注目はサニブラウンだけじゃない! パリ五輪で「歴史の壁」に挑む日本の男子短距離選手たち

吉田昭彦

【鵜沢飛羽/男子200m】後半での怒涛の追い上げで決勝進出を目指す!

大学生ながら五輪の舞台に立つ鵜沢飛羽。特に後半の走りに要注目! 【Photo by Kenta Harada/Getty Images】

 今回が初めての五輪挑戦となる鵜沢飛羽(筑波大学)は、日本選手権での優勝(2023年に続いて連覇)で見事出場を勝ち取った。世界大会は2023年の世界陸上(ハンガリー・ブタペスト)に出場しており、その際は予選を組1位の20秒34で通過し、準決勝ではさらに01秒タイムアップするも組5位となり決勝への進出は逃した。パリ五輪では4×100mリレーのメンバーにも名を連ねているので、2種目出場の可能性もある。

 自己ベストは2023年のアジア選手権で記録した20秒23。200mの東京五輪での予選通過タイムは20秒78、準決勝突破が20秒13、2023年の世界陸上は予選通過が20秒56、準決勝突破が20秒21。ポテンシャルとしては、19秒台を出して決勝進出の可能性は大いにあるといえるだろう。日本選手権で見せた残り100mからの怒涛の走りを五輪でも見せてほしい。

【上山紘輝/男子200m】世界レベルのコーナースピードは見もの

スタートしてすぐのコーナースピードは、世界レベルの上山紘輝 【Photo by Kyodo News via Getty Images】

 鵜澤と同じく200mに出場するのが上山紘輝(住友電工)。今回が初の五輪となるが、世界陸上には2022年と2023年に出場している。記録は2022年が予選を組2位(20秒26)で通過するも準決勝では組6位(20秒48)となり決勝進出を逃した(2023年は予選敗退)。2023年9月に開催されたアジア競技大会では、200mで金メダルを獲得し、桐生祥秀・小池祐貴・宇野勝翔と出場した4×100mリレーでは銀メダルを獲得している。自己ベストは20秒26。2024年の日本選手権では、序盤トップを走るが、鵜澤に逆転されて2位となり参加標準記録(20秒16)には達しなかったが、ターゲットランキングをクリアし出場権を獲得した。コーナースピードでは世界レベルとも言われるので、スタートから目が離せないレースとなるだろう。

【飯塚翔太/男子200m】日本陸上界のレジェンド。自分最高の走りを!

4大会連続出場。ベテランとなった今も成長し続けるレジェンドの姿をその目に焼き付けたい 【Photo by Kenta Harada/Getty Images】

 今大会で4連続出場を数える言わずとしれた日本陸上界のレジェンド。2016年のリオ五輪の4×100mリレーで、山縣亮太、桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥と組んで銀メダルを獲得したことは今も脳裏に刻まれている人も多いことだろう。33歳になった現在もトップランナーとして活躍しており、今大会では200mと4×100mリレーで出場権を獲得している。

 これまでの自己記録は200mが20秒11で日本歴代3位。前回の東京五輪では21秒02で予選敗退だったが、2023年の世界陸上では予選で20秒27のシーズンベストの走りを見せ準決勝に進出した。若い頃は、その長身から「和製ボルト」の異名をとった飯塚、今大会ではベテランならではの本番に向けてのコンディション調整、そしてレースマネージメントが絶対的な武器になるはずだ。

【中島佑気ジョセフ/男子400m】迫力ある走りで若手期待のランナー

400mで世界と戦える期待のランナー中島佑気ジョセフ。迫力ある走りが魅力 【Photo by Kenta Harada/Getty Images】

 今大会が初出場となる22歳の気鋭のランナー。今大会では400mと4×400mリレーの代表選手となっている。世界大会デビューは、東洋大学在学中の2022年世界選手権(米・オレゴン)。4×400mに出場し、佐藤風雅、川端魁人、ウォルシュ・ジュリアンと組んでメダルまであと一歩の4位となる。2023年世界陸上では400mに初出場。予選を突破し準決勝へと進出。準決勝で自己ベストとなる45秒04を叩き出すが、惜しくも決勝進出はならなかった。パリ五輪へは今年の日本選手権で400mで優勝(2022年に続き連覇)しワールドランキングでの出場権を得た。身長192cmの長身から繰り出される長いストライドでグングンとスピードを上げていく様は迫力抜群だ。

【佐藤風雅/男子400m】苦労人ランナー。大舞台でここ一番の強さを!

