ゲームで広げるFOOTBALL TOGETHER - 川崎フロンターレが進める新たなホームタウン活動

川崎フロンターレ
チーム・協会
川崎フロンターレは7月16日、2023ファン感謝デー特別企画「FOOTBALL TOGETHER Powered by eFootball™」を開催した。
eサッカーゲーム「eFootball™」の舞台で立場・年齢・障がいの有無などの垣根を越えて共闘するこのイベント。山根視来・佐々木旭ら3選手と、チームスタッフ・サポーターがプレイヤーとして参加し、抽選で当選した120名のサポーター(60名×2試合)が「青援」を送った。またひとつ川崎フロンターレらしい新しい景色が生まれた。

川崎フロンターレにとってのファン感

川崎フロンターレのファン感は、「ガチのファン感」だ。選手やコーチもフル参加で臨み、当日用意される企画・ブース・出展総数は30を超える。内容も実にバラエティに富んでいて、各企画の準備に余念がない。

そもそも、シーズン途中にファン感謝デーを開催するクラブは極めて珍しい。今年は前日に昨年優勝の横浜F・マリノスと対戦し、翌週22日には首位・ヴィッセル神戸との一戦を控えていた。

なぜ、川崎フロンターレが、この時期にファン感を企画するのか。それは、

「スタジアムの一体感とファン・サポーターの熱量は、選手を突き動かす原動力になる。」

という信念があるからだ。夏が本格化する後半戦に向け、チームに関わるすべての人から選手たちに送るパワーの集合体を届ける。その舞台がファン感なのである。

ファン感の激アツLIVEで、車椅子から身を乗り出す羽飛 【©株式会社ePARA】

きっかけは、2月7日のイベント中、小林悠のひと言

遡ること2月7日。小林悠が、eスポーツイベント「車椅子イレブンがプロサッカー選手と創る『新しい景色』」に参加したときのことだ。小林悠は、車椅子eサッカーチーム「ePARAユナイテッド」のチームメイトとして出場し、2ゴールを奪う活躍。等々力を沸かすゴールゲッターは、ゲームの中でも大きな存在感を示した。イベント後のインタューで小林悠は、「今度は他のフロンターのイレブンも一緒にやりたい」とコメント。これが呼び水となり、今回の企画が実現した。

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2月のイベントに参加した小林悠 【©株式会社ePARA】

選手・チームスタッフ・サポーターが1試合限定のチームメイトに

「eFootball™」では、8人のプレイヤーが同一チームとしてプレイすることができる(2023年7月時点)。このイベントには、小林悠率いるTEAM YU-商店街のホットライン-と、山根視来率いるTEAM MIKI-日本の頂をめざすDFライン-の2チームがエントリーした。メンバーの内訳は、現役選手3名、チームスタッフ3名、サポーター5名、車椅子eサッカーチーム「ePARAユナイテッド」から5名の計16名(8名×2チーム)だ。サポーターには、応援団もいれば、川崎市内の小学生もいる。車椅子のプレイヤーは、コントローラーを足で操作したり、片手で操作したりと、実に個性豊かだ。

TEAM YUおよびTEAM MIKIの出場メンバー 【©株式会社ePARA】

現役選手では、小林悠が体調不良により急きょファン感を欠場。代理で「次世代のユウ」こと早坂勇希が参加した。対戦相手は、FCバイエルン・ミュンヘン。7月29日に実際に対戦することになっていた強豪チームである。

