J1昇格プレーオフ進出を懸けた熾烈な争い “4つの椅子”を狙う有力7チームの現状と可能性
長崎で外国籍4選手よりも不可欠なのは
第32節終了時点で4位岡山に8ポイント差の3位につけ、プレーオフ出場権争いから頭1つ抜けた感のある長崎。キャプテン秋野の完全復活も大きい 【(c)J.LEAGUE】
ただ、長崎で絶対に欠かせないのは、アンカーを務めるキャプテンの秋野央樹だ。昨季での契約満了を告げられながらも再契約を勝ち取った29歳は、柏レイソルU-18時代の指揮官でもある下平隆宏監督の下で完全復活を遂げた。20年シーズンに昇格を逃した際には、人目をはばからず涙を流した秋野のリーダーシップと意地が、このチームをしなやかに束ねている。
J2の戦い方を知り尽くした木山隆之監督も就任3年目。クラブ史上初のJ1昇格だけを見据えるファジアーノ岡山(同4位)も、開幕からプレーオフ圏内をキープ。夏の移籍ウインドウでは一美和成(←京都サンガF.C./FW)、嵯峨理久(←いわき/DF)という実力者に加え、韓国の江原FCでプレーしていた神谷優太(MF)も獲得するなど、精力的な選手補強に本気度が滲む。
岡山のキーマンには、4カ月近い長期離脱から帰ってきた田部井涼を推したい。期限付き移籍から完全移籍に移行した今季に懸ける想いは人一倍強く、復帰後はキャプテンマークを託されながらボランチの位置で攻守に奮闘。かつて喜山康平や押谷祐樹、上田康太らが背負った14番のユニホームを纏い、チームのタクトを振るい続ける。
リベンジを誓う千葉の主役は10番の小森
大卒1年目の昨季に13得点とブレイクした小森が、今季も好調をキープしている。チーム状態が安定しない千葉にとって、このエースの決定力は大きな拠り所だ 【(c)J.LEAGUE】
ホームで戦った第27節の鹿児島ユナイテッドFC戦。それまで全試合にフル出場していた絶対的守護神の林彰洋が、コンディション不良で欠場するアクシデントに見舞われながら、そろって今季初出場となった控えGKの松澤香輝と梅田陸空の2人がバトンを繋ぎ、力強く手繰り寄せた完封勝利は、グループの一体感をより高める契機となった。彼らが地道に固めてきた結束に、そう簡単にヒビが入ることはない。
ある意味で、試合をしてみないとサイコロの目がどう出るのか分からないのが、ジェフユナイテッド千葉(同6位)だ。いきなり3連敗を喫したかと思えば、その後に3連勝を飾ってみせる。ホームでは8-0で勝った相手に、アウェイでは1-2で競り負ける。組織の成熟を図る段階の後半戦に入っても、チーム状態が落ち着かない。
それでも昇格を狙える位置をキープするチームの中で、ゴールという明確な結果を出し続けているのが、今季から10番を背負う小森飛絢だ。第28節から3戦連続2得点の大爆発で、3連勝に貢献。終盤戦に向けて、その嗅覚が一層研ぎ澄まされてきた印象だ。プレーオフ1回戦で敗退した昨季の悔しさは、同じステージでしか晴らせない。リベンジ劇の主役は小森をおいて他にいないだろう。
現時点ではJ2で最も好調と言えそうなモンテディオ山形(同8位)にも触れておこう。夏の中断明けからは6勝1分け1敗と大きく勝ち越しているが、これは土居聖真が加入したタイミングとそのまま重なる。鹿島アントラーズから地元のクラブに完全移籍を果たした32歳は、すでに4ゴールをマーク。個とグループの融合もここに来て深まっている。知将・渡邉晋監督が練り上げる策略にも大いに注目したい。
今後を展望すれば、連勝でようやく苦境を脱した長崎は、4位以下との勝ち点差を見てもプレーオフ進出が濃厚。また、ここまで一度も連敗がなく安定感が漂う岡山と、誰が出てもチームの出来の振れ幅が小さい仙台が、ここから大きく順位を落とすとは考えにくい。重要なポイントに挙げたいのは、最終節に組み込まれた山形対千葉の直接対決。この90分間は、6位以内を狙うすべてのチームが注視するキーゲームになると予想される。
一寸先は光か、闇か。今季のJ2もいよいよ佳境。サッカーに人生を懸けた男たちが繰り広げるJ1昇格争いは、ここからが本番だ。
(企画・編集/YOJI-GEN)
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