「未来予想図が全く描けなかった」FA移籍1年目 日本ハム・福谷が明かす新天地の日々とこれから

北海道日本ハムファイターズ・福谷浩司投手 【ⓒH.N.F.】

 プロ13年目、34歳の右腕が新天地に選んだのは、昨季6年ぶりのポストシーズン進出と大躍進を遂げた北海道日本ハムファイターズだった。

 心機一転、新たな環境でスタートを切る福谷浩司投手。昨年12月には「結果的に移籍を決断することに前向きに働いた」と、自身の考え方に影響をもたらした出来事があった。一方で、ドラゴンズ時代から変わらずに意識していることもある。
◇ ◇ ◇

――ドラゴンズからファイターズへ移籍し、新天地で迎えるシーズンとなります。あらためて、ファイターズに入団するまでの経緯を教えてください。

 入団会見では「理解できなかったところが一番の決め手」と話しましたが、「ファイターズはどんなチームなのかな」「ここに入ったら自分はどうなるのかな」と、未来予想図が全く描けなかったんです。昨年2位になって、パーソル クライマックスシリーズ パを戦っていたところも見ていましたし、そんなチームから、昨年ドラゴンズでそんなにたくさん投げたわけじゃない自分が声をかけてもらったのは、不思議な感覚がありました。「福谷はこんなもんじゃないぞ」という声をかけていただいて「何かしら(自分に可能性が)あるんじゃないかな。でも自分ではわからないな」と。ドキドキ、ワクワク、不安…… 入団を決意したときはそんな気持ちでした。

ーー移籍を意識したきっかけは?

 ドラゴンズにいた特に後半の数年は、毎年結果が出たり出なかったりだったんですけど、自分にはまだまだ足りないものがあるし「こんなもんじゃないんだけど」ともどかしさを感じる瞬間がたくさんありました。ただ、名古屋で打開しきれなかった自分がいて、海外に行ってチャレンジもしてきました。そして「チームを変えるというチャレンジをしたらどうなるんだろう」と、そんな気持ちが強かったですね。

ーーチームを変えて心機一転。

 そうですね。もう全てが違う。一緒なのは野球をすることだけっていう。でも、そうやってチャレンジしたり、トライアンドエラーしたりするのがもともと好きなので、自分らしさではあるかなと思います。

――特に、今後伸ばしていきたいところはどこですか?

 ドラゴンズでの後半6年間は先発をやっていましたが、ケガがちょこちょこあったり、自分の力を出しきれないこともあったり。技術やコントロールは少しずつものになっていきましたが、もともとリリーフをやっていたときや学生のときはバンバン投げるスタイルでしたし、正直もどかしさがあったんですよね。全身全霊、自分の全てをぶつけている感じというよりは、ちょっと小手先でやっているような感覚があって。そこで仮に「プロ野球選手を引退します」となったとき、「思い切ってやっていればよかったのかな」と思いかねないなと。

ーー今年で34歳を迎えました。

 年齢を重ねて、ケガに対する気持ちとか。やっぱり若い頃よりも守りに入ってしまいますが、思い切って攻めたいなとずっと思っています。ファイターズに来てからもフィジカル面を一から見直してもらって、昔どうだったかではなく、現状どうであるのかを。もっともっと強いボールを投げたり、投げ続けられるようにしたりするため、フィジカル面を強化したいと思います。

コミュニケーションの考え方に影響をもたらした“武者修行”の経験

――今年は新しい環境でのキャンプ生活となりました。かつてドラゴンズで一緒にプレーした選手の存在は心強いのでは?

 先乗りの自主トレのときに、グラウンドがどうなっているか、練習の流れがどうかということは、山本(拓実)に本当に助けてもらいました。今でもエスコンフィールドではどういう流れかとか。特に、最初の2〜3日は山本・郡司(裕也)にすごく助けてもらいましたね。

――他のチームメイトとはどのようにして打ち解けましたか?

 正直なところ、チームに溶け込むために、頑張ってコミュニケーションを取ろうとはあまりしていないんですよね。最終的にはチームで戦っていくんですけど、みんな自分の生活がかかっているなかで練習しているので、各々で力を磨いています。しっかり自分のことに目を向けている選手がファイターズには非常に多いと感じています。だから、コミュニケーションを取ろうと意識するよりは、自分のことに集中するなかで、ちょっとした合間に意見交換をするとか。「みんなと仲良くしなきゃ」と外ばかり見てしまうと、自分のことが疎かになってしまうので、お互いが取り組む様子を見て自然と知っていくのがいいかなと思うんです。

――環境が変わることへの不安はありませんでしたか?

 昨年12月はプエルトリコでウィンターリーグに参加していましたが、みんな言葉が通じないんですよ。「それに比べちゃえば、みんな日本語わかるし」って。あとは、野球をすること。自分が練習して、他の人が練習しているのを見ることがコミュニケーションになるのだと気付けたのは、プエルトリコでの経験がきっかけなんですよね。

ーー野球をすること自体がコミュニケーションになる。

 言葉はわからないけど、人間性やどんなことを言っているのかは、練習している姿や試合での振る舞い、抑えたとき、打たれたときにどんな表情になるかでだいたいわかるんですよ。それはファイターズに来ても一緒で、野球選手の場合、本当の自分はプレーに表れると思っています。移籍に関係なくウィンターリーグへの参加を決めていましたが、結果的には移籍を決断することに前向きに働きましたね。

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