試合レポート1:年齢や障がいの有無を越えてeサッカーに熱狂 -TEAM YU-

小学生を含む幅広い年齢層のTEAM YU。立ち上がりにシミッチ(操作:早坂勇希)の一発レッドをきっかけに、不安定な守備が続く。MC・井上マーの「篠田さん!?!?」という声が連呼される中、戸田光洋コーチ、篠田洋介フィジカルコーチがコンビで声をかけあい、守備を修正。試合前に「リスク管理に徹底したい」と意気込んだ早坂勇希も小学生3人と連携してDFを統率し、失点を防いだ。
川崎市の福田紀彦市長や応援団の応援を受ける中、TEAM YUは少しずつ調子を取り戻し、足でコントローラーを操るたけちゃんを起点に攻勢に転じる。試合が動いたのは後半開始5分。一瞬の隙を逃さず小林悠がゴールを決めると(操作:羽飛)、直後にマルシーニョ(操作:羽飛)が立て続けにゴール。会場には歓喜のチャント「BASKET CASE」が響き渡った。終盤にはCKから小林悠(操作:戸田光洋コーチ)がヘッドによる追加点で3-0の快勝を収めた。
試合後には、川崎フロンターレおなじみのセレブレーション「バラバラ」。2ゴールのePARAユナイテッドの羽飛(つばさ)が声を張り、会場全体で喜びを分かち合った。
試合後のキャプテン代理・早坂勇希のコメント
「もう、最高でした。ふだんはゲームをやらないですけど、こうしてみなさんとサッカーできて楽しかったですし、幸せな時間でした。逆にパワーをもらった気がしました。」

戸田・篠田両コーチは車椅子メンバーの間で声のかけあいでゲームを組み立てた。 【©株式会社ePARA】

「大家族のお父さん」と称された早坂勇希は、「いけいけいけいけ!」を連呼した。 【©株式会社ePARA】

2ゴールを決め、MVPに選ばれた羽飛は、人生初の「バラバラ」を叫んだ。 【©株式会社ePARA】

川崎市・福田紀彦市長の来場に、会場は沸いた。 【©株式会社ePARA】

試合レポート2:負けず嫌いが集まって勝利にこだわる -TEAM MIKI-

2戦目は、実力者がそろうTEAM MIKI。片手コントローラーづかいのはるは、落ち着いたボールさばきで山根視来とチャンスを創出する。しかし、実力者・とりちゃんがGKの操作ミスからまさかの失点。ハーフタイムでは、山根視来キャプテンによる「GKどうした!?」という笑い付きの反省会が行われた。勝ち気の強いチームの雰囲気と裏腹に後半開始直後にも失点し、0-2の劣勢に。
しかし、TEAM MIKIは諦めない。サポーターのコーヘイ&タクマの連携や、佐々木旭や敦也のビルドアップでペースを引き戻すと、中盤のパスカットから小林悠(操作:山根視来)が得点。山根視来は、試合さながらに「早く!早く!」と試合を進め、逆転への強い意志を出す。(注記:eFOOTBALL™ではゴール後は時計が止まるため、再開を早める必要はない)以降、波状攻撃を見せるTEAM MIKIは、混戦からの佐々木旭のシュートでゴールネットを揺らすも、まさかのオフサイド判定。終了直前には、決定的シーンでマルシーニョ(操作:寺田周平コーチ)のシュートが脇にそれると、山根視来は立ち上がって手を大きく振りかざして悔しがった。そして無情のタイムアップ。
山根視来が「それにしても、GKの飛び出し、どうしちゃったの?」と失点の話題を“天丼”すると、ePARAユナイテッドのキャプテン・とりちゃんはタジタジ。その微笑ましい様子に、会場は大きな笑いに包まれた。
試合後のTEAM MIKIキャプテン・山根視来選手のコメント
「いろんな方とサッカーができて楽しかったです。本当のサッカーのように、みんなで考えていることを合わせないとうまくいかないという奥深さを感じました。」

佐々木旭選手のコメント
「すごく楽しかったですし、また機会があったらやりたいです。ピッチの中で一緒にできなくてもゲームの中でみんなと楽しくできるのはすごく良いと思います。」

キャプテン・山根視来を筆頭に、真剣な眼差しのTEAM MIKI 【©株式会社ePARA】

佐々木旭や寺田周平コーチも画面にくぎ付けでプレイ。 【©株式会社ePARA】

トークでも会場を沸かせる山根視来 【©株式会社ePARA】

記念撮影で全体が一つになった。 【©株式会社ePARA】

川崎フロンターレの選手やコーチが、川崎フロンターレを操作

「eFootball™️」には、J1~J3のチームすべてが実装されている。だからこの企画でも、川崎フロンターレのイレブンを操作できる。山根視来が山根視来を操作したり、佐々木旭が佐々木旭を操作したり、山根視来が操作する小林悠がゴールを脅かしたり。ゲームの中で普段のプレイを重ねて見ることができるし、そのプレイから選手同士の人間模様も想像できて、実に面白い。MCの井上マーは試合中、「山根視来選手らしい動きや佐々木旭選手らしい動きが見えますね」と語っていた。

