韓国を圧倒した大谷翔平の快投も、壁を感じた“国際大会の準決勝” 松田宣浩が振り返る「第1回プレミア12」

田尻耕太郎

初めて経験した日韓戦に心躍る

――第1回プレミア12の開幕戦は、札幌ドームでの日韓戦でした。

 僕は2013年のWBCにも出場しましたが、その時は韓国とは戦わなかったんです。プレミア12が僕にとって、初めての日韓戦です。ホークスでチームメイトだった李大浩選手もいたし、ワクワクしました。注目されるカードだから盛り上がるし、球場もすごくいい雰囲気でした。ただ、選手はバチバチモード。韓国はしっかりしたメンバーで来ていましたね。

――この試合で松田さんは2打数2安打2四球と活躍しました。

 先発した大谷選手がめっちゃ良かったってイメージしかないです(笑)。

 侍ジャパンは大谷が6回を投げて被安打2、10奪三振、無失点の好投を見せ、韓国との初戦を0対5で快勝。その後、舞台を台湾に移して行われた1次ラウンドは、メキシコ、ドミニカ共和国、アメリカ、ベネズエラを次々と撃破して、5戦全勝で決勝ラウンドにコマを進めた――。

1次ラウンドのアメリカ戦で、満塁本塁打を放った松田宣浩さん 【写真は共同】

――松田さんは1次ラウンドのアメリカ戦で満塁ホームランを放っています。

 サタ―ホワイト選手という、第1回プレミア12の後に阪神に移籍してきた投手から打ったんですよ。初球のスライダーだったと思いますが、あれは覚えていますね。

――侍ジャパンのユニフォームを着て打つ満塁ホームランは、また格別だったのでは?

 代表戦は基本的に全国中継ですからね。そこで打てたっていうのも大きかったです(笑)。

松田宣浩が感じた“準決勝の壁”

 決勝ラウンドに進出した侍ジャパンは、準々決勝でプエルトリコに3対9で快勝。準決勝は東京ドームに舞台を移して行われて、韓国と再び激突した。

 侍ジャパンは0対3とリードして試合終盤へ。先発の大谷が7回85球、被安打1、11奪三振で無失点と快投を見せていた。しかし、ベンチは投手交代を選択。これが裏目に出た。9回表、韓国に一挙4点を奪われて、大逆転負けを喫したのだった――。

準決勝の韓国戦、9回表に増井浩俊から逆転2点タイムリーを放った李大浩 【写真は共同】

――準決勝のことは、どのように記憶していますか?

 追い上げられてまだ1点リードしていたけど、最後は李大浩選手に僕が守っている三塁線を破られたんです。則本昂大投手のフォークを打たれた。その後の3位決定戦は、メキシコに1対11で大勝。僕と山田哲人選手、秋山翔吾選手、中田翔選手の4人がホームランを打ったんですよね。

――相当悔しい敗戦の後で迎えた3位決定戦。チームの雰囲気はどうでしたか?

 もちろん優勝したかった。けど、3位決定戦であっても負けるつもりなんてなかったし、大会が終わるまではプロ野球、そして日本の代表として戦わないといけないと、みんな考えていました。

 2013年のWBC、2015年の第1回プレミア12、その後の話になりますけど、2017年のWBCも日本は準決勝で敗退しています。当時は“準決勝の壁”を感じました。

――チームリーダーという立場で、悔しい試合の後にどのように振舞い、チームを鼓舞したのでしょう?

 いや、12球団のいい選手ばかり集まってるので、とにかくいい試合をしようという感じで臨んでいただけですよ。プロフェッショナルな集団だから、あえて余計なことを言う必要もなかったです。

 WBCもそうですが、プレミア12も出場して実感したのは、それ以降の日本プロ野球の財産として貢献することのできた大会になったということです。ファンの皆さんも熱く盛り上がってくれて、東京五輪での野球・ソフトボール競技の復活への契機にもなりました。小久保監督を優勝監督にできなかったという無念はありますが、あらゆる面において意義のある大会だったと思います。

松田宣浩(まつだ・のぶひろ)

松田宣浩さん 【アスリート・マーケティング提供】

2005年、亜細亜大学から大学生・社会人ドラフト希望枠で福岡ソフトバンクホークスに入団。08年に三塁手としてレギュラーに定着すると、11年に初の全試合出場を果たす。15年から19年にかけて5年連続で全試合に出場し、15年はキャリアハイとなる35本塁打、94打点をマーク。23年に巨人に移籍し、同年に現役引退。通算成績は打率.265、1832安打、301本塁打、991打点。勝負強い打撃に加え、ゴールデングラブ賞を8度受賞するなど、守備にも定評があった。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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