吉沢恋のメイク率の高さを荒畑潤一が絶賛 スケボー女子ストリートは日本勢が金・銀

田中凌平

大舞台での吉沢のメイクの安定感が勝負の決め手に

吉沢の安定感は圧巻だった。ラン、ベストトリック双方におけるメイク率の高さが光った 【写真は共同】

 吉沢選手が、決勝のトリックの1本目で「キックフリップフロントサイドボードスライド」をミスしたのは意外でした。吉沢選手の中では置きにいったトリックです。これで調子が狂わなければいいなと思っていましたが、2本目でしっかり決めてきましたし、3本目をミスしても4本目で「バックサイドビッグスピンフリップボードスライド」を成功させて96.49点を出したのは感動しました。

 この技は吉沢選手の秘密兵器のようなもので、2年ほど前から練習していたようです。「これを成功させたら金メダルを獲れる」という自信はあったと思います。東京五輪で金メダルを獲った西矢椛(サンリオ)選手が以前に小さいレールで決めていましたが、今回のパリのコースのような大きなレールで成功させたことが高い評価を得ましたね。

 吉沢選手は、そうした大技に加えてラン、ベストトリックにおけるメイク率の高さという安定感も光りました。ランは2本ともフルメイクで、ベストトリックを含めて7本中5本をメイクするなど、自分の持つトリックを大舞台でも物怖じせずに発揮できた結果の金メダルだと思います。

 赤間選手は戦略が良かったです。決勝のトリックでは一発目から高難易度の「フロントサイド270リップスライド」を成功させ、いきなり92.62の高得点を叩き出しました。ここ数年間しっかり練習してきたトリックが決まって安心したと思います。気持ちと身体は連動してくるので、1本目が決まったおかげで2本目以降は気持ち的に楽になったでしょう。

 中山選手は決して調子が悪かったとは思いません。決勝のトリックはもし決まれば会場全体が湧くような大技でしたし、もし3本目で決まっていれば金メダルも狙えました。確実にメダルを狙うのではなく、徹底的にベストに挑戦するスケーターらしさが感じられる滑りでしたね。

今後も“強い”日本のスケボー女子に期待

 今回メダルを獲った吉沢選手と赤間選手はまだまだ若いですし、4年後のロサンゼルス五輪も十分に考えられます。ただし、今回の滑りを見てスケートボードに興味を持った素晴らしいスケーターが台頭してくることも大いにあり得るので、うかうかしていられません。

 実際に吉沢選手はこの1年ほどで急激に成長して、パワフルな滑りを見せるようになりました。吉沢選手は競技後に「スケートボードは選手生命が短く、平均年齢も低いのを自分が覆していきたい」と言っていましたが、次の世代と切磋琢磨しつつ頑張ってほしいですね。強い日本がさらに進化を楽しみにしています。

 日本勢の活躍は私のようなスケートボード愛好家にとって嬉しいことですが、選手にケガなく楽しんでもらうことが一番の願いですね。今回出場した3選手の競技以外の滑りももっと見たいですし、スケーターとしてとことん楽しんでもらいたいと思っています。競技の枠に留まらないカルチャーがあるのがスケートボードの魅力です。私自身も多くの経験をして今までスケートボード人生を続けているので、共に日本のスケートボードシーンの進化を楽しみたいですね。

荒畑潤一(あらはた・じゅんいち)

【株式会社SFIDA】

スケートボード歴36年の大ベテランであり、日本スケートボードシーンを牽引してきたパイオニアの1人。1995年、18歳で全日本チャンピオン(AJSA)を獲得。その翌年には渡米し武者修行をするなど、本場のスケート文化に心酔した。近年はスケートボードの普及活動に力を入れており、東京五輪やパリ五輪、XGamesのテレビ中継の解説をはじめとしたメディア出演や、次世代のキッズを育成するスケートボードスクールなども開催している。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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