「一番確率が低そうな球を選択した」 今永昇太が述懐する、大谷翔平との5カ月ぶりの再戦
「一番確率が低そうな球を選択した」
詳細は下記を参照してほしいが、今回、そんな二人の対戦は序盤の山場に訪れた。1対1と同点の三回裏、無死一、二塁という場面で大谷に打席が回ってきたのである。
3回、大谷翔平を一ゴロ併殺に仕留めた今永昇太 【写真は共同】
今永は初球、外角低めのボールになるスライダーを投げ、まずは空振りを奪っている。
「ランナーを置いてホームランだけは避けなければいけないので、遠く、低くっていうボールから入っていった」
これは計算通り。しかし、2球目、3球目が誤算。2球目はスライダーが遠く外角に外れ、3球目のチェンジアップは内角に抜けた。
「力んでしまった」
早く追い込みたい、あるいは、早く打ち取りたいという気持ちが、力みにつながったか。
2−1とボールが先行したことで、誰もが真っすぐをイメージしたはず。本人も例外ではない。もっとも自信のあるボールでもある。4月の対戦のときには真っ直ぐで三振を奪ったこと、彼の4シームが特殊であることにも触れた(上記リンク参照)。
補足するなら、彼のVAA(※)は-4.27°で、回転数、回転効率を総合すると、打者にはホップしていると映る球筋。大谷も1打席目、ボールの下を叩いた。
※ VAA=投球がホームベースに到達する時点での角度。地面と平行であれば0度。フォーシームであれば大リーグ平均は-5°程度で-4°前後なら打者の目にはホップして映るといわれる。
おそらく高めであれば、少々ボール気味でも大谷は手を出してくれる。ファールを取れれば2-2、うまくいけばフライに打ち取れるーーそんな計算が働いたはずだが、「僕が想像できることは、おそらくバッターも想像できること」と今永。真っすぐを頭から消した。
「自分の得意球ではなくて、相手が(大谷が)予測してなさそうな、分からないですけど、一番確率が低そうな球を選択しました」
結果は一塁ゴロ併殺。当たりは痛烈だったが、それがかえって併殺を楽にした。
「50-50」まであと一歩
9月11日のカブス戦で、シーズン最多となる47号本塁打を放った大谷翔平 【写真は共同】
「フォアボールを出して、ノーアウト満塁のほうが、まだいいんじゃないか」
冗談にも聞こえたが、わかりやすく今季の大谷を言語化してくれた。
続く五回の3打席目はライトフライ。大谷の打球はフェンス前で失速した。「リグレーだったら入ってたかなぁ、というような気持ちにはなりましたね」と今永。「先っぽだったので、これが入ったらちょっと勘弁してくれよ、という気持ちでは見てました」。
バットの先端でも打球初速は99.6マイル(約160キロ)を記録。柵を越えるかどうかは、まさに紙一重。一塁ゴロ併殺も、少しでもどちらかにズレていたら、どうなっていたか。彼らは9月10日、18.44メートルの距離を挟んで、そんな勝負をしていたのである。
さて翌11日、大谷は右翼にライナーの47号を放ち、48個目の盗塁も決めた。
「50-50」にまた一歩迫り、「次のホームスタンドに持ち越すことはないかな。マイアミあたりで決まるだろう」とデイブ・ロバーツ監督。
「地元ファンには申し訳ないけどね」