高校サッカー選手権準決勝、流通経済大柏vs.東海大相模を展望 驚異の選手層を誇る横綱vs地道な強化が実った新星の戦い

安藤隆人

技巧派の選手たちの真価が問われる戦い

東海大相模の背番号10、沖本陸。2トップの一角として技巧派揃いの攻撃陣を引っ張る 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 まさに“横綱”を相手にする東海大相模は、いかに流通経済大柏のハイプレスと一瞬で状況をひっくり返してくる縦への攻撃にのまれることなく、自分たちのリズムでサッカーができるか。

 東海大相模は選手個々の技術レベルが非常に高い印象を受ける。攻撃の際には左の180cmの快速アタッカー・小林正樹、右のドリブラー・辻将輝のサイドからの仕掛けが鍵となるが、彼らは縦の突破も中央への仕掛けもできる選手。

 沖本陸と小林晄也の2トップも相手のギャップを突いていくことがうまい。準々決勝の明秀日立戦で待望の今大会初ゴールをあげた沖本は、一度落ちてボールを受けてからドリブルで突破することもできるし、シンプルに周りを使うこともできる。180cmある小林晄は最前線で起点となるし、ボールを引き出す動きがうまい。

 この前線の4枚が強固な流通経済大柏のコンパクトなブロックの間でボールを引き出し、臆することなく個人技とパスの連動で仕掛けていけるか。また、前線の動きに対して、長井隆之介と高畑旺崇のダブルボランチや、4枚のDFラインが流通経済大柏のプレスを回避しながら積極的な縦パスやクサビを打ち込めるかが鍵を握る。

 中でもCBの石井龍翔は非常に高いスキルを持ち、最終ラインからプレスを回避しながら前に運び出すことができる。左サイドバックのレフティー・佐藤碧もクロスや差し込むミドルパスの精度が非常に高い。彼らが相手の前への矢印を折って、ビルドアップやショートカウンターの起点となることができるか。耐えるべきところは耐えながらも、チーム全体で前への推進力を持ち続けられるかが大きなポイントだ。

有馬信二監督の哲学をベースに快挙を狙う

2011年から東海大相模の指揮を執る有馬信二監督。悲願の国立で自分たちのサッカーを表現できるか 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 チームを指揮する有馬信二監督は福岡の名門であり、母校でもある東海大五(現・東海大福岡)高校で指揮を執ってから2011年に東海大相模にやってきた。

 東海大相模と言えば、真っ先に野球部や柔道部をイメージするように、就任当時のサッカー部は他の部活動の影に隠れていた存在だった。しかし、有馬監督は東海大五時代に貫いていた狙いを明確に持ってパスとドリブル、サイドチェンジなどを織り混ぜて意図的に崩していくサッカーを地道にチームに植え付けた。

 結果、DF山口竜弥(現・徳島ヴォルティス)が3年、MF中山陸(現・ヴァンフォーレ甲府)が2年だった2017年に悲願のインターハイ初出場。インターハイはその後も2019年、2021年、そして今年度と4度出場した。神奈川県から1校しか出られない選手権の壁は分厚かったが、その壁をついに打ち破ったことで、今大会ではこれまでコツコツと積み上げたサッカーを存分にピッチ上で表現している。

 横綱がその力を見せつけるのか、確かなベースを持つ新星が大番狂わせを起こすのか。注目の90分になる。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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