川崎小学校に大型遊具設置。その裏にあった地域とフロンターレの強い思い

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

10月8日(水)、川崎市立川崎小学校のPTAなどが2年以上かけて取り組み、フロンターレも寄付に参加した「校庭遊具設置プロジェクト」が実を結び、“ブルーマウンテン”と称された大きな遊具の贈呈式が川崎小学校で行われた。なによりも子どもたちが大きな遊具を目の前にして興奮している様子が印象的だった。なぜなら2年前はまともに遊具で遊ぶことができなかったのだから──。

動き出したプロジェクト

遊具の滑り台でふろん太がポージング 【© KAWASAKI FRONTALE】

プロジェクトが動き出したのは2021年。2019年に市教育委員会が一般社団法人公園施設業協会の基準等に基づき点検をし、川崎小学校では老朽化した7基が使用禁止に。遊具は「KEEP OUT」と書かれた黄色いテープで囲われてしまい、残されたのは鉄棒のみ。さらにコロナ禍も重なったこともあって子どもたちから少しずつ元気がなくなり、それこそ1年生から、3年生までは遊具を遊んだ経験すらない子もいた。

そんな状況下をなんとか脱するために動き出したのが川崎小学校のPTA役員。「大人が頑張って、やればできることを見せたい」と2021年9月に校庭遊具設置プロジェクトを開始させた。まずはポスターの掲示を周辺の店舗に頼み込み、説明するために町内会も回った。その熱意が徐々に伝わっていき、地域住民や卒業生、地元企業から少しずつ寄付金が集まっていった。

ただ、遊具を設置するにはまだまだ足りない──。そんななかフロンターレ・吉田明宏社長宛にPTA役員からの1通の手紙が届いた。そこに記されていたのは「子どもたちにとって休み時間は冒険のはじまりです。在校児童だけではなく、将来巣立っていく子どもたちの記憶に、校庭で過ごす休み時間の思い出が残ることを願っています」と子どもたちを思う強い願いだった。これを読んだ吉田社長はPTA役員と話し合いをして300万円の寄付をすることを決めた。その理由は子どもたちのためでもあるが、フロンターレが常々大事にしてきたことが幹にある。

「常日頃から我々を応援してくださっている方々が数多くいらっしゃいます。その収益を地域の方々に還元していくことはフロンターレにとってとても大事なことです。もちろんクラブとして得た利益でいい選手を獲得することやアカデミー選手の育成に使うことも大切なことなのは分かっています。ただ、遊具で遊ぶことは子どもたちの成長につながりますし、収益を地域の方々に還元していくことはフロンターレの責務だと思っています」(吉田社長)

ついに完成した“ブルーマウンテン”

大きな公園に設置するような豪華な遊具 【© KAWASAKI FRONTALE】

また、フロンターレが協力してくれたことでもたらした影響も大きかった。PTA運営委員会会長の小野塚さんは言う。

「フロンターレさんが関わってくれたことでプロジェクトの信用性が一段二段上がったと思います。周りからもどうやって口説いたんだと言われることもありますが、我々が口説いたわけではなく、たまたまフロンターレさんが地域にお金を還元する施策と合致しただけです。本当にフロンターレさんが協力をしてくれたことで、プロジェクトの認知度も上がりましたし感謝しかありません」

そして複合商業施設を運営するチッタ エンタテインメントからも300万円が寄せられて、寄付金は合計327件 、約1031万円となり、ついに遊具が完成した。縦6.4メートル、横11メートルで青色のフロンターレカラーを基調とした特注品の総費用は980万円。残金で記念プレートも付けた。また、子どもたちより新設遊具の愛称を募集し、集まった愛称の中から全児童による投票が行われ、1番多い投票数の「ブルーマウンテン」に決まった。そんな遊具を目の当たりにした生徒は笑顔が弾け、贈呈式では代表児童が感謝の思いを言葉にした。

「私たちが遊んでいた遊具が老朽化により、ほとんどが撤去されてしまいました。そのため、川崎小学校では遊具で遊ぶことができない児童が数多くいました。このような悲しい状況のなかで新しい遊具を設置してくれたことを、心から嬉しく思っています。この遊具の設置をキッカケに休み時間で他学年との交流を増やして、より明るく良い学校にしていきたいと思っています。今回、遊具設置のプロジェクトを進めてくださったPTAの方、寄付をしてくださった方、工事をしてくださった方など、このプロジェクトに携わってくれたすべての方に感謝の気持ちをもって大切に遊具を使っていきたいです。新しい素敵な遊具を設置してくださり、本当にありがとうございました」

川崎小学校の児童たちも遊具で夢中になって遊んでいた 【© KAWASAKI FRONTALE】

贈呈式終了後には子どもたちが実際に遊んで大盛りあがり。校長の中臣信丈先生は「子どもたちにとって最高のプレゼントになりました。これができたことによって学校生活が今まで以上に楽しく充実すると思います。これから、この遊具があるからこそ学校に行くのが楽しみだと思ってくれる児童が増えると思うし、学校の宝物にもなります。大切に使っていきたいです」と嬉しそうな表情を浮かべていた。

遊具で遊ぶことで運動能力の向上が期待でき、なにより外で体を動かすことの楽しさをより感じることができるだろう。これを実現することができたのはお互いが助け合うことや、PTA役員を中心に地域の方々の結束があったからこそ。フロンターレとしても、この活動を通して「フロンターレを大好きになってもらえれば最高です」と吉田社長。これからも地域とともに、よりよい街づくりに寄与していく姿勢を変えることなくフロンターレらしい施策を進めていく。

(取材・文: 高澤真輝)
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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