注目はサニブラウンだけじゃない! パリ五輪で「歴史の壁」に挑む日本の男子短距離選手たち
大観衆の中で行われるオリンピックの人気競技のひとつが、陸上短距離 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
パリ五輪陸上男子短距離出場選手一覧 【スポーツナビ】
世界の中で輝ける日本人選手が現れる期待大の今大会
これまでの五輪史上、この種目で予選や準決勝などを勝ち抜いて決勝に進んだのは、400mの1992年バルセロナ五輪での高野進が最も新しく、100mに至っては、なんと90年以上前の1932年ロサンゼルス五輪の100mの吉岡隆徳まで遡(さかのぼ)る。
だが、近年、短距離ではないが、4×100mリレーでは2008年の北京五輪で銅メダル(当時。後に銀メダルに繰り上げ)、2016年には4×100mリレーで銀メダルを獲得し、また、米オレゴンでの2022年世界陸上競技選手権大会(以下、世界陸上)では、サニブラウン・アブデル・ハキームが世界陸上史上初めての日本人決勝進出を実現した。
そして、これまで日本人選手にとって高い壁と言われていた100m9秒台も、今では、日本人として初めて突破した桐生祥秀をはじめ、サニブラウン、小池祐貴、山縣亮太の4人が記録するなど、日本人選手のレベルは確実に上がってきている。目前に迫ったパリ五輪で日本人選手が「歴史の壁」を破り、世界の脚光を浴びる可能性は十分にあるのだ。
【サニブラウン・アブデル・ハキーム/男子100m】最も注目の選手! 日本人92年ぶりの決勝進出なるか!?
サニブラウンが日本オリンピックの歴史に名を刻むか、要注目だ 【Photo by Sam Mellish/Getty Images】
高校卒業後、アメリカ・フロリダ大学へ進学すると、2019年5月には日本人として歴代2位となる9秒99を記録し、さらに翌月の全米大学選手権で記録を伸ばし、当時の日本人最高記録となる9秒97を叩き出す走りを見せた。
その後も、世界陸上や五輪など世界最高峰の大会に出場。2022年の世界陸上男子100mでは、予選を自己セカンドベストとなる9秒98で通過し準決勝も1組3着となりタイム順で決勝に進出。決勝では7位でフィニッシュした。日本人選手として世界陸上の100mで決勝に進出したのは初めての快挙であり、その他の世界大会を振り返ってみても、100mで日本人選手が決勝に進出したのは、1932年ロサンゼルス五輪での吉岡隆徳以来、実に90年ぶりのことだった。
日本人92年ぶりの決勝進出へ期待は高まる
それを踏まえて、五輪と世界陸上の予選、準決勝の記録を見てみると、2021年の東京五輪の100mの予選通過は、各組3位以下からのタイム順だと10秒21、準決勝突破は10秒00。2022年の世界陸上の100mの予選通過は10秒18、準決勝突破は10秒08となる。今季のサニブラウンのシーズンベストは、5月30日に開催された「ダイヤモンドリーグ第6戦」(ノルウェー・オスロ)での9秒99なので、しっかりと実力を発揮すれば予選はもちろん準決勝も突破し、日本人選手としては92年ぶりの決勝進出も現実味を帯びてくる。
メダルに関しては、前回東京五輪の3位アンドレ・ドブラス(カナダ)が9秒89、2位フレッド・カーリー(米)が9秒84、優勝したラモントマルチェル・ヤコブス(伊)が9秒80、2022年世界陸上は、3位トレイボン・ボロメル(米)が9秒88、2位マーヴィン・ブレイシー(米)が同タイム9秒88、優勝したフレッド・カーリー(米)が9秒86。そして今大会の注目選手の自己ベストを見ると、2023年世界陸上金メダルのフレッド・カーリーが9秒76、アメリカ代表選考会優勝者で、2023年の世界陸上の金メダリストであるノア・ライルズが9秒81(パリ五輪直前のダイアモンドリーグで自己ベストを更新)、ジャマイカの22歳の新鋭キシェーン・トンプソンが9秒77、23歳のオブリク・セヴィルが9秒82の記録を持っている。サニブラウンがこういった中に割って入るには、より一層のタイムアップが必要となるのがわかる。だがまだ25歳、伸びしろは十分にある。パリでの大いなる飛躍を期待してもいいだろう。
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