現地記者の日本人選手ラ・リーガ奮戦記(月2回更新)

浅野が戦列復帰の一方で、久保はまさかのスタメン落ち 対照的な24年下半期を過ごした両指揮官の胸の内

山本美智子

久保の先発起用をためらう何かがある

第18節のセルタ戦で久保をスタメンから外したアルグシアル監督の采配は、大きな物議を醸した。ただし、迷いなく久保を先発でピッチに送り出せない理由も…… 【Photo by Octavio Passos/Getty Images】

 そんなマジョルカとは対照的に、煮え切らない前半戦を過ごしたのが、ラ・レアルだ。

 24年のラストゲーム、ラ・リーガ第18節のセルタ戦では、久保がまさかのベンチスタート。誰もが驚くイマノル・アルグシアル監督の選手起用だった。

「その前の試合(第17節のラス・パルマス戦/0-0)の出来が良くなかったとはいえ、予期せぬ形で日本人選手を休ませた結果、どうなったか。ソシエダは良い試合をしたか? 答えは明快にノーだ」

 地元サンセバスチャンのベテラン記者、ミケル・レカルデがそう断罪したように、0-2で敗れた結果はもちろん、試合内容も褒められたものではなかった。

 だが、問題は久保を外したことではない。誰をピッチに立たせても、「これだ」とパーツがきっちりハマるような感触を得られないことが、今のソシエダの最大の問題なのだ。そして、選手を入れ替えながら試行錯誤を繰り返しているうちに、すでにシーズンの半分が終了してしまった。

 とはいえ、アルグアシル監督だけを責めることはできない。久保にしても、ここまでリーグ戦18試合に出場して3ゴール。チームの中心選手としては、物足りなさが否めない数字だ。

 どんな監督であれ、毎回ベストと考える11人を選んでピッチに送り込む。そこに疑いの余地はない。久保が優れた選手であることは誰もが知っているし、彼がボールを持てば何かが起こりそうな予感が生まれるのも事実だ。それを最も身近で見ているアルグアシルが、誰よりも久保を評価している指揮官が、先発起用をためらう何かが、つまりはあるということだろう。

再び囁かれ始めた久保の移籍話

ソシエダとの現行契約が切れるまで残り半年。クラブ側の契約延長オファーにも、アルグアシル監督はまだ首を縦に振っていない。不穏な空気も漂うが…… 【Photo by Cesar Ortiz/Soccrates/Getty Image】

 確かに24年の久保はイレギュラーだった。リーガの月間MVPにノミネートされる月もあれば、前の試合の輝きはなんだったのかと思えるくらい、精彩を欠くこともあった。

 今シーズンの久保は、何度となく「自分がチームを引っ張る」と公言しているが、それもあるいは、イレギュラーな自身のパフォーマンスに対する焦燥感から発せられる言葉なのかもしれない。

 そうしたなか、チーム自体の調子が落ちていることもあって、再び久保の移籍話が囁かれ始めるようになった。今回は具体的な後釜候補の名前も挙がっている。ナポリのブラジル人サイドアタッカー、ダビド・ネーレスだ。しかし、年齢は27歳と久保より上で、今シーズンのセリエAでの成績も15試合でわずか1ゴールにとどまっている。正直なところ、久保を放出してまで獲得する必要性は感じない。

 いずれにしても現在のソシエダに不穏な空気が漂っているのは確かだが、それでもアルグアシル監督の途中解任は考えられない。なぜなら、彼との契約はあと半年ほどで終了するからだ(25年6月30日まで)。本来ならすでに契約更新を行っていてしかるべきだが、最近になってソシエダのロベルト・オラベ強化担当が明かしたところによれば、アルグアシル自身がクラブ側の延長オファーにいまだサインをしていないという。

 さて、日本的に言えば2025年の干支は「乙巳(きのとみ)」。十干(じっかん)の「乙」は、植物が広がっていくように、周囲と調和しながら目標に向かって進んでいく力のイメージ。そして「巳」はもちろん蛇。脱皮し、成長していくイメージだ。新しい年の始まりとともに、ソシエダが干支のエネルギーを借りて力強く苦境を脱し、久保もまた自身の殻を破り、さらなる飛躍を遂げてほしいものだ。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

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