平日ナイターに異例の動員! 川崎フロンターレ「ワルナイトカーニバル」の舞台裏に迫る
氣志團のハーフタイムショー、紫に染まったスタンド
僕が緊張したのは、最初に「ワルナイトカーニバルをやります」と発表した際のきっかけ動画を配信した時。それから、ワルンタのフィギュアを配布しますと発表した時。そして、氣志團さんとコラボしますと発表した時。この3つが一番緊張したのですが(笑)、今までの土日のイベント告知よりも8倍ぐらいのインプレッションがあったんですよ。
――え、8倍もですか!?
はい。これはすごいなと、社内もザワつきましたね。それでチケットの発売の時も土日の試合よりも初動が良かったんです。コアなファンの人たちにはすごく刺さったんだなと思いましたし、当日はプロジェクトメンバーみんなが色々なところで頑張ってくれました。
また、氣志團にはハーフタイムショーで『One Night Carnival』と『鉄のハート』の2曲を歌っていただきました。『鉄のハート』はフロンターレの応援歌にもなっていて、チームが苦しい状況の時に歌う曲なのですが、当時はチームとしてもリーグ戦の順位がめちゃくちゃ苦しかった時期でした。そんな中で『鉄のハート』は事前にファンには告知せずにサプライズとして演奏していただいたんです。そうしたことが重なって、サポーターやファンの方たちもジーンとしてくれて、SNSの反響も大きかったですね。
またフロンターレは水色がチームカラーなのですが、その日は特別にワルンタが主役ということでスタジアムが紫に染まったんですよ。あの光景を見た時は本当、それまでの大変なことを全部忘れられるような日になったなと、そう言った人が社内でも結構多かったのが嬉しかったですね。
――氣志團のハーフタイムショーのエピソードは聞いているだけでもジーンとしますね。スタジアムが紫に染まったことも含めて、加藤さんご自身はどのような気持ちになりましたか?
氣志團が歌っている時、僕はちょうどピッチレベルにいて、隣には同僚がいたんですが、その人がボソッと「すげぇな」みたいなことを言ったんですね。「すげぇな。この企画、やって良かったね」と。このイベントを成功させるために2、3カ月くらいかけて準備してきて、苦労したことも正直たくさんあったのですが、それ以上に、関わった人たちがやってきたことやその時の表情がフラッシュバックしたのを覚えていますね。そのフラッシュバックで、この企画をやって本当に良かったなと思いました。
話題となった「ワルンタ」フィギュア、実は社内で紛糾!?
やっぱり、テーマ(コンセプト)がすごく大事だと思いますね。今回のようにとにかくワルンタで押していく、「サボってこい」をキーワードにしていくと決めてから、グッズ・飲食・演出など色々な施策をやりましたが、実はこれらに関して僕からはほとんど何も言っていないんですよ。「このテーマでやるから各部門でアイデアを出してください」とだけ言ったら、各部署から合わせて100項目くらい上がってきました。やめる企画を選択する方が大変くらいで(笑)、テーマを設定してからメンバーみんなが自分事として考えて自走してくれたことが成功の一番の要因だったのかなと思いますね。
――社内の動きとしては素晴らしいですね。そうした数々の企画の中、先ほども少しお話しいただいたワルンタのフィギュアはファンの間でも大きな話題になったと思います。Jリーグではこうしたフィギュアのプレゼントはあまりなかったのではないでしょうか。
そうですね。フロンターレでもこれまではTシャツしか配布したことがなくて、実はフィギュアに関しては社内でもかなり紛糾したんです。「本当にこれで大丈夫か?」と(苦笑)。入場ゲートが狭いので混雑しないか、ワルンタよりも選手のフィギュアの方がいいんじゃないかという意見もありました。そうした中、チーム(強化)側の人が推してくれたんです。事業側ではない立場の人から「全社事業だし、やってみよう」と推してもらったのが大きかったですね。また、試合が終わった後には数クラブから問い合わせをいただいたりもしたので、やってみて本当に良かったなと思っています。
――「ワルナイトカーニバル」に関して、選手の皆さんからの反響はどうだったのでしょうか?
平日のナイターで2万人もお客さんが入ることなんて、選手としてもあまり経験がないことですし、いつもとは違ってスタンドが紫に染まっていましたので、選手からは「なんだ、これは!」という反応をもらいましたね。また、この試合の後の9月からACLE(AFCチャンピオンズリーグエリート)のリーグステージが始まったのですが、チーム(強化)側から「ACLEも一緒に盛り上げていこう」と言ってもらえたんです。ワルナイトカーニバルは事業側だけで実施したイベントだったのですが、これをきっかけにチーム(強化)側も巻き込んで集客に対して一枚岩になっていると今は感じていますので、本当に良かったなと思いますね。
――先ほどお話しいただいた「成功体験」という面でも一つのきっかけになるイベントとなりましたね。
そうですね。これをきっかけに集客ということに関して社内のみんなが本気で意識するようになったと思うんです。例えば、飲食やグッズチームから「入場者がこれだけ伸びたから、売上もこれだけ伸びた」という報告を毎回もらったり、総務の方からは「入場者が2万人を超えたら、スタッフのお弁当もグレードアップしましょうよ」という提案が来るなど(笑)、集客に対する意識が社内に徐々に広まっているのを感じますね。
2025シーズンはさらにファンを巻き込む企画を
もっとファン・サポーターを巻き込んだ企画をやっていきたいなという思いがあります。2025シーズンで言いますと、今までやったことがない企画を2個くらい仕込んでいますので、それは楽しみにしていただきたいなと思いますね(笑)。サッカーのことがあまり興味ない人でも楽しいなと思っていただけるようなことを、ファンやサポーターの皆さんと協力しながらやっていきたいなと思っています。
――ちなみに、ワルンタがこれだけ目立った活躍をしてしまうとメインのマスコットでもある、ふろん太の立場が……とも思ってしまうのですが。
実は今年、ふろん太、それとカブレラというマスコットもいるのですが、それぞれを主役にした日も作ろうと企画していますので(笑)
――では今年は、ふろん太、カブレラのファンも楽しみにしていてくださいということですね。
はい、ぜひ期待していただければと思います。