現地発! プレミア日本人の週刊リポート(毎週水曜更新)

遠藤がプレミアを制し、三笘は世界最古のカップ戦で優勝――そんな“日本人ダブル”が現実味を帯びてきた

森昌利

遠藤がボールを奪うと「うぉ~!」と地鳴りのような雄叫びが

遠藤は後半32分からピッチへ。的確なタックルでボールを奪うと、アンフィールドのスタンドはゴールが決まったかのように沸いた 【Photo by Liverpool FC/Liverpool FC via Getty Images】

 翌26日はリバプールでニューカッスル戦を取材した。2-0の完勝劇で、遠藤航は後半32分に登場して前節のマンチェスター・シティ戦と同様、きっちりとクローザーの役目を果たした。

 アウェーのシティ戦と違ったのは、遠藤が勇敢かつ巧みなスライディングタックルでボールを奪った時にホームのアンフィールドで爆発するような歓声が巻き起こったことだった。

 シティ戦の後に「ボールを奪うと、ゴールを奪ったかのように声援を送ってくれる」と話して、遠藤はリバプール・サポーターの熱い応援に感謝していたが、後半33分、そして同39分に滑り込んでボールを奪うと、2度ともその言葉の通り、「うぉ~!」と地鳴りのような雄叫びが渦巻き、ゴールが決まったのかと思うほどスタンドが激しく揺れた。

 全力プレーでサポーターの愛を受ける遠藤に対して、アルネ・スロット監督は試合後「選手としては無論、人間としても高く評価している」と語って、敬意さえ示した。

 リバプールはこの勝利で、同日にノッティンガム・フォレストとのアウェー戦を無念としか言えないスコアレスドローで終えた2位アーセナルに、消化試合が1つ多いながらも13ポイントという大差をつけた。英メディアは、リバプールの優勝は「できるか」から「いつになるか」に移ったと報じている。

 もしもアーセナルが残り11試合を全勝した場合、リバプールに必要な勝ち点は21。7連勝を飾ればそこが最短での優勝だ。すると5月3日のチェルシー戦がそのXデーとなる。

 しかしストライカーが次々と故障して、前節のウェストハム戦で0-1の負けを喫し、フォレスト戦も無得点に終わったアーセナルの決定力不足は明らかな悲観材料だ。したがって、今後も勝ち点を落とす可能性が高いのはリバプールよりもアーセナルの方だろう。

 対戦カードを見ても、次節がマンチェスター・ユナイテッドとのアウェー戦、続いてホームでチェルシーと難敵が続くアーセナルに対し、ホーム2連戦のリバプールは最下位サウサンプトンと対戦した後、エヴァートンとのマージーサイド・ダービーを戦う。この点からもリバプールが優勢に見える。

 バタバタとアーセナルが勝ち点を落とせば、4月中の優勝もあり得る。となると、4月27日のトットナムとのホーム戦での優勝もあるかもしれない。アンフィールドで宿敵マンチェスター・Uと並ぶ悲願のイングランド1部リーグ通算20回目の優勝を果たせば、いったいどんな騒ぎになるのだろう。

 前回、2019-20シーズンの30年ぶりの優勝は、コロナのパンデミックの最中で無観客で祝った。しかし今回はいつどこで優勝が決まろうと、間違いなく満員のアンフィールドで優勝トロフィーの授与式が行われる。その時の熱狂を想像するだけで、今から鳥肌が立つような興奮を覚える。

FA杯優勝へ、三笘は静かな闘志を燃やす

延長戦に及んだ激闘を制し、FA杯準々決勝に進出したブライトン。途中交代した三笘もベンチから飛び出して仲間と喜びを分かち合った 【写真:ロイター/アフロ】

 暦が3月に変わり、2日の日曜日には、ニューカッスルでブライトンのFA杯5回戦を取材した。これがまた激しい試合になった。

 まずは前半22分にニューカッスルのエース、アレクサンデル・イサクが完璧なPKを蹴り込んで試合が動いた。しかしこのPKを与えたヤンクバ・ミンテが前半終了間際にゴールを奪って、1-1の同点。後半38分にはニューカッスルのアンソニー・ゴードンが腕を振って、競り合ったブライトンのセンターバック、ヤン・ポール・ファン・ヘッケを殴った形になり一発退場に。ところが後半アディショナルタイムの1分に、ブライトンのランプティが2枚目のイエローカードをもらって、こちらも退場。さらには、プレー中には見逃されたわずかなオフサイドがVARで見つかり、ニューカッスルのゴールが2度取り消されていた。

 そして、延長戦の後半9分にウェルベックの劇的な決勝ゴールが生まれた。34歳FWが難しい体勢からGKの頭上を越すシュートを放ち、ブライトンが強敵をアウェーで破って、堂々とFA杯ベスト8に駒を進めた。

 この試合、三笘は後半アディショナルタイム1分に右足を押さえてピッチに倒れ込み、交代していた。しかしウェルベックのゴールが決まった瞬間、ベンチに引っ込んでいた三笘が飛び出して値千金の一撃を祝福。さらに試合終了後にもピッチに飛び出し、次々と仲間と抱き合い、準々決勝進出を喜び合った。

 試合終了後、真っ先に右足について聞いた。すると「大丈夫です、大丈夫です」と繰り返した。ただ足がつっただけだった。

 心に残ったコメントは、「2年前にウェンブリーに行った経験がFA杯を勝ち抜くモチベーションになっているのでは?」と聞いて返ってきた答えだった。

「そうすね。あそこでプレーできた経験はなかなかないですし、また経験したいってところと、あの負け方(0-0のまま決着がつかずPK戦で敗れた)っていうのもチームとしても悔しいところがあったんで、次は勝ちたいなと思います」

 三笘はそう話して、準決勝でマンチェスター・Uに敗れた2年前の雪辱を果たし、全国の全フットボールクラブで争うという、日本の天皇杯のモデルにもなっている伝統のカップ戦を勝ち取ることに静かな闘志を燃やしていた。

 遠藤がプレミアリーグを制して、三笘がFA杯で優勝する――。そんなシーズンになったらどんなに素晴らしいだろう。

 リバプールのリーグ優勝は時間の問題。そしてブライトンがアウェーでニューカッスルを撃破した現在の好調を今後も保てば、今季で144回目となる世界最古のカップ戦を制覇することも夢ではないと思っている。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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