車いすテニス人生初試合での「完敗」から貫き通したもの 小田凱人が考える「成功」と「失敗」とは
【Photo by Daniel Kopatsch/Getty Images】
9歳のとき、左脚の骨肉腫を手術したことで車いす生活を余儀なくする。「サッカー選手になりたい!」という夢は絶たれたが、偶然出会った車いすテニスでいま世界中から大注目を集めている。驚くべきはラケットを初めて手にしてから、わずか8年での偉業達成である。
◎なぜ、驚異的な記録を短期間で達成することができたのか?
◎なぜ、大病を患ったのに前向きでいられたのか?
◎なぜ、厳しい世界で勝ち続けられるのか?
◎なぜ、プロでも「楽しさ」維持し続けられるのか?
本書は、小田凱人の人生をひとつずつ紐解きながら、「最速で夢を叶えた秘訣」を明らかにする。
小田凱人著『I am a Dreamer 最速で夢を叶える逆境思考』から、一部抜粋して公開します。
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完敗で学んだ、「貫き通す」精神
入院時代にラケットを買い、ずっと素振りなどをやっていたこともあったためか、コーチからも「筋がいい」ということで、褒めてもらえることが多かった。
もちろん厳しい言葉をいただく場面もあったのだが、僕としては、褒めていただきながら技術を磨いていった思い出のほうが多い。
そして、テニスを習い始めて4か月経ったころ、初めて大会に出場することになった。
神奈川県で行われた大会で、18歳以下の選手が男女関係なく出場できるものだ。初戦の相手は12 歳。ジュニアの車いすテニス界でも名の知れた選手だった。
一方で僕は、車いすテニス初心者である。しかし、自信だけはあった。「自分なら勝てるのではないだろうか」という予感がしていたのだ。
前の章でも述べたが、ラケットを買ったそばから、国枝さんのフォームや、ボールを打つときの表情を真似たりしていた。他にも、テレビやインターネットで見かける試合のダイジェスト動画、スーパーショット集、パワープレー集のような華やかな動画をたくさん観た。
そうした経験もあってか、初めての試合は、「きっと勝てる」と思って臨んだ。
ちなみに当時の僕は、点数のカウント方法や、細かなルールもろくに頭に入っていないレベルだった(笑)。
結果は―。1回戦敗退だった。しかも、手も足も出ず、完敗である。
試合後、僕は大泣きした。試合前に想像していた自分の姿と、今の自分との大きなズレに悔しさがあふれた。
テニスというスポーツは「相手のミスを誘い、自分はミスを減らす」ものだ。泥臭い駆け引きのなかから、スキを生み出しコツコツと点数を重ねていくのがセオリー。派手なショットやスーパープレーは、一つの試合のなかでそう出せるものじゃないのだ。
選手たちはこういった失敗を繰り返し、現実から学び、少しずつ大人になっていく。
これは、ジュニア選手が一度は通る「大人へのステップアップ」といえる転機である。
負けを通じて、僕の頭のなかでは「これからも、もっと自分らしいテニスを貫いてやる」という気持ちが強くなったのだ。つまり、派手なショットやスーパープレーの追求である。
僕が最初に憧れたテニスは、「かっこいいテニス」。その情熱を押し殺してしまうのは、まったく「自分らしくない」。
試合の翌日からも徹底して、僕は、僕自身が目指すテニスを心がけた。もちろん、そんな姿勢に、コーチからは何度も指導を受けた。リスクばかり負ったプレーをしていると、本来勝てるはずの試合ですら負けてしまうこともある。両親も、心配で仕方がなかったそうだ。
たしかに今振り返ってみると、もっと「普通に」戦っていれば、勝てた試合も数多くあった。スーパーショットばかり追求すると、コートに収まらないショットが増えてしまうのだ。
しかし僕はそこでも信念を曲げることはなかった。
リスクを負って打ったショットがミスになったとしても、僕のなかでは「間違い」ではない。むしろ心のなかでは、「あのショットの精度をもっと上げなければ」「ちょっとだけアウトしたから、打ち方を微調整しなければ」という反省をしていた。
つまり、完成度を高める方向での反省だ。
それから5年、6年と続けていった今、ようやく自分が理想としていたスタイルができあがってきた。そして、2023年での全仏オープン、全英オープン優勝という結果として実を結んでくれた。
この経験からいえるのは、失敗や負けを経験した際に自分の掲げた信念を、「これは間違いだった」といってあっさりと取り下げてはいけないということだ。
自分が理想とする形や結果にたどり着くには、長い年月がかかるものだということ。そして自分で「成功だ」と思えるまでやめずに続けることだ。途中でやめた瞬間が「失敗」で、うまくいくまで続けた者だけが、「成功」をつかむのである。
書籍紹介
【写真提供:KADOKAWA】
9歳のとき、左脚の骨肉腫を手術したことで車いす生活を余儀なくする。「サッカー選手になりたい!」という夢は絶たれたが、偶然出会った車いすテニスでいま世界中から大注目を集めている。驚くべきはラケットを初めて手にしてから、わずか8年での偉業達成である。
◎なぜ、驚異的な記録を短期間で達成することができたのか?
◎なぜ、大病を患ったのに前向きでいられたのか?
◎なぜ、厳しい世界で勝ち続けられるのか?
◎なぜ、プロでも「楽しさ」維持し続けられるのか?
本書は、小田凱人の人生をひとつずつ紐解きながら、「最速で夢を叶えた秘訣」を明らかにする。
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