J3はいわきFCが参入初年度で初優勝

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【©IWAKI FC】

2015年の立ち上げ以来、スポーツビジネスマーケットの拡大に寄与してきたデロイト トーマツ グループのスポーツビジネスグループがお届けするJリーグマネジメントカップ。Jリーグ所属チームが優勝をかけて競うのは、ビジネスマネジメント視点で設けられた4ステージ「マーケティング」「経営効率」「経営戦略」「財務状況」の評価です。J3は参入したばかりのいわきFCが制しました。
※当記事はJリーグ マネジメントカップ2022調査レポートに掲載した内容を一部改訂して転載しています。

J3昇格初年度のいわきFCが栄冠をつかむ快進撃

いわきFCはマーケティング分野で2位、経営効率分野で8位タイ、経営戦略分野で1位、財務状況分野で3位となり、J3昇格初年度にも関わらず見事に優勝をつかみ取りました。J3昇格というFM面での好材料をBM面に存分に生かし、大幅な増収を達成しています。加えて、売上原価をうまく抑えつつ売上高成長率45.8%を記録したBM手腕も見事です。現在検討されている、スポーツで社会価値を創造することを掲げるクラブの姿勢が表れたスタジアム建設計画など、今後も地域とクラブで様々な相乗効果が期待できそうです。

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平均入場者数・スタジアム集客率

平均入場者数は前年比+809人(+42.3%)の2,722人となり、降格組の相模原を除く17クラブで昨シーズンより平均入場者数が増加しています。特に増加率が高かったクラブは、今シーズンの昇格組のいわきを除くと福島、愛媛、鳥取で、それぞれ+67.0%(+588人)、+58.4%(+1,084人)、+47.2%(+559人)でした。

なお、同県・近県に同ディビジョンのクラブがあると増加率が比較的高くなる傾向にあり、いわゆるダービー効果を示しています。増加率トップの福島に関しても、2022年シーズンは同県のいわきと初めてJリーグの舞台で共闘するシーズンであり、特に5月4日のホーム試合では4,501人とクラブ史上最多の入場者数を記録しました。近隣に同ディビジョンのクラブが存在し、地域間のライバル意識に火がつくような試合は今後も多くの入場者を期待できそうです。

スタジアム集客率の平均は前年比+5.7P(+37.0%)の21.1%となりました。この水準はコロナ禍前(18.2%)の水準を超えており、既にアフターコロナのフェーズに突入したといえます。全18クラブ中16クラブが前年比プラスとなり、そのうち今治(45.8%)、いわき(42.9%)、松本(41.3%)の3クラブではコロナ禍前のJ2平均水準である40%を超える集客率を記録しました。中でもJFLから昇格したいわきはJ3最大の+18.5Pと数字を大きく伸ばし、昇格の勢いそのままにJ3で2位の集客率を達成しました。

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SNSフォロワー数・SNSフォロワー数増減率

プロスポーツクラブ経営においては、競技力強化目的で人件費になるべく多くの資金を投下することが一般的でしたが、人々や地域に支持され、持続的な経営がなされるためには、他の分野への投資も大切となります。特に競技力において上位ディビジョンとの差があるJ3では、競技力以外でのクラブの価値を底上げするための投資も重要です。

SNSフォロワー数の平均は前年比+14,916人(+37.1%)の55,090人でした。上位3クラブは、松本(144,593人)、相模原 (120,317人)、岐阜(77,648人)といずれも近年までJ2を戦っていたクラブでしたが、4位にはJFLから昇格したいわき(69,668人)が入り、J3優勝の勢いが約1.3万人のフォロワー数増加に反映される結果となりました。

フォロワー数を5,000人以上伸ばしたのは7クラブありました。そのなかで、いわき(+13,171人)、藤枝(+6,918人)、鹿児島(+6,241人)、松本(+6,653人)の4クラブは、FM面での好成績が、BM面にもプラスの効果をもたらしたと考えられます。フォロワー数増加の内訳ではX(旧Twitter)が最も多く、全体の約45%を占めました。また、7クラブが新たにTikTokを開設し、ファン・サポーターとの接点を増やす試みが見られました。

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SNSフォロワー数増減率の平均は前年比▲4.9P(▲29.0%)の12.1%となり、昨シーズンの増加傾向から減少に転じました。トップは23.3%を記録したいわきで、2015年末に運営会社を設立したのち、2016年に本格始動してから7年目となる2022年シーズンにJ3に参入し、初年度でJ3優勝を成し遂げました。優勝を果たした2022年11月には、直前の10月と比較して+2,398人(+3.7%)とフォロワー数が大きく増加しており、優勝の話題性により急速にフォロワーが増加したと推測されます。このことからも、FM面での結果がSNSにも大きく影響を与えることが確認できます。

