「あり得ない緊張」を経て得た特別な一体感 かみ合った大岩ジャパンがパリへの切符をつかむ

川端暁彦

勝ち切った上で望むもの

荒木(中央)の2点目で試合の流れは決定的になった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 後半はイラクの反撃もあり、難しい時間帯も確かにあったのだが、日本の選手からは余裕も感じられた。

 とはいえ、2点はセーフティーリードではない。今大会は決勝トーナメントに入ってからの5試合すべてでレッドカードが出ており、PKも頻出。どれほどうまくいっていても、“事故リスク”は決して小さいものではない。

 ここで追加点を奪えてしまえば理想の流れだったが、そう簡単にいくものでもない。慎重に試合を運びながら終わらせることも必要だった。大岩監督は最後の時間帯で、疲れも見えてたびたび守備を破られるようになっていた大畑のポジションへ本来はセンターバックの西尾隆矢(C大阪)を投入。守備固めにも入った。

 中国との初戦で退場し、3試合の出場停止処分が明けたばかりの西尾の投入はある種の難しさもあったはずだが、そもそも西尾を守備固めでサイドバックに起用する策は大会前から大岩構想にあったもの。復帰してきた彼をここで使うことに迷いはなかったようだ。

 結局、試合は2-0のまま動かず。日本はイラクを退け、決勝進出。同時にパリ五輪への出場切符も手にすることとなった。

 大岩監督は「積み上げがしっかりと表れた1試合だった」とした上で、こうも語った。

「選手にしっかりタスクを与える、責任を持たせる、そして自信を持たせる。それが結果として試合に表れて、それが団結を生み出し、チームのつながりが大きくなっていった」

 そして取材エリアの去り際、大岩監督は「次は決勝で」と力を込めた。「五輪切符は最低限の目標」と語ったのは藤田主将。次は5月3日に行われる決勝も制し、アジアの王者としてパリに乗り込むことを目指す。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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