川崎フロンターレのスターティングメンバー(「eFootball™️」内) 【©株式会社ePARA】

応援団やMCが一体になる、小さなスタジアム

また、eスポーツ企画として異質だったのは、応援団の存在だ。応援のリードは、いわゆるガチの応援団、サポーター団体「川崎華族」の有志が務め、前日の横浜F・マリノス戦でも使用した太鼓やメガホンも持参していた。会場に飾られた横断幕も、普段の試合で実際に掲示されているものだ。MCの声がプレイヤーに届くのもeサッカーの特色で、吉本興業のサッカー解説者・井上マー氏、プロゲーマー・GENKIモリタ氏らが、現役選手にも物怖じしない巧みな掛け合いで何度も会場を沸かせた。

スタジアムDJを視覚障がいの声優が務め、その情報保障を車椅子メンバーが行うなど、ダイバーシティの側面も豊かだった。そして当日の来場者は、川崎フロンターレ後援会入会済みで、事前募集で当選した60名のフロサポ。川崎フロンターレの文化を知り尽くす「同志」だ。ファン感の等々力陸上競技場・記者会見室は、こうして多様性に富んだ小さなスタジアムへと変身し、熱気に包まれた空間が生まれた。ゲームの世界で、川崎フロンターレを愛する人たちがひとつになった、新しい景色だった。

会場後方から、サポーターの“青援”が試合を盛り上げた。 【©株式会社ePARA】

MC陣は、誰よりも楽しそうに話す3人が全身を使って笑いの渦を生んでいた。 【©株式会社ePARA】

全盲の声優2人に、ePARAユナイテッドのアフロが目に見える情報を伝達。 【©株式会社ePARA】

事前申し込みに当選したサポーターが、プレイヤーの勇姿を応援。 【©株式会社ePARA】

FOOTBALL TOGETHERをゲームの世界から広げていく

川崎フロンターレが基本理念として掲げる「FOOTBALL TOGETHER」。市民、選手、スタッフ、スポンサー、サポーターなどすべての人と共に歩むクラブとしての目指す姿勢だ。しかし、実際にピッチでサッカーを一緒にとなると、それを体現できるサポーターの数は限られる上に、選手が本気になってプレイすることは現実的ではない。しかし、ゲームの世界となれば話は別だ。操作方法をおぼえれば、体力や年齢、障がいの有無を越えて、選手と一緒にプレイできる。そして、選手も夢中になって遊び、ゴールを決めれば同じ熱量で喜び合える。たくさんの垣根を越えた「FOOTBALL TOGETHER」に近づけるのだ。

「愛されて、勝つ」チームは、eスポーツの力も活用して、「FOOTBALL TOGETHER」の機会を増やし、地域やサポーターとの新たな関係づくりに挑む。その道のりはまだ始まったばかりだ。

(こぼれ話)早坂勇希は、大南拓磨とリハーサルに乱入

本番2時間前、TEAM YUの小林悠に代わって出場が決まったGK早坂勇希はDF大南拓磨とともに本番前のリハーサルに急遽参加した。少しでも「eFootball™️」に慣れておくためだ。初めての8人プレイに苦戦する2人が参加したTEAM YUは、リハーサルでは完敗だった…。またゲームの中で表現されるイレブンも新鮮だったようで、「ちょっと、(大南)拓磨くんがカッコよすぎなんじゃない?」と叫び、会場の笑いを誘っていた。

大南拓磨がリハーサルのみ特別参加 【©株式会社ePARA】

(文・株式会社ePARA)

※"eFootball"、"eサッカー"、および"eFootballロゴ"は、株式会社コナミデジタルエンタテインメントの登録商標または商標です。本イベントにおいては株式会社コナミデジタルエンタテインメントの許諾を得て使用しています。
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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