ハマの正捕手に続くか?独立Lのドラフト候補野手たち 一芸か、ロマン枠かそれとも…

金沢慧

今や球界屈指の捕手に成長したDeNA・山本。BCL・滋賀から2017年秋のドラフトで9位指名を受けてNPB入りした 【写真は共同】

 2024年NPBの独立リーグ出身選手で最もインパクトを残したのはDeNAの山本祐大だろう。正捕手として3割近い打率を残し、オールスターにもファン投票で選出されるなど、リーグを代表する捕手となった。

 個人的には山本が8月にNHK-BSの「球辞苑」にVTR出演していた際の鋭い観察眼と対戦相手をリスペクトする姿が印象に残っており、ドラフト時から評価されていた地肩の強さだけでなく、環境に適応して自ら成長し続けるマインドを元々強く持っている選手なのだろうと感じた。
 残念ながら骨折で今季中の復帰は絶望となり、独立リーグ出身者として角中勝也(ロッテ)以来2人目の規定打席到達はならなかったが、来シーズンはさらにレベルアップした姿を見せてくれるはずだ。

 山本に限らず独立リーグ出身の「野手」がNPBで徐々に存在感を増している。昨年オリックスで91試合に出場した茶野篤政や、その徳島インディゴソックス(徳島IS)時代の同僚で今年25試合に出場している井上絢登(DeNA)など、1年目から一軍で起用される選手が出ている。

 2023年の育成ドラフト組でも支配下登録を勝ち取ったのは尾田剛樹(中日)、奥村光一(西武)と野手であり、他に独立リーグ出身者で新規支配下登録された選手も3年目の岩田幸宏(ヤクルト)、火の国サラマンダーズ(火の国S)からシーズン中に移籍した中川拓真(ヤクルト)とすべて野手だった。

 果たして来年NPBの一軍で活躍している独立リーガーは誰か?独立リーグのドラフト候補となる野手を紹介する。

独立リーグ出身野手の王道といえば「走力」の一芸

 昨年のコラムで過去に独立リーグから指名される野手の傾向を表にしたが、最もわかりやすいのは走力で、目安としては「リーグでの盗塁数20以上」だ。特に四国アイランドリーグplus(IBLJ)とルートインBCリーグ(BCL)からは例年指名があり、昨年は尾田と奥村、一昨年は茶野と樋口正修(中日)が20盗塁以上に当てはまる。さらに、この4人とも指名されただけでなく1年目から一軍で出場している。これ以前にも内村賢介(元楽天、DeNA)や岸潤一郎(西武)など、足で魅せた野手が独立リーグからNPBの舞台に立ち実績を積んできた。走力がある選手はいわば独立リーグからのドラフト指名野手の「王道」だ。

【筆者作成】

 上の表は今年の各リーグの盗塁数20以上の選手一覧だ。IBLJでは高知ファイティングドッグス(高知FD)の古賀颯翔、BCLでは群馬ダイヤモンドペガサス(群馬DP)の南出侑亮が1位だった。特に南出は打率.357でBCL2位の成績を残すなど、信濃グランセローズ(信濃GS)から移籍1年目のシーズンでチームを牽引した。

 IBLJで盗塁2位の寺岡丈翔(徳島IS)は本塁打王(9本)にも輝いており、総合的に今年のIBLJの野手ではNo.1の候補だろう。大卒2年目の24歳とドラフト候補として若くはないが、寺岡の福岡大、徳島ISでの1つ先輩となる井上も昨年同じ境遇でDeNAから支配下での指名を勝ち取っており、これに続きたいところだ。

 BCLでは高卒1年目の茨城アストロプラネッツ(茨城AP)・陽柏翔に注目したい。明秀日立から入団し、遊撃手としてリーグ戦54試合に出場した。5月半ばまでは打率1割台中盤だったが、シーズンが進むに連れ数字を上げており、最終的には.250の成績を残した。

 ヤマエグループ九州アジアリーグ(KAL)では北九州下関フェニックス(北九州下関P)のリードオフマン・中田航大が41盗塁でトップ。打率は.436と驚異的な数字で、もちろんリーグ1位だ。NPB一軍でのKAL出身野手の実績がないことや、今年25歳の右打者、ポジションはほぼ外野のみという点を含めてどう評価されるか。北九州下関Pは日本独立リーググランドチャンピオンシップ(GCS)2024に参加するが、短期決戦での場でもリーグ戦同様の活躍が見られるか注目したい。

BCLの長距離砲が日本一を決める戦いでもアーチを見せるか

【筆者作成】

 昨年はBCLの本塁打王(16本)だった大泉周也がソフトバンクに、IBLJの本塁打王(14本)だった井上がDeNAに指名されており、例年、長打力のある選手の指名も見られている。
 今年BCLで2桁本塁打を放ったのは5名、そのうちドラフト対象は信濃GSのジェス(三浦ジェスヨロボ大颯)、茨城APの大友宗、栃木ゴールデンブレーブス(栃木GB)の石川慧亮、信濃GSの馬場愛己だ。このうち、大友以外の3名は今週末に栃木でGCSの戦いが控えている。

 信濃GSの主砲として君臨するジェスは2年連続の13本塁打をマーク。高校時代から毎年ドラフト候補に挙げられている石川は4年目のシーズンで初めて2桁本塁打を達成した。馬場はGCS出場をかけたBCLのプレーオフでも5試合で2本塁打を放つなど、それぞれ充実のシーズンを送っており、日本一をかけた戦いの場でも活躍を期待したい。

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著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

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