帝京の復活、激戦ブロック、80年代生まれの監督… 高校サッカー選手権の注目トピックス5選

土屋雅史

トピックス④:優勝候補筆頭・大津の強さ

今季のプレミアリーグで初の日本一に輝いた大津が、選手権でも優勝候補の筆頭。プレミアリーグWEST得点王の山下(写真)らを軸にゴールラッシュを披露するか 【土屋雅史】

「大津高校の歴史を、こうやって優勝という形で塗り替えられたのは本当に嬉しく思います」

 埼玉スタジアムの表彰台で優勝カップを掲げたキャプテンの五嶋夏生(3年)は、満面の笑みを浮かべてそう話した。

 プレミアリーグの東西王者がぶつかるファイナル。WEST王者として挑んだ大津は司令塔の畑拓海(3年)がスーパーミドルを突き刺して先制点を奪うと、エースの山下景司(3年)も2ゴールを挙げて、EAST王者の横浜FCユースに3-0で快勝。圧倒的な強さで初の日本一を勝ち獲った。

 その攻撃力は群を抜いている。プレミアでは覚醒したストライカーの山下が20ゴール、10番を背負う嶋本が12ゴール、今季からFWにコンバートされた兼松将(3年)が11ゴールと、3人のアタッカーが二桁得点を叩き出し、22試合で66ゴールを積み上げた。実に1試合平均3得点という凄まじい破壊力だ。

 守備の安定感も際立っている。190センチの長身を誇る五嶋と、U-17日本代表にも選出されている2年生の村上慶が組むセンターバックコンビに加え、右の野口悠真(3年)、左の大神優斗(3年)とサイドバックにも実力派が並ぶ最終ラインは、プレミアでリーグ最少失点を記録。GKも坊野雄大(3年)と村上葵(2年)がハイレベルなポジション争いを繰り広げてきた。

 インターハイで初戦敗退を喫したことも、逆にチームの危機感を高め、プラスに作用している。「僕らの内側に反省すべき点があるということは、選手もスタッフもみんな痛感しました」とは山城朋大監督。今まで以上に目の前の試合への集中力を高め、一戦必勝の意識を全員が持ち続けてきたことで、より隙のないチームに仕上がった。

「プレミアでも日本一を獲って、歴史を変えることができたので、みんながこの勢いのまま選手権も勝てると自信を持っています」と話すのは山下だ。悲願の選手権制覇を目指す大津のハイクオリティーなサッカーに注目してほしい。

トピックス⑤:台頭する80年代生まれの監督

島根の明誠を選手権初出場に導いたのが、元Jリーガーの白谷監督だ。14年に町田で現役を引退し、指導者の道へと進んだ35歳の青年監督の手腕に期待したい 【(C)J.LEAGUE】

 今大会では数多くの80年代生まれの優秀な指揮官が、チームを全国の舞台へと導いている。

 青森山田の正木昌宣監督(81年生まれ)は、前任の黒田剛監督(現FC町田ゼルビア監督)も成し遂げられなかった選手権連覇にチャレンジ。昨年の青森山田に続くプレミアリーグと選手権の2冠を目標に掲げる大津の山城監督(89年生まれ)は、35歳の若さながら冷静な采配が光る。

 初出場校を率いる元Jリーガーの存在も見逃せない。金沢学院大附に全国切符をもたらしたのは、現役時代は長身GKとして群馬でプレーしていた北一真監督(81年生まれ)。明誠の白谷建人監督(89年生まれ)は自身も国見で選手権に出場しており、セレッソ大阪などでの8年間のプロ生活を経て、指導者の道へと足を踏み入れている。

 実現すれば興味深い“同級生対決”も見られる。昨年のインターハイで日本一に輝いた明秀日立の萬場努監督(84年生まれ)と、今季のプレミアリーグWESTで腕を磨き、選手権予選決勝でインターハイ準優勝の神村学園を倒した鹿児島城西の新田祐輔監督(83年生まれ)は、東海大サッカー部で同じ釜の飯を食った仲。ともに勝ち上がれば3回戦での対戦となる。選手権の舞台で旧友同士の再会が実現すれば、両チームのテクニカルエリアからも目が離せない。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1979年8月18日生まれ、群馬県出身。高崎高3年時にインターハイでベスト8に入り、大会優秀選手に選出される。2003年に株式会社ジェイ・スポーツへ入社。サッカー情報番組『Foot!』やJリーグ中継のディレクター、プロデューサーを務めた。21年にジェイ・スポーツを退社し、フリーに。現在もJリーグや高校サッカーを中心に、精力的に取材活動を続けている。近著に『高校サッカー 新時代を戦う監督たち』(東洋館出版社)がある。

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