LEAGUE】

安藤、ビュフォード、ケイの『BIG3』が魔境・西地区で奮闘

 昨季までのチームをベースにBIG3の安藤、ケイ、そしてペリン・ビュフォードの3選手を中心に構築した今季のロスターは、適材適所といった言葉が当てはまるチーム構成だったように思えます。

 しかし、怪我などによるアクシデントも多く、その時期に求められたチームの対応や選手のステップアップは一定のレベルでこなしたように見えましたが、チームとしてそれらを糧に上積みをできてはいなかったのかもしれません。

 何より、BIG3に与えられた役割に対しての使命の重さと、責任の大きさが、彼ら自身が上手くいかない時に、チームとしてコントロールできる総量をはるかに上回ってしまったように見えました。2季連続の得点王となり、リーグ史に残る活躍を見せているビュフォード選手もシーズン終了を待たずに帰国、チームからは右足首の手術のためと発表もありました。

 安藤選手もビュフォード選手を追随する得点力、昨季の3PT決定本数を上回りながらもそれだけではチームを勝利へ導けなかったことに難しさを感じていたかもしれません。最終戦後の会見でもポイントガードとしての自分をもう一度見つめ直していく必要があるように感じているとコメントで残していました。

 ケイ選手はBIG3の中で唯一の全試合出場を達成し最終戦で鬼神の如きスタッツでトリプルダブルを達成するものの、グルーガイとしてチームをCSに導くことができなかったことにおそらく責任を多く感じているでしょう。

 彼らBIG3を支えてきたロスターメンバーにとっても厳しく、苦しいシーズンとなった事は想像にやすく、谷口大智選手もシーズンを通して悩み続けたとコメントを残しています。3&Dとしての役割で言えば白濱僚祐選手や晴山ケビン選手にとってもその種の悩みはおそらく同じでしょう。瞬間的な爆発力ではBIG3に肩を並べるところを見せたバックアップガードの津山尚大選手も、なかなかその力を安定して発揮するには至りませんでした。

コアメンバーの一人、津山尚大 【(C) B.LEAGUE】

 オフシーズンにはパリ五輪を控えているので、オーストラリア代表として出場予定のケイ選手の去就はそれが終わってからではないかと想像できるので、チームの全貌が見えてくるのは他チームより遅いかもしれません。ここ3年は新加入選手のお披露目イベントを行ってきた島根だけに、今オフでのチームの動向はファンの気持ちの舵取りにも大きく影響を及ぼしそうです。3年目を終えたヘナレHCを含めたコーチ陣、BIG3は来季も継続するのか否か、それに伴い生じるロスターメンバーの入換、ワイリー光希スカイ、大橋大空のヤングガンズ両選手と最長在籍でチームの浮き沈みを一番知る北川弘選手がプレータイムを求めるのならば…。予断は許されません。

 今季を大きな教訓としチームとして学んだ末に成る来季のチーム体制に対して、 今季はまさしく魔境と化していた西の激戦を超える争いがそこに待っているのでしょうか。はたまた、 来季はB2降格がないレギュレーションの中、失敗を恐れず大胆な編成に踏み切る可能性も少なくはないかもしれません。

島根在籍最長の北川弘 【(C) B.LEAGUE】

 そんなことを思いながら、 惜しくも「It’ our turn!」 を果たせませんでしたが、 西地区からリーグ全体を盛り上げ、 『BIG3』というパワーワードを生み出したこのチームに、最大限の感謝と賛辞をこの場を借りて送りたいと思います。来シーズンはCSの舞台に返り咲くことを願いながら。

朴航生(B MY HERO!特派員)

【(C) 朴航生】

岡山学芸館高校を卒業後、アメリカ留学を経て、SHIZUOKA GYMRATSの一員としてABAへ参戦。帰国後bjリーグトライアウトの門を叩き、現B1の島根スサノオマジックへ入団、2シーズン在籍した。その後、Bリーグ開幕に伴いご縁を頂き、現在はバスケットボールコメンテーターとして島根のホームゲームを中心に奮闘中。ホーム、アウェーを同様に解説する姿勢、わかりやすい戦術解説に多くのファンを持つ。

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