週刊ドラフトレポート2025(毎週金曜日更新)

最注目は158キロ右腕・石垣元気(健大高崎)と右の大砲・立石正広(創価大) 2025年ドラフト有力選手は?

西尾典文

稀少な「右の大砲」立石が目玉、大学生・社会人も投手に好素材揃う

立石は大学でも早くからレギュラーとして活躍。1位指名の可能性も高い 【撮影:西尾典文】

 大学生・社会人で、現時点の目玉と言えるのが立石正広(創価大・三塁手)だ。高川学園時代は3年夏に甲子園でホームランも放つなど活躍。大学でも早くからレギュラーとなり、昨年は大学日本代表でも中軸を任せられた。圧巻だったのが昨秋の明治神宮大会だ。初戦の第1打席でいきなりライトへのホームランを放つと、その後もバットからは快音が止まらず4試合で15打数10安打、2本塁打、打率.667という大暴れ。さらに10安打は大会新記録だった。少し調子の波はあるものの、打球の速さと飛距離は圧倒的で、肩の強さと脚力も備えている。同じサードの強打者タイプだった佐々木泰(青山学院大→広島1位)と比べても全てが上回っている印象で、最終学年でよほどの不振に陥らなければ1位の可能性は高いだろう。

 大学生の野手で立石に続く存在になるのが松川玲央(城西大・遊撃手)だ。下級生の頃は首都大学の二部でプレーしていたためあまり話題になっていなかったが、一部に昇格した後も3季連続でベストナインを獲得し、大学日本代表候補にも選出された。183cmの長身でも抜群のスピードがあり、守備範囲の広さと積極的な走塁は大きな魅力。打撃も確実性に加えてパワーも着実についてきており、出塁率も高い。昨年も宗山塁(明治大→楽天1位)だけでなく庄子雄大(神奈川大→ソフトバンク2位)や浦田俊輔(九州産業大→巨人2位)などショートの好素材が高い評価を得ただけに、松川も1位は十分に射程圏内と言えそうだ。

 他の大学生野手では東京六大学を代表する打てるキャッチャーの小島大河(明治大・捕手)、立石と同じタイプの強打のサードである谷端将伍(日本大・三塁手)と松下歩叶(法政大・三塁手)、小柄ながら抜群の守備力を誇る大塚瑠晏(東海大・遊撃手)、強打のスイッチヒッターである平川蓮(仙台大・三塁手兼外野手)なども上位指名を狙える存在だ。

 大学生投手は昨年の金丸夢斗(関西大→中日1位)のような目玉こそ不在だが、有力候補として堀越啓太(東北福祉大)、島田舜也(東洋大)、髙木快大(中京大)、久野悠斗、高須大雅(ともに明治大)、齊藤汰直、山城京平(ともに亜細亜大)、渡邉一生(仙台大)、中西聖輝(青山学院大)、高谷舟(北海学園大)、伊藤樹(早稲田大)、藤原聡大(花園大)などの名前が挙がる。

 スピードでは堀越と島田が双璧で、ともに150キロ台中盤のボールをコンスタントに投げ込む。堀越はリリーフ登板がメインで、島田は一部での実績不足をどう見られるかだが、ボールの力は抜群だ。実績は高木、中西、伊藤の3人がリード。特に高木は昨春のリーグ戦で完全試合を達成し、大学日本代表でも好投するなど一気に評価を上げた。この春の投球次第で、混戦から抜け出してくる可能性もあるだろう。また中西と伊藤はボールの力は突出していないものの安定感があるだけに、最終学年でどこまでスケールアップの可能性を見せられるかがカギとなる。ただ、現時点で誰がナンバーワンかは不透明な状況で、今年の投球や球団のニーズ、優先するポイントによって評価が大きく変わることになりそうだ。

 社会人の投手も大学生と同様に目玉は不在。その中で指名の可能性が高そうな名前を挙げると池村健太郎、後藤凌寿(ともにトヨタ自動車)、竹丸和幸(鷺宮製作所)、冨士隼斗(日本通運)、川原嗣貴(Honda鈴鹿)などだ。

 その中でもシーズン開幕を告げるJABA東京スポニチ大会で強烈にアピールしたのが竹丸。体つきは社会人にしては細身だが、鋭い腕の振りで140キロ台後半のストレートには数字以上の威力がある。本格派左腕でありながら制球力も高く、チェンジアップやスライダーなどの変化球の質も高い。貴重なサウスポーだけにマークしている球団は多いだろう。同じ左腕では池村も社会人での実績はまだ乏しいものの、ボールの力は十分だけに今年の投球次第で一気に浮上してくることも考えられる。

 スピードでは後藤と冨士が頭一つリード。ともに好調時には150キロ台中盤をマークし、社会人で安定感も増してきている。登板する試合には多くのスカウトが視察に訪れることになりそうだ。唯一の高校卒3年目の川原はスケールの大きさが魅力。3月のJABA東京スポニチ大会ではもうひとつの内容で負け投手となったが、高卒3年目とまだ若いだけに将来性を評価している球団もあるだろう。

 社会人野手は他のカテゴリーと比べても指名のハードルが高い印象を受けるが、そんな中で面白い存在となりそうなのが高橋隆慶(JR東日本(JR東日本・三塁手)、村上裕一郎(ENEOS・外野手)のスラッガー2人だ。ともに確実性には課題が残るものの、芯でとらえた時の飛距離は圧倒的で、JABA東京スポニチ大会では揃って特大のホームランを放った。杉本裕太郎(オリックス)や末包昇大(広島)といった社会人出身のスラッガーがプロで存在感を見せているのも追い風になりそうだ。

 スラッガータイプ以外では石井巧(NTT東日本・遊撃手)も有力候補となる。大学までは守備の印象だけが強かったが、社会人で一気に打撃の力強さが増した。二遊間を高いレベルで守れて、打てる選手となれば目をつける球団も多いはずだ。

 社会人は高校生、大学生に比べるとどうしても有力候補は多くないが、昨年も伊原陵人(NTT西日本→阪神1位)、竹田祐(三菱重工West→DeNA1位)、吉田聖弥(西濃運輸→中日2位)、宮崎竜成(ヤマハ→ロッテ2位)が一気に評価を上げて上位指名をつかんだ。今年も彼らに続くような選手が出てくることを期待したい。

2/2ページ

著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント