氷上で大の字になった鍵山優真「すごく気持ち良くて」 荒れた全日本選手権で新時代の王者に

沢田聡子

来年は全日本を超える演技を

キスアンドクライでは父の涙を目にして「すごく嬉しい」と語った鍵山 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 ミックスゾーンで、鍵山は「今日のフリーは、総合評価としては自分の出せる部分は全部出せた」と達成感を漂わせた。

「前半もすごく落ち着いてできて、後半も気持ちは冷静になれたんですけれども、やっぱりちょっと足が疲れてしまう部分があって、(4回転)トウループや(3回転)フリップは回り過ぎて。それでも、ミスとしては最小限に抑えられたと思うので、そこはこれから修正していきたいと思います」

 キスアンドクライで見た父の涙は、鍵山にとって感慨深いものだった。

「久しぶりに、父が感動して泣き出してくれたので。自分自身が最後まであきらめずに滑り切れたことももちろん嬉しいですけれども、コーチの方々が感動したり満足したりしていただけるのが、すごく嬉しいことでもある。一番そばで毎日見てくださっている存在なので、いい演技ができたことはすごく嬉しいですし、全日本初優勝もできたので」

「父がとった金メダルの個数を超えたいので、もっと頑張りたいです」

 全日本チャンピオンという称号については「あまり気にせずに頑張っていきたい」と言う。

「昌磨さんや他の先輩たちは、それ以上の結果をたくさん残して戦ってきていると思う。僕よりももっとものすごいプレッシャーも感じていたと思うので、僕はその第一歩として足を踏み入れることができたのかなと。ここからが勝負だと思うので、しっかりと自分の目標や計画を、また一から立て直して頑張っていきたいと思います」

 演技後に大の字になったときの氷の感触を問われると、鍵山は「すごく気持ち良くて」と笑った。

「寝そべることはどうなのかな、と今まで思っていたんですけれども、『出し切れたから、いいかな』と思って、昌磨さんのまねをしてみた。いい演技じゃないと、ああいうことはしないので。僕の中では今日は全部出し切って、体力も全部使い果たして、本当に良かったなと思います」

 世界選手権については、「今のままでは、表彰台に上れるかどうかすら危ないライン」と現状を冷静に見据える。

「日々しっかり120%出し切るような練習を積み重ねて、頑張っていきたい」

「もし次に大の字になるとしたら、どの場面でやりたいですか」と問われた鍵山は、「あまりやり過ぎても、面白くないと思うので」と笑った。

「世界選手権で、自分の出せるものをすべて出せたらいいと思います。これ(全日本の演技)が基準となって、年明けはこれを超えるような演技をしなければならないので。もっともっと頑張って、本当に毎日の練習が充実できるように、もっといろいろな努力をしていきたいと思います」

 世界選手権が行われるボストンのリンクで、鍵山は再び大の字になれるのだろうか。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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