高校サッカー選手権は新たなフェーズへ チームカラーと選手層が重要になる傾向が加速
セカンドチームからトップに這い上がってきた選手たち
選手権で存在感を見せた流経柏の山野春太(左)や前橋育英の竹ノ谷優駕(右)もセカンドチームでプレーしていた 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
だが、その所属するリーグのレベルによって、その質も大きく左右される。セカンドチームのリーグのレベルが高ければ高いほど、セカンドからトップに這い上がってくる選手の質は高まり、より選手層の底上げが図れるのは明白だ。今大会で言うとファイナリストの2チームはトップチームがプレミアに所属し、セカンドチームがプリンス関東2部に所属している。
今大会で4ゴールを叩き出した流経柏のFW山野春太は春先の怪我が影響し、秋までセカンドチームでプレーしていた。
「怪我をしている間にみんなが成長してプレミアで出られなくなっても、プリンス2部でJユースや強豪校と戦えたことで、モチベーションもコンディションも大きく落とすことなくやり続けられた」と山野が振り返ったように、トップに絡めずに苦しくても、レベルの高いリーグの試合が目の前にある。精神的にもプレー的にも手応えや自信、向上心を持ち続けてやってこられたからこそ、選手権でブレイクすることができた。
流経柏のキャプテンマークを巻いて守備を束ねた佐藤夢真も今年の途中まではセカンドのキャプテンとしてプリンスに出場していた。
「セカンドで統率できないのであれば、トップでは当然できない。当時、トップは絶好調だったけど、僕らは全然勝てなくて苦しかった。でもセカンドをプリンス残留、1部昇格させるために必死でチームの先頭に立ちました。暗い顔なんてしていられなかった」
こう佐藤が語るように、セカンドのリーダーとしての自覚を持って取り組んだ結果、彼は心身共に大きく成長し、シーズン後半ではトップチームの大黒柱となった。
守備の切り札として今大会4試合に途中出場した幸田爽良も11月までプリンス関東2部でプレーしていた選手。決勝では前橋育英のMF白井誠也のドリブルを完全に封じ込むなど、チームに欠かせない存在だった。
よく「紅白戦のレベルが高ければよりチームは成長する」とあるが、セカンドチームのレベルとモチベーションが重要になる。
「プリンスで結果を残せば、トップでのチャンスも必ず来る。その時に順応できるようにトップの戦い方や強度を紅白戦で体感して、アピールしながら上を目指してやれたことが大きかった」(山野)
こうした環境は前橋育英にもある。今大会、左サイドバックとボランチで大車輪の活躍を見せたDF竹ノ谷優駕は怪我に苦しみながらも、選手権予選前の9月にプリンス関東2部で桐光学園、三菱養和SCユースという強豪からいずれも決勝点となる2ゴールをマーク。この活躍によりすぐにプレミアに引き上げられると、レギュラーをつかみ取り、選手権予選から本戦まで不動の存在となった。
3回戦の帝京大可児戦で値千金の決勝ゴールを叩き込んだ3年生FW中村太一もセカンドから這い上がってきた選手。スピードに乗ったラインブレイクをプリンスで磨き、今大会では準々決勝以外の5試合途中出場と、チームの大きなアクセントとなった。
今後、この条件は選手権で上に行くための重要な要素になっていくだろう。そうなると苦しい地域が出てくるのは必然となる。今年、秋田県では参加校が19校になったと関係者からの苦悩の声を聞いた。
少子化の波は着実に押し寄せている。関東、関西はもちろん、中京圏、福岡、広島、札幌、仙台の都市圏など人口がある程度まとまっている地域はいいが、人口集中地域ではない地方の高校が勝ち抜くのは非常に困難な大会になりつつあるのも現実だ。だからこそ、ひとえに「こうした方がいい」と言えないのは苦しいところだが、現状は選手層の重要度が増す方向に進んでいる。そう感じた今大会だった。