右肩上がりに状態を上げベスト8に進出 元なでしこ宇津木瑠美が感じた東京五輪からの「変化」
ナイジェリアに快勝し、2大会連続でベスト8入りを果たしたなでしこジャパン。故障者が相次ぐ中でも、試合を重ねるごとに右肩上がりの成長を遂げている 【写真は共同】
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ただ勝つことだけにフォーカスして
サイド攻撃を活性化した北川は、1点差に迫られた前半終了間際に鮮やかな直接FKで貴重な追加点もマーク。この日は初先発の4人がいずれも持ち味を発揮した 【写真は共同】
もちろんブラジル戦の劇的な勝利も大きかったと思いますが、引き分け狙いではなく、チームとして、勝って自力で決勝トーナメントに進出しようという意思統一ができていた。
ブラジル戦からスタメンを4人変更しましたが、今大会初先発となった北川(ひかる)選手、石川(瑠音)選手、林(穂之香)選手、植木(理子)選手は、いずれも持ち味を発揮してくれましたね。
北川選手に関しては、怪我がなければ当然スタメンを張れる実力の持ち主ですし、チーム3点目の美しい直接フリーキック(45+5分)も含め、さすがだなと思わせるプレーを随所で見せてくれました。3バックの一角に入った石川選手も、すごく良かった。これまではローマでも熊谷(紗希)選手とコンビを組む南(萌華)選手がレギュラーでしたが、石川選手も上背があって、スピードもあるので、彼女がスタメンで出てもそん色のないプレーができると思っていました。
ボランチの林選手も効いていましたね。パートナーの長谷川(唯)選手が、個の力をチームに還元するタイプなら、林選手は常にチームのバランスを意識しながら、攻守の舵を取るタイプ。2人の補完性も高かったし、中盤に安定感をもたらしていました。
この日はナイジェリアが、「クロスを待ち構えてはね返す」ことに重きを置く守備戦術だったので、サイドで比較的フリーでボールを持てるシチュエーションが多かった。32分の田中(美南)選手の2点目も、守屋(都弥)選手の好クロスから生まれましたが、相手の戦術との相性もあって、ようやく流れの中から良い形が作れましたね。
ブラジル戦では決定機をものにできなかった田中選手ですが、ゴールシーンでは植木選手がヘディングシュートを打った瞬間には、もうゴール前に走り出していました。だからこそクロスバーに当たったシュートのこぼれ球にいち早く詰めることができたわけで、「点を取るのは私だ」というストライカーとしての矜持が伝わってきましたね。
その意味で言うと、同じストライカーの植木選手にも、22分の先制点のシーンで浜野(まいか)選手にラストパスを出すのではなく、思い切って打ってほしかった。もちろん、チームとして点を取るための最善策を選択し、それでゴールという最高の結果も導き出しましたが、初先発のチャンスを得たストライカーとして、あのタイミングでパスを出すのはどうなのかなと。ずっとベレーザで一緒にやってきた立場だからこそ、あえて厳しいことを言わせてもらいますね(笑)。
ナイジェリア戦のMVPを1人挙げるなら、浜野選手でしょうか。サイドからの仕掛けに加えて、前線からのプレッシングもすごく効いていて、最後まで本当によく走りました。これまでの「若くて勢いのある選手」から「チームにとって重要なカギを握る選手」へ、この大会を通してすっかり印象が変わりました。あとは、サイドを埋めてくるようなディフェンスをされた時に、それをどう破るかでしょうが、今後のさらなる成長に期待したい選手です。
1次リーグを振り返れば、1試合目より2試合目、2試合目より3試合目と、チーム状態が右肩上がりに良くなっていった印象です。初戦のスペイン戦では緊張や重圧を感じているようでしたが、それが徐々にほぐれ、どんどん前向きな姿勢になっていった。清水(梨沙)選手をはじめ、故障者が相次ぐ中でも、いろんな選手を使いながらチームとして成長していく姿が見て取れましたね。