F1王者ハミルトン「僕はもう速くない」発言の衝撃
レースでは粘り強く結果を出しているが……
10番グリッドから2位まで追い上げたラスベガスGPの走りは、全盛期を彷彿とさせるものだった 【(c) MercedesF1】
他にもハミルトンは、数えきれないほど多くの記録を塗り替えてきた。最多勝(105回)、最多ポールポジション(104回)、最多表彰台(201回)、そして出走300戦を超えて優勝した唯一のドライバーでもある。
その意味するところは、ハミルトンはデビュー以来ほぼ毎シーズン優勝争いに絡んできた稀有なドライバーだということだ。実際、これまでの18シーズンで未勝利に終わったのは、去年と一昨年だけだった。
それだけの成果をあげてきただけになおのこと、今の自分の遅さが許せないということか。一方で決勝レースでは、燃料を多く積むことでマシン挙動がそれほどシャープではないことにも助けられ、ラッセルとほぼ互角の結果を出している(ラッセル235ポイント対ハミルトン211ポイント)。未勝利だった直近2年間も、一昨年は表彰台に9回、去年も6回上がった。
「『どう転んだか』よりも、『どう立ち上がるか』だ」
現在のボス、メルセデスのトト・ウォルフ代表(写真右)と、ハミルトンの育ての親フレデリック・バスール代表 【(c) MercedesF1】
しかしF3、F2時代にハミルトンの所属したチームの代表を務め、育ての親ともいうべきフレデリック・バスール代表は、「ルイスの現状をまったく心配していない」という。「ラスベガスでの50周を見てほしい。10番グリッドから素晴らしい追い上げでラッセルの真後ろ、2位表彰台に上がったじゃないか」。
ハミルトン自身も、カタールGPをノーポイントで終えた後、こう語っていた。
「長いキャリアの中では、素晴らしいレースもあれば、酷いレースもあった。重要なのは、『どう転んだか』よりも、『どう立ち上がるか』だよ」
数えきれないほど転び、その度に立ち上がってきたハミルトンにしてみれば、今はあくまでほんの短いスランプということか。
(了)