なお、昨シーズンもJ3で活動し、2期連続で2桁の増加率を達成しているクラブは6クラブとなりました。これはJ2の6クラブと同水準であり、J1の4クラブを上回るクラブ数となっています。BM施策によってJ3が底上げされることが、Jリーグ全体の底上げにつながることからも、重要な指標であると考えられます。

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グッズ関連利益額

グッズ関連の平均利益額は、前年比+10百万円(+94.8%)の20百万円でした。同利益率は前年比+7.9P(+25.5%)の39.2%、物販収入も前年比+19百万円(+59.4%)の51百万円となり、全ての指標において改善する結果となりました。2022年シーズンより声出し応援が本格化し、シーズンの総入場者数が+19,495人(+72.8%)増加したことが物販収入に好影響をもたらしたと考えられます。

利益額のトップは鳥取の67百万円となっており、昨年の16百万円から+51百万円(+318.8%)で、大幅に改善されています。背景には、デザイン性の高いユニフォームのEC販売などの影響に加え、地元小学校などの芝生化事業(Shibafull)による芝生販売収益の上乗せの影響が表れていると推察されます。

J3のクラブはまだ経営規模が小さいものの、平均利益額が10百万円増加して20百万円に到達するなど、昨年のJ2の平均利益額が25百万円という状況を考えてもポテンシャルは高いため、今後の市場規模拡大に期待できます。

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売上高

J1やJ2に比べてビジネス規模が小さなJ3は、クラブライセンス制度が要請する財務基準の要求を満たすことは難度が高いからこそ、しっかりとした成長の基盤を整えられれば、その伸びしろは大きいと考えられます。コロナ禍の影響は無視できないものの、まずは堅実な経営で財政を安定させることが重要です。

売上高の平均は、前年比+ 162百万円(+32.0%)の668百万円でした。内訳を見ると、入場料収入が+29百万円(+128.7%)、物販収入が+19百万円(+57.7%)、スポンサー収入が+55百万円(+18.3%)と全ての売上高構成要素において昨シーズンを上回る結果となりました。アカデミー関連収入も+13百万円(+50.4%)と大幅に増加しており、各地域でのホームタウン活動が活性化していることがうかがえます。

また、いわきはJ3参入初年度ながら、売上高は770百万円とJ3平均の668百万円を上回りました。2023年シーズンからは、J3とJFLクラブの入れ替えも始まり、J3ディビジョンとしては大きな転換点となります。リーグ終盤まで予断を許さないFM面の活性化に加えて、BM面においてもさらなる工夫が求められます。

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自己資本比率

2022年シーズンにおけるJ3の平均は、前年比+13.8P(+92.5%)の28.7%で、全18クラブ中、最終の当期純利益で黒字を確保できたのは9クラブであり、債務超過は昨シーズンから2クラブ減少して1クラブと改善しました。本KPIのトップは宮崎の88.6%、最下位は鳥取の▲79.2%となっています。

純資産の内訳を分析してみると、利益剰余金について累積黒字のクラブが5クラブ増加し6クラブとなり、改善が見られました。コロナ禍の厳しい環境下にあったとはいえ、健全なクラブ経営を維持・継続するためには、今後、黒字を継続することで利益剰余金についてもプラスにしていけるような健全経営を実現する必要があります。

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J3は特に経営リソースが限られている状況ではあるものの、ホームタウン地域の特性を生かした地域密着経営を通じて地域経済への貢献を図り、試合の集客や広告露出以外の収益力強化に向けたBM施策を実践していくことが重要であると思われます。

J3の結果の詳細、優勝したいわきFCに焦点を当てた分析記事などは、Jリーグマネジメントカップ2022のレポート(https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/consumer-and-industrial-products/articles/sb/j-league-management-cup.html)をご覧ください。
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著者プロフィール

デロイト トーマツ グループは、財務会計、戦略、マーケティング、業務改革など、あらゆる分野のプロフェッショナルを擁し、スポーツビジネス領域におけるグローバルでの豊富な知見を活かしながら、全面的に事業支援を行う体制を整えています。またコンサルティング事業の他、国内外のスポーツ関連メディアへの記事寄稿などを通し、スポーツ業界全体への貢献も積極的に行っています。

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