アトレティコ移籍か残留か、久保の選択を左右するファクターは? 移籍後初ゴールの浅野はマジョルカのキーマンに
ラ・マシア時代からの親友が到来すれば
仮にソシエダがここから巻き返し、CL出場圏内でシーズンを終えるようなことがあれば(スペイン勢のCL出場枠は現在の4から5に拡大される可能性がある)、もしくは最低でもEL出場権を確保できれば(CL出場枠が増えれば6~7位にEL出場権が与えられる)、来シーズンも久保はソシエダに留まるのではないか――。そう思うのは、ちょっと気になる移籍の噂が聞こえてくるからだ。
来シーズン、久保がラ・マシア(バルサの下部組織)時代から仲良くしているエリック・ガルシアが、ソシエダにやって来る可能性が浮上している。
ジローナからバルサにレンタルバックした今シーズン、E・ガルシアは十分な出場機会を得られず、この冬の放出リストに入っていた。しかし、センターバックとアンカーをこなせるポリバレント性を評価するハンジ・フリック監督が、すんでのところで待ったをかけたという経緯がある。もっとも、年明けから徐々に出番を増やしているとはいえ、チーム内での序列は依然として低いままだ。
一方のソシエダは、昨年の夏にはすでにE・ガルシアに目を付けていた。ラ・マシア時代から家族ぐるみで付き合いのある親友がサン・セバスティアンに到来するとなれば、29年まで契約が残る久保も移籍を思い止まるかもしれない。なにより、ディフェンダー離れした足もとのスキルの持ち主であるE・ガルシアが加わることで、ソシエダがこれまでとはひと味違ったチームに変貌を遂げそうな予感もある。この想像は、かなり魅力的だと思うが、いかがだろうか。
もっとも、ソシエダがEL出場権獲得にとどまれば、久保にとってより魅力的な選択肢は来シーズンのCL出場が確実視されるアトレティコ移籍なのだろうが……。そこには恩師アルグアシル監督の去就も絡んでくるため、未来を予測するのは非常に難しい。
限定ユニホームでの移籍後初ゴール
こぼれ球をボレーで叩いたそのセンセーショナルな一撃が決まった瞬間、本拠地ソン・モイシュはどよめきに包まれ、いつものようにジャガーポーズを決めた浅野が四方にお辞儀をしてみせると、スタンドもテレビ中継のコメンタリーブースも大いに沸いた。日本人の礼儀正しいこうした振る舞いは、スペイン人の大好物なのだ。
試合は浅野が65分にピッチを去った直後に同点弾を許し、残念ながら初ゴールを勝利で祝うことはできなかったが、ハコバ・アラサテ監督はこの日の日本人アタッカーのパフォーマンスに満足げな様子だった。
「これこそ私たちが望んでいたタクだ。(前節の)セビージャでも、(前々節の)ラス・パルマス戦でも彼はチャンスを生み出していたが、ついに今日、良いゴールを決めた。ゴールを生み出す選手を増やすこと、それが私たちの望みだ。この先の試合でも、彼にとってこのゴールが大きな自信になるだろう」
ちなみに試合前日の3月1日は、マジョルカ島を含むバレアレス諸島自治州の自治州法が制定された「バレアレス諸島の日」で、マジョルカはその祝日を祝う特別バージョンのユニホームを着用してアラベス戦に臨んでいた。つまり浅野の記念すべき初ゴールは、限定300枚しか生産されなかったレアもののユニホームとともに生まれたわけだ。このあたりにも、浅野とマジョルカの深い縁を感じてしまう。
試合後のミックスゾーンで、浅野はクラブメディアのカメラを前に英語でこんなコメントを残している。
「ここ(マジョルカ)に来てから長い間、僕はチームを助けられなかった。でも今日、チームのためにゴールを決められた。勝てなかったけれど、貴重な勝ち点1をもたらすことができたと思っている。大事なのは、常に100パーセントの状態を維持してこれを続けていくことだ」
何度となく「チームのために」という言葉を繰り返した“ジャガー”が、現在8位と好位置につけるマジョルカを欧州カップ戦出場権獲得へと導くキーマンになるかもしれない。
(企画・編集/YOJI-GEN)