28年ロス五輪で120年ぶり復活のラクロス、日本代表が描く青写真

平野貴也

現役社会人がピークアウト覚悟で五輪挑戦を目指す意味

奥村(右)は、28年ロス五輪の挑戦は年齢的に難しいと覚悟した上で目指すと宣言 【平野貴也】

 28年ロス五輪へ、熱い意気込みを示したのは、奥村祐哉(FALCONS)だ。サッカー部に所属していた高校時代は、ラクロスなんて知らないと軽視していたというが、選手であり、日本体育大学のコーチであり、ラクロスショップで働いているほどのラクロス漬けだ。
「28年までは、必ずトップを突っ走って、代表選手として日本を背負っていきたい。28年は、僕たちが33歳になる年。シクシーズ(ロス五輪で採用される6人制)は、30歳以下の世代の方が、フィジカルフィットネス的には、トップパフォーマンスに持ってこれるので、ぶっちゃけて言うと(30代は)向いていない。でも、そこで諦めて、次の世代が頑張ってねとやってしまうと、日本のラクロスの発展はないと思っています」

 言葉の背景には、日本ラクロス界が抱える課題がある。マイナー競技は、特に、社会人のプレー環境が限られる。それでも、中学・高校で部活動が存在すれば、競技人口を保ちやすいが、ラクロスは、現役選手の70%が大学生。大学で始まり、大学で終わる率が高いということだ。競技の発展には国内における競争力が不可欠だが、社会人がプレーを続けなければ、成り立たない。これからベテランの域に入る現役社会人が、ロス五輪を目指すのは険しい道だ。それでも、奥村は五輪を本気で目指し、世代間競争を激化させ、4年後の主軸となる可能性がある大学生世代を刺激する。ベテランが本気で戦い続ける姿があれば、現在の大学生世代から、ロス五輪後に同じ姿を見せようとする選手が出ても不思議はない。

細梅「子どもを産んだとしても、またラクロスに戻ってきたい」

 女子日本代表の細梅志保美(FUSION)は、アスリート採用で運動指導の仕事をしながら、選手として活動。母校の明治大学のコーチも務めている。18年から団体を立ち上げ、都内で毎週水曜日の夜、所属チームに関係なく女子の社会人選手が練習できる場を提供し続けている。「17年の世界選手権に出場した後、このままでは、日本のメダル獲得は程遠いと感じ、全国にプレー環境を作りたい、いろいろな人にラクロスを知ってもらいたいと思いました」と話した。

 細梅も、34歳で迎える28年のロス五輪を目指すことを明言した。日本では、結婚や出産を機に選手生活から離れる女性が多いが、結婚後もプレーを継続。「17年に、10年後の目標として28年のロス五輪で採用される可能性があるから出場したいと思いました。28年が終わってから、子どもを産んだとしても、またラクロスに戻ってきたい。女性がいつまでも夢を追い続けている姿を望んでいるし、夢を追う女性アスリートの目標として、前を走っていけたらいい」と存分に選手生活を楽しむ女性像を思い描いた。

9月20日開幕、ボックスラクロス世界選手権に挑戦

 26年、27年に日本で開催される女子、男子の世界選手権を経て、28年ロス五輪へ。認知度を増す中で、興味を持った人を取り込み、活動を継続しやすい場所を作り出すために、現役選手がプレー以外でも競技発展に力を注いでいる。もちろん、その効果は、五輪での活躍度合いによって大きくなる。直近では、9月20日に米国ニューヨーク州ユーティカで行われるインドア6人制のボックスラクロス世界選手権に臨む。日本は、男子が大会に参加。女子は参加国との強化試合を行う予定だ。10人制に比べてボディコンタクトが多く、スキルが求められる大会で、ロス五輪に向けた課題を洗い出す。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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