慶應高校野球部―「まかせる力」が人を育てる―

「剣道八段」の校長が創った慶應高と野球部の分岐点 “教え子”たちが結実させた上田前監督のエンジョイベースボール

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【写真は共同】

「高校野球の常識を覆す!」を合言葉に、慶應高校野球部は107年ぶりに全国制覇を成し遂げた。彼らの「常識を覆す」チーム作りとは、どんなものなのか? なぜ選手たちは「自ら考えて動く」ことができるのか? 選手、OB、ライバル校の監督等、関係者に徹底取材。見えてきたのは、1世紀前に遡る「エンジョイ・ベースボール」の系譜と、歴代チームの蹉跌、そして、森林貴彦監督の「まかせて伸ばす」指導法だった。

 歓喜に湧いた全国制覇から1年、慶應高の歴史に迫った書籍『慶應高校野球部:「まかせる力」が人を育てる』(加藤弘士著)から一部を抜粋して掲載します。

上田前監督の野球部改革

 現在の高校野球ではSNSでの情報発信も盛んに行われている。指導者や選手、マネジャーがInstagramやXのアカウントを取得し、部のポリシーや日々の活動を投稿することも多くなった。

 その先駆けが上田である。米国から帰ると、慶應高校野球部の公式ホームページを開設した。「部訓」にこう綴った。

「日本一になろう。日本一になりたいと思わないものはなれない」
「Enjoy Baseball(スポーツは明るいもの、楽しいもの)」
「凡人は習慣で1日を送る。天才はその日1日が生涯である。毎日が本番。大会前だけ盛り上がって全国制覇ができるか。泥棒に練習試合はない」
「雨と風と延長とナイトゲーム、そして決勝戦には勝つ」
「エンドレス(いつまででもやってやろうじゃないか)」

 強い言葉に多くの中学生が胸を熱くして、慶應高校野球部を志した。

 現在のSNSでは必須の「スルースキル」という言葉がなかった時代だ。掲示板に否定的な書き込みがあると、上田は反論を書いた。

「よく袋だたきにあいました。でも、あのやりとりが大好きでしたね」
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著者プロフィール

1974年4月7日、茨城県水戸市生まれ。水戸一高、慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、1997年に報知新聞社入社。2003年からアマチュア野球担当としてシダックス監督時代の野村克也氏を取材。2009年にはプロ野球楽天担当として再度、野村氏を取材。その後、アマチュア野球キャップ、巨人、西武などの担当記者、野球デスクを経て、2022年3月現在はスポーツ報知デジタル編集デスク。スポーツ報知公式YouTube「報知プロ野球チャンネル」のメインMCも務める。

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