川崎とどろきパークの取り組み。等々力陸上競技場の芝生について

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

株式会社川崎フロンターレ(以下、川崎フロンターレ)、富士通株式会社、東急株式会社ほか6社の共同出資により設立した川崎とどろきパーク株式会社(以下、川崎とどろきパーク)。「等々力緑地の再編整備・運営等を通じて、調和ある社会と一人ひとりの幸せを追求する」という企業理念のもと、2023年4月1日より等々力緑地の運営・維持管理業務をスタートさせた。今回は川崎とどろきパークの取り組みである等々力緑地再編整備のひとつ、等々力陸上競技場の芝生の維持管理にクローズアップする。

選手が気持ちよく試合に臨めるピッチを

等々力陸上競技場は例年5月、6月にはすでに天然の夏芝(暖地型芝生)が広がる、安定したピッチコンディションを保つスタジアムとして長年認識されていた。1年中緑の芝生を保つために冬芝(寒地型芝生)と夏芝を入れ替わりで育てるオーバーシードという育成法を採用し、春先から冬芝をあまり育てず夏の芝枯れのリスクを減らす方法をとっていたことがその理由として挙げられる。

しかし、ここ数年に関しては夏芝がうまく育たない状況が続いていたという。冬芝を夏季まで引き伸ばすことでどうにか対応していたが、その代償として夏芝の数が年々減少。関係者の間では、いつ限界がきてもおかしくないという声が上がっていた。

等々力陸上競技場の俯瞰画像※2023年7月16日撮影 【©KAWASAKI FRONTALE】

そこで今年4月から等々力陸上競技場の維持管理を務めることになった川崎とどろきパークが、川崎フロンターレの練習場である麻生グラウンドの芝生のメンテナンスを請け負う湘南造園株式会社(以下、湘南造園)とともに夏芝の再生に着手した。年間を通して芝の状態を安定させるための、いわば大改革のためのリセット作業だ。等々力陸上競技場の支配人を務める谷本剛さんはこう説明する。

「夏の等々力のピッチコンディションは今年の問題ではなくて、長年の使用による蓄積や管理方法が大きな理由だと思っています。さまざまな事情はあるにせよ、ここ数年で芝の状態が悪くなっていたのは事実なので、湘南造園さんに入っていただき現段階の問題点を洗い出しながら、選手が気持ちよく試合に臨めるピッチを目指しています」(谷本さん)

芝生は生き物。一朝一夕で状態が改善されるわけではない。大がかりな作業になることは想定内だったが、ピッチの状況が思いのほか悪く、川崎フロンターレのファン感謝デーが開催された今年7月半ばの時点で夏芝がほとんど生えていないような状態で、サポーターや近隣住民の方々からも心配の声が上がっていたそうだ。

2023年7月18日撮影。夏芝がまばらな状態であまり残っていない 【©KAWASAKI FRONTALE】

2023年8月6日撮影。夏芝を植え込み少しずつ定着させていく 【©KAWASAKI FRONTALE】

2023年8月12日撮影。ピッチ上に夏芝が広がってきた 【©KAWASAKI FRONTALE】

「等々力の芝の状態について会社に問い合わせをいただいたり、スタジアムでのビアガーデンを企画したときにも来場されたサポーターの方々から『芝は大丈夫ですか?』と聞かれることがありました。SNSでも等々力の芝の話題をされている方もいましたが、7月のフロンターレのアウェイゲームが続いた時期に大がかりなメンテナンスを行い、一時期と比べるとかなり改善傾向にあります」(谷本さん)
まずは長年の蓄積で凸凹ができていたグラウンドの中央付近やコーナーキック、ゴールキックを蹴るエリアの土台を徹底的に平坦にし、芝生に供給するエネルギーの量を見直した。そして夏芝を成長させつつ、それらを均等に行き渡らせるために、何万もの夏芝を植え込み、入れ替えを繰り返した。8月6日(日)のホームゲームG大阪戦(8月6日)では観客席から見ても夏芝が広がっていない箇所が目立っていたが、8月12日(土)の神戸戦ではかなり改善され緑の芝が広がっていた。

2023年7月20日撮影。冬芝が枯れて夏芝が点在している状態 【©KAWASAKI FRONTALE】

2023年8月6日撮影。作業の甲斐あって植え込んだ夏芝が短期間で生長している 【©KAWASAKI FRONTALE】

2023年8月12日撮影。枯れていた部分とのつなぎ目がほぼわからない状態に回復 【©KAWASAKI FRONTALE】

「現場の維持管理に関しては湘南造園さんへの絶大なる信頼があり、実際に芝の状態は日に日によくなってきました。我々がしっかりサポートしながら、よりよい等々力陸上競技場を目指して運営していきたいと思います。皆さんご存知のとおり等々力陸上競技場はJリーグだけではなくさまざまな競技団体の上に成り立っていて、日々競技の大会やイベントがスケジュールに入っています。川崎とどろきパークの業務としてはそういった各利用者様や利用団体の方々との調整や交渉のウェイトが大きくなっているので、平常時は湘南造園さんが水撒き等のメンテナンスができるような保証を取りつけて、各利用団体さんとも交渉していきたいと思います。芝生の維持管理だけでいうなら使わせないのが一番の改善方法ではあるんですが、そうではなくて使った上で最善のメンテナンスをしなければスタジアムとしての価値がない。それが湘南造園さんの基本的な考え方で、我々と同じベクトルを向いていると思っています。今後の計画も含めて、ともに歩みを進めていきたいですね」(谷本さん)

枯れている箇所を筒状に抜き、そこに夏芝を植え込み何度も入れ替え均一にする作業が続けられた 【©KAWASAKI FRONTALE】

ピッチ上で地道な作業を何度も繰り返す。気が遠くなる作業だ 【©KAWASAKI FRONTALE】

現状のテーマは夏芝の生長促進と維持管理。そして今後は高校サッカー選手権で使用されたあとの冬場のメンテナンスが課題とのこと。また長期的な計画としては、球技専用スタジアムへの改修に合わせた芝生の育成といったミッションが控えている。芝生の維持管理は見た目以上に困難で、非常に時間がかかる地道な作業だ。1年目ですべてを改善するのは難しいかもしれないが、少なくとも1年後には見違えるほど整えられた芝を見ることができるだろう。

2023年7月18日撮影。遠目で見ても枯れている冬芝と残っている夏芝の状況がよくわかる 【©KAWASAKI FRONTALE】

2023年8月6日撮影。一部のエリアを除き植え込んだ夏芝が定着している 【©KAWASAKI FRONTALE】

2023年8月12日撮影。この時点で均一な状態で夏芝がピッチに広がっている 【©KAWASAKI FRONTALE】

「今年4月から等々力緑地の指定管理業者となった川崎とどろきパークですが、個人的には選手経験はあるんですが芝生に関しての専門知識はまったくありませんでした。今年3月にロンドン、ドイツの視察ツアーがあり、本場のスタジアムや練習場を見学させてもらいました。また湘南造園さんから芝生の専門知識をいろいろ教えていただき、今後どんなスタジアムを作っていけばいいかという目標の共有、認識を合わせることができたんですね。非常に貴重な経験でした。また素晴らしいスタジアムを作ろうという思いは、私個人ではなく川崎とどろきパーク社員全員の強い思いでもあります。関係各所と協力しあいながら、よりよいスタジアム、よりよい等々力陸上競技場を作り上げていきたいと思います」

(取材:麻生広郷)

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8月26日撮影。Jリーグだけではなく陸上競技や高校サッカーで使用されたが、安定したピッチコンディションを保っている 【©KAWASAKI FRONTALE】

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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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