ハマの正捕手に続くか?独立Lのドラフト候補野手たち 一芸か、ロマン枠かそれとも…

金沢慧

山本祐大に続く捕手候補はこの4人

【筆者作成】

 次に捕手の候補を紹介する。まず、2桁本塁打を放っている大友の評価は気になるところ。今季のIPBLでの実績No.1捕手であることは間違いないが、帝京大、日本通運を経て今季独立リーグに挑戦しており、学年としては冒頭で紹介した山本の1つ下となる25歳。当然即戦力として、少なくとも一軍に帯同できる力があるかを見られることになる。今年の春先にはアリゾナでの米マイナーのオープン戦でトレバー・バウアー(元DeNA)とバッテリーを組むなど、様々な経験を積んだ捕手にNPB各球団はどのような判断を下すか。今季ヤクルトから信濃GSに戻り12本塁打を放った松井聖も2020年に捕手として育成で指名されたときは25歳であり、実力が認められれば指名はあるはずだ。
 
 昨年から注目されている高知FDの嶋村麟士朗や埼玉武蔵ヒートベアーズ(埼玉武蔵HB)の町田隼乙にも指名の可能性がある。ともに打力に定評のある捕手で、まだ高卒3年目と若さも魅力だ。石川ミリオンスターズ(石川MS)の森本耕志郎は今季高卒2年目ながらチームのキャプテンに就任。シーズンを通してマスクを被っており、育成枠で考える球団があるかもしれない。

190cm105kgのロマン枠、大坪梓恩をGCSでチェック

【筆者作成】

 昨年も富山GRNサンダーバーズ(富山TB)から187cmの外野手・髙野光海(ロッテ)が指名されたように、うまくハマると打球を飛ばすタイプの中で、若くて身長の高い選手はトレーニングを積んで伸びる余白が大きいと判断され、指名されやすい。今年そのような「ロマン枠」に当てはまりそうな選手は上記の通りだ。

 このうち、高知FDの山保健太郎と愛媛マンダリンパイレーツ(愛媛MP)の浅井玲於は昨年もリストアップしており、今年は勝負の年となる。浅井はIBLJで9本塁打を放ち、寺岡と並んで本塁打王を獲得。打率.377で首位打者も獲得するなど、昨年に比べて成績を伸ばしている。年間勝率2位からの下剋上でGCS出場の切符をつかんでおり、晴れの舞台でスカウトに猛アピールしたい。

 昨年の髙野のパターンに最も近そうなのは大坪梓恩(石川MS)だろう。主に指名打者であり、守るポジションのなさや高卒3年目の年齢など髙野と比べて指名しづらい要素は多いが、本塁打の飛距離や打球の速さは目を見張る。GCSでチェックしたい選手だ。

 日本海リーグ(NLB)で今年を代表する打者が三好辰弥(富山TB)。打率、本塁打、打点の三冠に輝いた打撃だけでなく守備面でも定評があり、指名候補のリストに入れている球団はありそう。徳島ISの今村龍之介は6月に行われた阪神との交流試合で凱旋登板の椎葉剛からサヨナラ3ラン、敗れはしたもののGCS出場がかかったプレーオフで坊っちゃんスタジアムのセンター後方に本塁打を放つなど、印象に残る打撃が光る。

遊撃手の有望株・加藤響の評価はいかに

【筆者作成】

 最後にここまでの枠では紹介しきれていない候補を6人挙げた。中でも注目は東海大相模出身で、東洋大の野球部を退部して今年1月に徳島ISに入団した加藤響。年間を通して中軸を任され、遊撃手として打率.311を残した。大学4年生のドラフト候補の遊撃手では宗山塁(明大)の評価がずば抜けて高いが、宗山と同世代の加藤がどの順序で評価されているか注目したい。

 徳島ISからは一芸の選手をもう2人紹介する。米国出身のムーディー(佐藤ムーディー快)は出塁率がリーグNo.1で、ボールゾーンスイング率が他の選手に比べてかなり低い。ボールを近くまで見て鋭くスイングできる能力が高く、この点をスカウトがどう見ているか。松尾駿は走力の高さでリストアップしたい選手。6月に行われた四国アイランドリーグplusの測定会で50mスプリントが5.70秒と、参加選手中1位の記録をマークした。

 他にも、群馬DPの國弘愛斗は足を活かしたプレーが魅力の中堅手。19盗塁だったため最初の表には入っていないが、独立リーガーで指名される王道タイプのひとりだ。神奈川フューチャードリームス(神奈川FD)の山口隼輝も50m5秒台の俊足が特徴。石川MSの大誠(上田大誠)はどっしりとした体格から鋭い打球を放つ左打ちの三塁手で、NLBでは三好と並んで本塁打王となった。

一芸だけでなく、NPBでレギュラーを狙える選手が出つつある

 角中以外に規定打席到達者のいない現状が示している通り、独立リーグからNPBで活躍する選手は投手、もしくは走力に一芸のある野手が多く、レギュラーを狙える選手は少なかった。しかし、独立リーグからの指名数が増えている中でその構図も変わってきている。昨年この時期にコラムを書いたときは井上や奥村のような20代中盤に差し掛かる選手が指名されるかどうか半信半疑だったが、蓋を開けてみれば多くの選手が指名され、一軍での出場機会を得ていた。さらに、NPBの球団から指名されなかった増田将馬はくふうハヤテベンチャーズ静岡に移籍して首位打者争いをしており、IPBLのオールスタークラスであればNPBのファームでは十分に戦えることが見えてきた。

 この中から山本祐大のようなNPBを代表する選手が生まれるか。独立リーガーの野手が目指せる可能性はさらに先の世界へと広がっている。

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著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

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