崖っぷちリーガー 徳島インディゴソックス、はぐれ者たちの再起

1年でNPBから指名を受けた男が振り返る徳島の日々 需要が低い「右投左打・外野手」が生き残るためには…

高田博史

「1年間、本気で野球だけに向き合った」

 四国リーグで首位打者を獲った。そのプライドは、バファローズのユニフォームを着て戦ういまも胸の中にある。

「四国アイランドリーグで首位打者を獲って。それでバッティングが全然通用しないってなったら、アイランドリーグの評価も下がってしまうかな? とか、たまに思ったりもするんで。自分ももっと頑張って結果を出して、アイランドリーグの首位打者の価値を上げていけたらなって」

 徳島からだけでなく、四国リーグからNPBに進む選手も増えた。茶野が入団した翌年、オリックスに愛媛から河野聡太(西日本工業大)が入団している。徳島で同期だった井上もDeNAで奮闘している。独立リーグで培った必死さを、これからも出していきたい。井上が一生懸命アピールしている姿に、「自分も」という思いが湧き出る。元独立リーガーだからこそ汗をかいて、泥にまみれて、ガツガツ行かなければ―。

 よく「右投げ左打ちの外野手」は絶対数が多いため、プロ側の需要が低いと言われる。右投げ左打ちの外野手である茶野は、どう考えていたのか?

「右投げ左打ちに限らず、外野手は一芸だけじゃなく、二芸ないと評価されないと感じました。自分の場合は足とバッティング。どっちも頑張らないと、評価が上がらないと思っていましたし、外野は評価を上げるのが難しいポジションだと感じました」

 足だけ。打撃だけ。武器が1つしかないのは弱い。外野手ならなおさらだ。両方磨いて「一芸」ではなく「二芸」にする。茶野はそう考えて、自分の武器を研ぎ続けた。

 最後に聞いた。茶野にとって、徳島インディゴソックスとは?

「1年間、本気で野球だけに向き合った、本当にいい1年でした。結果だけじゃなくて、評価もされないといけない世界で、どうやったら上に行けるのかな? って常に考えながらできましたし。そういう環境を作ってくれる場所だったなと思います」

 初めての春季キャンプを終えた2023年、開幕直前の3月24日に支配下登録された。背番号は「033」から「61」に変わり、3月31日の開幕戦、対西武1回戦(ベルーナドーム)に育成出身の新人選手として初の開幕戦先発出場を果たす。3回に初打席初安打となる三塁への内野安打で出塁すると、初盗塁も記録した。まさに世間をあっと言わせる活躍で、NPBデビューを果たす。91試合に出場し、打率,237と、上々の成績でルーキーイヤーを終えた。だが、終盤に調子を落とし、登録メンバーから外れている。

 2年目のシーズンは12試合の1軍出場にとどまっており、7月1日に登録抹消されて以降、ファームで1軍復帰への準備を続けている(9月13日終了時)。

 考えて、自分のやるべきことをやる。自分だけの武器を磨く―。

 さらに厳しい世界で、茶野の奮闘が続いている。

書籍紹介

【画像提供:カンゼン】

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