自らの力で様々な壁を乗り越えてきた佐藤風雅。大舞台での活躍を期待 【Photo by Hannah Peters/Getty Images】

 中学で陸上に目覚め、高校より本格的に陸上競技を始め県大会で優勝しトップランナーとなるが、大学時代に伸び悩む。だが、社会人となった2020年の日本陸上で3位になるなど復活。2022年の日本陸上で初優勝すると、2022年の世界陸上で代表に初選出された。同大会では、タイム順で見事予選を突破するが準決勝で敗退。しかし、翌2023年の世界選手権(ハンガリー・ブタペスト)では、予選を44秒97の当時の自己ベストで突破すると、準決勝ではさらにタイムを縮め44秒88を叩き出し、残念ながら決勝進出はならなかったが、本番での強さを発揮した。2024年の日本陸上では、終盤、中島佑気ジョセフに抜かれ結果2位となるが、ワールドランキングでの五輪出場権を獲得した。社会人になって自分でメニューを研究し、地道にトレーニングしてきたという苦労人。大舞台でのここ一番の強さが見ものだ。

【佐藤拳太郎/男子400m】日本記録保持者。92年ぶりの決勝へ!

100%の力を発揮できれば、1992年バリセロナ五輪以来の決勝進出も夢ではない佐藤拳太郎 【Photo by Kenta Harada/Getty Images】

 今年で30歳を迎えるベテランランナー。日本記録となる44秒77の自己ベストを持つ。今回が初の五輪だが、これまで世界陸上には4×400mリレーで、2015年大会を皮切りに、2017年大会、2019年大会、2023年大会の4大会に日本代表として選ばれ、2023年大会では個人の400mにも選ばれている。その2023年大会では、1991年の日本選手権決勝で高野進(当時東海大学教員)がマークした日本新記録(44秒78)を32年ぶりに更新している。パリ五輪へは、その記録が参加標準記録(45秒00)を破っているために決定。6月の日本陸上はコンディション不良で欠場となったが、現在は本大会に向けて調整中。本番には100%で臨めるとのことなので、1992年バルセロナ五輪での高野進以来の決勝進出が期待される。

特別な場で特別な力の発揮を期待!

 世界陸上、アジア競技大会、ダイヤモンドリーグ、セイコー・ゴールデングランプリなど、世界の有力選手と戦う場はいくつもあるが、オリンピックというのは全くの別物、特別な大会だ。今回ピックアップした選手たちは、これまで繰り広げられてきた激しい代表選手争いを勝ち上がってきた選手ばかりなので、どの選手にもこれまでの自分の記録を塗り変えるポテンシャルがあるはず。短距離は、予選、準決勝、決勝と3つのステップがあるが、日本人選手は予選からMAXで挑むはずなので、ぜひ予選から見てほしい。

 注目のパリ五輪での男子100mは予選8/3(土)・準決勝&決勝8/4(日)、男子200mが予選8/5(月)・敗者復活戦8/6(火)・準決勝8/7(水)・決勝8/8(木)、男子400mが予選8/4(日)・敗者復活戦8/5(月)・準決勝8/6(火)・決勝8/7(水)に行われる。特別な場では特別な力が働くことが多々あるもの。過去の自分を超える彼らの姿をぜひその目で見てほしい。

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著者プロフィール

元出版社勤務、現在はフリーランスで活動。サッカー専門誌をはじめ、モータースポーツ、ゴルフ、マラソン、トレイルランニングなどの雑誌作りに携わる。趣味はサッカーや陸上の観戦と、ゴルフ、マラソン、トレイルランニングの競技参加。

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