サッカーW杯・出場選手ランキング【CMF編】
記事
世界の超一流選手が集う4年に一度の祭典、ワールドカップ(W杯)。今回のカタール大会への出場が見込まれる選手の中で、最高のタレントと言えるのは誰か。
7つのポジションに分けて、それぞれにランキングを作成した。ポジションごとに設けた5つの評価項目を各10点満点で採点し、その合計点をもとに導き出したランキングだ。第4回はセントラルMF編をお届けする。(監修:片野道郎)
※上位と解説コラムはスポナビアプリのみでご覧いただけます。
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解説
ドイツのキミッヒ、ギュンドアンは補完性抜群のコンビ
あえて「セントラルMF」という呼び方を使い「守備的MF」としなかったのは、このカテゴリーのMFが必ずしも「守備的」なプレーヤーとは限らないから。「攻撃的MF」との相違点は、自陣からのビルドアップでは前線よりも最終ラインと強く結びつき、DFからパスを引き出して前線に供給する役割を担う、そしてファイナルサード攻略時にはボールのラインよりも後方に留まってのサポートとスペース管理を担う頻度が高い、という2点。
かつては「中盤を制する者は試合を制す」とよく言われたものだが、前線に1人でも多くを送り込もうとする傾向が強まった近年の戦術において、中盤はむしろ空洞化する方向に向かっている。その中でMFは前線とより強く結びついた「攻撃的MF」と、最終ラインとより強く結びついてビルドアップを担う「セントラルMF」に二分化されつつあるという構図である。
そのなかで後者に求められるのは、年々強度が増してきている敵のプレッシングをかわして前線に質の高いボールを送り込むゲームメイク能力、危険なスペースを素早く察知してケアする読みとポジショニング、そして1対1の守備力だ。さらにタイミングを見ての攻撃参加でも貢献できれば申し分ない。そして何よりも、それらすべてを90分に渡ってコンスタントに続けるだけのスタミナと運動量は、このポジションに絶対不可欠な要素である。
これらすべてを最もバランスよく、しかも高いレベルで併せ持っているのはヨシュア・キミッヒ(ドイツ)だろう。右サイドバックからセントラルMFへのコンバート、シンプルなパスワークでポゼッションを安定させ局面を前に進めるゲームメイク能力、攻撃参加のタイミングの良さ、攻守の切り替えにおける危機察知能力の高さと、多くの面で「前任者」のフィリップ・ラームと瓜二つ。中盤センターでの「交通整理」と攻守のバランス確保の両面におけるチームへの貢献度の高さは、バイエルン、ドイツ代表のいずれにおいても傑出している。
そのドイツ代表でキミッヒと2ボランチを組むのが4位のイルカイ・ギュンドアン。マンチェスター・シティでは1列上の攻撃的なポジションでプレーすることも多いだけに、早めのタイミングで敵陣に進出してファイナルサード攻略に積極的に絡んでいく攻撃的な振る舞いが持ち味だが、ボールのラインより後ろに留まって攻撃をサポートするゲームメーカーとしての能力も高く、キミッヒとの補完的な相性は抜群だ。
2ボランチの一角で持ち味を発揮するタイプとしては、攻守両局面でのダイナミズムと献身性というプレーの「量」が傑出しているだけでなく、タイミングのいい縦の走り込みでフィニッシュに絡むなど、そこに「質」の高さを上乗せすることができる5位のピレー=エミル・ホイベア(デンマーク)もハイレベルなセントラルMFだ。
アンカーとしてはカゼミーロとブスケッツが双璧
一方、4-3-3など3セントラルMFのシステムで、いわゆる「中盤の底」に位置するアンカーとして双璧をなすのは2位カゼミーロ(ブラジル)と3位セルヒオ・ブスケッツ(スペイン)だろう。カゼミーロは、攻撃の局面では常にボールのラインより後方に留まって危険なスペースを潰すことで被カウンターのリスクを未然に防ぎ、受けに回れば圧倒的なボール奪取力で最も危険なバイタルエリアを死守する「最終ラインのプロテクター」として、今なお世界最強のMF。昨季まで所属したレアル・マドリーやブラジル代表が中盤から上に攻撃的なメンバーを並べられるのは、カゼミーロの存在があってこそだ。
ブスケッツは同じアンカーながら、ビルドアップ時にボールに関与することで違いを作り出す攻撃の司令塔。ワンタッチ、ツータッチのシンプルなパスワークでボールを動かしながら攻撃に緩急のリズムを作り、相手の陣形を動かしながら味方の陣形を整えて攻撃の糸口を作り出す。安定したボール保持とボールロスト時の即時奪回を組み合わせ、ボールを支配することでゲームを支配しようとするスペインにとって、文字通り頭脳と言うべき存在だ。
6位のマルセロ・ブロゾビッチ(クロアチア)は、同じくゲームメイクを主な任務とするアンカーながら、より広いゾーンを動き回ってボールに絡んでいくタイプ。彼がルカ・モドリッチ、マテオ・コバチッチと頻繁にポジションを入れ替えながら攻撃のリズムを作り出すクロアチアの中盤は、出場国の中で最もスペクタクルな中盤のひとつだ。
7位のデクラン・ライス(イングランド)は、攻守両局面でほぼ常にボールのラインより後ろに留まり、豊富な運動量と高いボール奪取能力で最終ラインをプロテクトする古典的な「ディフェンシブハーフ」の典型と言うべきMF。準優勝したEURO2020以来のパートナーであるカルビン・フィリップスが故障明けで本調子ではない可能性が高く、より攻撃的なジュード・ベリンガムとペアを組む可能性も高いだけに、守備の局面ではイングランドのキーマンとなることは間違いない。
本来のレギュラーが欠場する分、責任が重くなる立場という点では8位のオーレリアン・チュアメニ(フランス)も同様。文句なしで「世界最高のボールハンター」であるエヌゴロ・カンテの穴を埋めるのは簡単な仕事ではない。とはいえ、R・マドリーでカゼミーロの後釜として予想以上のパフォーマンスを見せているだけに、フランス代表での活躍にも期待していいだろう。
9位アンドレ・ザンボ・アンギサ(カメルーン)、10位トーマス・パーティ(ガーナ)は強靭なフィジカルとダイナミズムに支えられた高い守備力と、安定したテクニックによる攻撃への貢献度を併せ持ったバランス型のセントラルMF。カメルーン、ガーナというアフリカ勢にスポットライトを当てる意味も含めて選出したが、純粋なクオリティという点でもトップ10にふさわしいレベルにあることは、それぞれナポリ、アーセナルでの活躍ぶりが証明するところだ。
(企画・編集/YOJI-GEN)