28年ロス五輪で120年ぶり復活のラクロス、日本代表が描く青写真

平野貴也

ラクロスは2028年ロス五輪で120年ぶりに追加採用される 【Photo by Stephen Law/Eurasia Sport Images/Getty Images】

 五輪の注目度を、どう生かすか。パリ五輪・パラリンピックを終え、次の舞台に備え、考え始めている人たちがいる。次回2028年の開催地は、米国・ロサンゼルス。パリでは、新種目としてブレイキンが採用されたが、ロス五輪では、野球・ソフトボール、クリケット、ラクロス、スカッシュ、フラッグフットボールの5競技が追加採用される。ラクロスは、第4回の1908年ロンドン五輪以来、120年ぶりの採用。関係者は、待望の五輪復活に期待を高めている。

 日本は、26年に女子、27年に男子の世界選手権を開催予定(開催都市は未発表)。28年ロス五輪に向け、競技をアピールするチャンスとなる。五輪という大舞台が設けられたことを、選手はどう受け止めているのか。男子日本代表の鈴木潤一(FALCONS)は「競技への入口が広がり、ラクロスを知ったり、始めたりする人が増える。だからこそ、28年に向け、応援してもらえる人間にならないといけない。社会に影響を与えられる存在なんだと自覚して、ラクロス選手としてどんな存在になるかを考えることが、競技レベルと合わせて、重要かなと思っています」と責任感を漂わせた。

北米勢が強い競技、日本は男女とも10人制の世界選手権で5位

男子は接触プレーが認められているため、防具を着用してのプレーとなる 【Photo by Lampson Yip - Clicks Images/Getty Images】

 ラクロスは、北米発祥のスポーツだ。先住民が祭事の儀式や軍事鍛錬で行っていたものを、17世紀にフランス系の移民が競技化。使用具が、僧侶が持つ杖(クロス)に似ていたことから「ラ・クロス(La-Crosse)」と名付けた。男子は、接触プレーありで防具を着用するが、女子はタックルや衝突が禁止で防具は着用しない。

 男女とも米国やカナダが強国だ。男子の世界選手権は、1967年から4年毎に行われているが、優勝を争ったのは、上記2カ国とオーストラリアの3カ国のみ。1982年に世界選手権が始まった女子は、北米勢にイングランド、オーストラリアを加えた4つの国が上位を独占。世界的に見てもマイナースポーツの域を出ず、強国は限定されている。日本でもマイナー競技に属し、主に競技を始めるのは大学の部活動やサークルが中心だ。それでも、地道に強化を続けており、男子は、2022年にワールドゲームズ(五輪に採用されていない競技種目の総合競技大会)で史上初の銅メダルを獲得。この大会は、ロス五輪と同じ6人制だった。23年の世界選手権では、5位に食い込んでいる。女子も22年の世界選手権で5位。今夏8月に香港で行われたU-20女子世界選手権では3位に入り、力をつけている。世界で見ても2番手集団の前方にいると言える。今後4年間で先頭集団、つまり、北米勢に近づくことができれば、五輪のメダルが見えてくる。

五輪採用で目指すのは「メダル」だけにあらず

7月に行われたトークイベントに出席した男女の日本代表(右から奥村、細梅、鈴木) 【平野貴也】

 ただ、欲しいのは、メダルだけではない。マイナー競技であるほど、メダル獲得で一気に知名度を上げることを目指すのだろうと思われがちだ。もちろん、獲得できれば理想的。しかし、日本ラクロス界は、学生主体で地道に競技の強化と普及に取り組んできた歴史がある。鈴木が話したように、五輪によって広がる入口からラクロスの世界に入り込む人たちが、歩んでいける道の幅を広げ、確かなものに舗装していくことこそ、今の日本代表選手を筆頭とする関係者が意識しているところ。用意されたレースを歩くのではなく、レールを敷きながら歩んできた成果が、ロス五輪後に現れるはずだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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